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安定を待っていたら8年も経ってしまったので今引っ越すことにした

「もういい。1日も早く実家を出ていくから!」


引っ越しを決意したきっかけは、同居する父親との口論だった。

父から「いつもそっち(私たち)に合わせているんだ」と言われ、苦しすぎてnoteまで書いた。

今まで父の優しさだと思っていた行動は、もしかしたら我慢のうえに成り立っていたのかもしれない。何だかんだ理由をつけて引っ越しを先延ばしにしてきたけれど、真剣に実家を出る準備をはじめなければ……。


冒頭の言葉は、私が父に向って泣きながら放ったものだ。これだけ読むと、勢いで引っ越そうとしているみたい。でもね、そうじゃないんだ。

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8年前――元夫からのモラハラに耐えられなくなり、娘を連れて実家に戻った。離婚が成立したら、できるだけ早く両親の家を出て、娘とふたりで暮らしたいと思っていた。


根っこにあったのは「自立したい」という気持ち。


元夫のモラハラは、私の依存体質に原因があるのかもしれない。だからもう、精神的にも経済的にも誰かに頼るのはやめて、自分の力で生きていかなくちゃ――その一心で走り抜けてきた。


しかし、強い思いがあったのにも関わらず、なぜ引っ越しを実現するまでに8年もかかったのか。

実家を出る条件として、月々の収入が安定していないとダメだと思っていたからだ。

私の意思で離婚したのだ。娘に金銭的な面で不自由な思いをさせたくない。もう人生において失敗はできない。

今思えば、それらは全部言い訳だった。本当は、ただ、勇気がなかっただけなんだよね。


フリーライターになって6年目。

毎月の収入を安定させるのが、いかにむずかしいかを思い知った。もしかしたら永遠に無理かもしれない。


それならば。

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考え方を変えてみる。

収入のことは保留にして、とりあえず引っ越してみよう。

たとえ、しばらく無収入だとしても、生活できるくらいの貯金はある。もし引っ越してみて上手くいかなくても死ぬわけじゃない。環境を変えたら、自分や娘の状況も、今よりいい方向へ動く可能性だってある。


思い切って賭けてみてもいいんじゃない?


そういえば、ライターになったときも同じだった。

「外で働くのが当たり前」という考え方を捨てて、家で働ける方法を探し試してみた。すると、状況が好転したのだ。


あのときと同じように、今回も「変化」を選べば、風向きが変わるかもしれない。


根拠なんて何もない。


けれど、今が引っ越すタイミングなんだと思った。ちょうどクライアントワークが落ち着いているから、転居の手続きで役所に行ったり、家具や家電を買いそろえたりするのにもちょうどいい。


今の私なら大丈夫。


自分がどうしたいのか、本音を見つけて大事にできる。困ったときは意地を張らず、周りの人にアドバイスをもらったり、SOSを出したりできる。

そう思えるようになったのは、引っ越しに対して踏ん切りのつかない8年間があったからだ。

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……それから、実はね。

父の「こっち(両親)はいつもそっち(私と娘)に合わせているんだ。好きな番組が見たいなら、自分用のテレビを買いなさい!」という言葉が、私に火をつけたのは間違いないのだけど。

この口論のあと、推しの番組やDVDを見たくても、また何か言われそうで見れなくなってしまった。(とはいえ、すでに実家にはテレビが3台もあるのに、わざわざ自分専用を買うのはバカらしい)


ああ、もう!思い切り推し活を楽しめないなんて耐えられない!!!


その気持ちが、引っ越しに向けて行動するための、最後の一押しになったのだ。


お父さん、ごめんなさい。結局、私を突き動かしたのは、あなたではなく推しでした。(小声)




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春野なほ|エッセイスト・ライター
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