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森の中で羽化をした。

決して緑豊かな森の中でファンタジーな作品を撮りたいわけではなかった。
万人が見て美しいものでなくて良い。
自然と 大地と混ざり合う命を撮りたかった。

これは春乃が春乃ミアとして活動し始める以前からずっとやりたいテーマでした。
「森の中で、蝉の一生の様なものを表現する。」
しかしセルフポートレイトでは無理があるし、イメージが強すぎてカメラマンに声を掛けようにも視覚的に春乃の事を綺麗に撮ろうとしてくれる方にはお願いはできなかった。

そこで今年の春先に出会ったカメラマン・川村さん
この方しか居なかった。
川村さんとは写真で表現したいものがとても重なっていて、そして何よりも「命」を撮ってくれる方なのです。
撮影の回数を重ねて、春乃は川村さんにカメラを向けられている時でもカメラを意識せず自己表現ができるようになってた。

遂に来ましたよ、実現させる時が。

撮影のイメージとして、まず戸川純さんの楽曲「蛹化の女」を提示した。
こちらは愛する人を想い過ぎて森の中で蝉の蛹へと変容していく女の歌なんだけれど、この切なく美しい曲が春乃はとても好きで。
この楽曲から思い浮かぶものを自分で形にしたいとずっと思っていたんだ。

「樹液すする私は虫の女」

そしてもう一つ、春乃の中で蝉に対して特別な思い入れを持つきっかけとなったのはROLLYさん著「セミの法則」
蝉は幼虫の間7年間を暗い土の中で過ごし、土から出て羽化した瞬間今まで思いもしなかった姿に変容する。
ずっともがき苦しみ続けていた春乃にとって、ROLLYさんの教えてくれた「セミの法則」は人生の大きな支えとなっていたのです。

「謳歌」

それぞれ違う角度から抱いた蝉への思い入れ。
これらを春乃の中で大切に大切に熟成させて
春乃は春乃で蝉の人生を表現しようと思った。

今回は山での撮影になったので、登山〜下山の過程
真夜中〜夜明け〜陽が登るまでの時間を蝉の人生に見立てる事にした。

登山の開始はまだ夜の濃い午前4:00。
春乃は白のシースルーのガウンを纏った。
辺りが何も見えない暗闇の中で樹木に絡み、土と混ざり合い、蠢く幼虫。

そして幼虫は夜明けに向かって蛹となる。

汗と土と蜘蛛の巣でどろどろになりながら険しい山道を進み
丁度空に明るさが見えてきた頃、頂上へ着いた。
なんて素晴らしいタイミング。
春乃は羽化した。

心から気持ちが良かった。
自然と一体となれた感覚。
身体の内側から歓びが込み上げてきていた。

陽が登り、木漏れ日の中下山する春乃は蝉の成虫。
白のシースルーのガウンは蝉の羽となった。

後に気づいた事なんだけれど、あろう事か我々が暗闇の中足を踏み入れてしまったのは「健脚コース」と呼ばれる登山コースだった。
登山慣れしたプロ用のコース。
道理で険しいわけである。

しかし険しく苦しい山だったからこそ、肉体的にも精神的にも限界中の限界で良いものが撮れた結果となったと思う。
帰りは一般コースでのびやかに下山しましたしね。

最後に
春乃はこれまでヌードをやりつつも「野外露出」というものには一切の興味も湧かないため撮ってこなかった。
「外なのに裸」といった非日常感は春乃にとって魅力的に感じないのであろう。
春乃にとってヌードは一番自然なものであるから、今回ヌードで自然と一体となれた経験が自分にとっての正解な気がした。


2022.11.1 春乃ミア

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