少女漫画が私を作った。「おしゃべり階段」真柴くんのこと
少女漫画の名作、くらもちふさこの「おしゃべり階段」を読んだのは、中学生の頃だった。主人公の可南のクラスメイトの真柴くんは、真っ赤な髪で眉毛がなくて、バイクで高校に来て、少し年上で、ロックバンドのボーカリストで、タバコを吸っていた。
彼は少女漫画の一種の王子様で、私は華やかだけどちょっと寂しそうな真柴くんが大好きだった。
番外編に真柴くんが主人公の話があった。彼が中学を卒業後 、高校に行かずロンドンにいっていたときの話である。
その中で、彼は歌を歌うときの原動力となるものは、日々の何気ない感動(胸をしめつけられる思い)だと語っている。
私は日々の生活で感動することがあったとき、いつも真柴くんのことを思い出す。私もまた感動を集めて生きている。小さな感動の積み重ねが生きる原動力となっている。中学生のとき、真柴くんに出会っていなかったら、このことには気づかずに生きていただろう。
真柴くんは可南のことが好きで、でも可南は中学のときからずっと好きな人がいて、可南の親友の光咲子は真柴くんを好きでと、よくあるうまくいかないパターンだ。真柴くんの恋は終わってしまうが、可南の振り方、真柴くんの振られ方がとてもいい。おそらく現実ではあり得ないことだと思うが、ここまでのエピソードの積み重ねで、それが不自然にならない。
くらもちふさこの漫画では、ドラマチックなことがガンガン起こるわけでも、名言が飛び出してくるわけでもない。日々のささいなエピソードが、誰かにとってはとても胸に染みることだったりする。それを丁寧に描いている。真柴くんは現実にはあり得ない男子高校生だけど、とてもリアリティがある。彼の存在は私の生きる原動力のひとつである。
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