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永遠に、ぼくの心を⑨
『もう逢えぬ君に』
君が長い髪をかきあげる仕種に
僕は女を感じた
小春日和の真昼の匂いを漂わせ
春を待ちきれずに飛び出してきた蝶よ
君が髪を切ったのは何故だったのか
君が貸してくれた鉛筆を滑らせ
君の体温を僕は抱き締めていた
そしてポケットに忍ばせた
君の机にイニシャルの落書きを見つけ
僕のと同じだと知ったとき
僕は優しくなった
君からの葉書が舞い込んだ夏の日
『暑中お見舞い申し上げます』の文字に
僕の囚われの日々が始まった
僕の卒業アルバムに寄せ書きを拒んだ君
『あなたとは永遠の別れじゃないのよ』とうつむいた顔に
いつも笑みを湛えた唇は歪んでいた
僕は最後まで
『好き』と言えなかった
君の面影を求めつつ
いつしか今になった
だから、今、言うよ
君が『好き』だったと
永遠に、僕の心を伝えよう
もう逢えぬ君に
そして想い出は
心の奥に仕舞っておこう
夢が覚めぬように
十七才の晩秋
〈了〉