2024年10月29日、デビューエッセイ集『いつかみんなでごはんをーー解離性同一性障害者の日常』を、柏書房より刊行する運びとなりました。
装画は嶽まいこさん、装丁は瀬戸内デザインの小川恵子さん、帯の推薦文は作家の村山由佳さんから賜りました。
こちらが、先日解禁となった書影です。
本書執筆の経緯は、私が柏書房の天野潤平さんに企画を持ち込んだところから始まります。
天野さんが詳細をXにて綴ってくださったため、そちらのポストより全文を引用させていただきます。
天野さんからはじめてフィードバックをいただいたとき、とても感動したことを今でも鮮明に覚えています。本来なら、ただお断りするだけでもいいはずなのに、天野さんは何者でもない私に、丁寧かつ真摯にフィードバックをくださいました。それをもとに企画を練り直し、再度天野さんに見ていただき、最終的に本書刊行に至りました。
柏書房さんの本に勇気づけられた原体験が、私の原動力となりました。特に、荒井裕樹さんによる『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)は、障害による差別に苦しむ私にとって、応援歌のような一冊です。はじめての本は、絶対に天野さんとつくりたい。その一心で食らいつきました。
原稿に向き合う最中も、天野さんは終始丁寧に伴走してくれました。コメントの一つひとつに心がこもっていて、天野さんのお人柄や編集者として培ってきたであろうご経験が表れており、何度も感嘆の息を漏らしながらメモを取りました。私個人と読者、双方への配慮を忘れないコメントは、すべて私の宝ものです。
どんなに広く見わたしたつもりでも、私ひとりの目線には限界があります。多角的かつ一歩引いた目線で見る天野さんの視点があったからこそ、本書が完成しました。
もくじと「はじめに」の内容を、以下に掲載します。
装画を担当してくださった嶽まいこさんは、絵本や教科書、小説など幅広い作品の装画を描くほか、漫画作品や画集を発表、個展を開催するなど多岐にわたり活動されています。
私自身、古内一絵さんの『東京ハイダウェイ』や寺地はるなさんの『希望のゆくえ』など、嶽さんが装画を手がける作品を数多くお出迎えしてきました。優しく繊細なタッチと、物語の世界観をビビットに映し出す表現力を持つ憧れのクリエイターさんに装画を描いてもらえたことは、望外の喜びです。
本書に関しても丁寧に読み込んでくださり、私や交代人格にとって大切なモチーフを選び抜いてくれました。
装丁を担当してくださった小川恵子さんは、瀬戸内デザインとして数々の本のデザインを担当されています。単行本のほか、雑誌などのデザインも手がける小川さんは、本書を読んだ第一印象として、「青色はマスト」とすぐに察してくれました。名前からもわかる通り、「碧」は私にとって特別な色です。海の色、川の色、好きな花、果物、空の色。私の周りには、自然と青色があふれています。エピソードから伝わる情景と私の文章の色合いから、全体のデザインや余白に至るまで、しっくりくる形に調整してくれました。
打ち合わせで小川さんが伝えてくれた言葉が、今でも胸に残っています。
「碧月さんの文章は、べったりしていなくて、とても冷静でかっこいい」
小川さんがくれたこの言葉は、今後書いていく上で、大切なお守りになりました。
帯の推薦文を賜った村山由佳さんは、私がもっとも敬愛する作家さんです。
これまで、メディアでも村山さんの作品の書評をたくさん書いてきました。この仕事をはじめる前、私の書く手段が紙とペンしかなかった頃から、村山さんの作品を読んでは思いをノートにしたためる時間が、私にとってかけがえのない時間でした。
そんな村山さんが本書を読んでくださり、こんなにも力強いコメントを寄せてくださったことは、私の人生においてあまりに大きな出来事で、いまだこの幸せをうまく言語化できません。ただただ嬉しく、ありがたく、ひたひたと押し寄せる幸福を噛みしめています。
村山由佳さんの小説『二人キリ』の一節です。何か事が起きたとき、私の過去や障害に結びつけて結論づけられることは、私にとって日常でした。しかし、本書に出会い、それはとても理不尽なことで、「ずるい」と怒ってもいいのだと思えました。
村山さんの作品は、いつも私に力をくれます。生きるための力を、理不尽に抗う力を、人を愛し信じ抜く力をくれます。はじめて私に『翼』をくれたあの日からずっと、30年近くの長きにわたり、村山さんが紡ぐ物語は私の光です。
本書完成に至るまで、多くの方に支えられてきました。関係者の方々、友人の皆さまへ、改めて心からの感謝をお伝えいたします。
そして誰よりも、隣で支え続けてくれたパートナー(現在の夫)と交代人格たちに、「ありがとう」を伝えたいです。
たくさん迷いながら、考えながら、今の自分が持てるすべての力を出しきって書き上げました。ぜひ、多くの方に読んでいただきたいです。
書店店頭でのご予約も可能ですし、ご都合に応じて各種ウェブ書店もご活用いただければと思います。
私は虐待サバイバー代表でもなければ、解離性同一性障害者の代表でもありません。本書はあくまでも、「碧月はる」というひとりの人間が生きてきた軌跡を描いたものです。十把一絡げにされがちなマイノリティの「個人」の話として、本書を受けとってもらえたら幸いに存じます。
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