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Annabelle

キラキラと波が光り、沈みかけた太陽が水平線を照らす。砂浜には長い影。足元の貝殻を拾って天を仰げば、頭上には星が輝き始めている。
波の音を背に街へ向かう。やがて一粒、二粒と雨が降り出した。街明かりに雨粒が光る。行きかう恋人たちは傘を広げて肩を寄せ合った。傘の下で手をつなぎ、頬に口づける。
来た道を振り向けば、遠くの海はまだ夕暮れの色を残していた。そちらにも雨雲が少しずつ近づいていく。勢いを増した雨が靴の中までしみてきた。
雨雲はやがて風を呼び、街はずれの森もざわめきだした。


☔☔☔
 
「マスター、タオル貸して」重いドアが開くなり、うんざりした顔で手を突き出したのは、ミヤビだ。
「おう、すげえな。」濡れそぼった姿にちらりと目をやり、二枚のタオルをつかんで渡す。「結構降ってるんだな?雨音、えげつないもんな」
「今日、だれも来ないんじゃない?私、来た意味あるぅ?」
「そう言うなって。あれだったら、早じまいにしてもいいしさ。とりあえず、奥で着替えて来いよ。その間にコーヒー淹れてやっから」
「あぁ、もう前髪がはりついて鬱陶しい!」
「ばぁか。前髪あるうちが華だぞ」
「そうだったわ」ニヤリと笑いながら、ミヤビは支度部屋に入っていった。
こういう日こそ、案外混むんだよな。読んでいた古い文庫本を冷蔵庫の隣の棚に戻し、老眼鏡を外しながら首を回す。さて、もうすぐ開店だ。
 
出足は遅かったが、小野寺の読み通り、混み始めた。七人も入ればいっぱいのカウンターには、すでに四人がいて、各々自分の時間を過ごしている。万理はモトコを待ってるというから、あと二人しか入れられないな。
「そういやさ、マスター、道路延長の話って、あれ、実現可能なの?」常連の佐藤、通称さとささんが声をかけてくる。
「あぁ、大宮通りの?反対運動がどうのっていってたなぁ」
「確かに便利になるんだよなぁ、朝とか5号線混むからさ、森の方から抜けられると助かるんだわ。でもなぁ」
「わかるー。森は森のままで置いといてほしいって思うよね」赤ワインのグラスを持った万理が会話に加わる。
「そうなんだよ。普段は完全に忘れてるんだよ?でも、いざ無くします、開発しますってなると、なんか嫌なんだよなぁ」
「さとさん、うちはあの辺だっけ?」とミヤビ。
「ううん、全然」
「じゃあ、関係ないじゃん」
「ミヤビちゃんは、まだ若いから、わかんないかもしんないけどさ、森があるだけで、街の価値ってあがるんだよ」
「えぇ、そういうこと言ってるの?」万理は白けた顔をする。
「地価とかそういうんじゃないさ、なんつーの、落ち着いた街感?そこを選んだ俺、そこで生活する俺、みたいな」
「結局、自分のステイタス的なこと、言ってるだけじゃーん!おじさんの考えそうなことだよね」
「ミヤビ、お口(くち)」少し窘める。
「だって、私はあの辺、小さいころ、住んでたからさ、やっぱり嫌だよ。でも、言ってたら、この街だけ年とっていく。道路が増えれば、あちこちにいい影響があるんだ、みたいなこと、市長さん言ってたじゃん!」
「ミヤビちゃん、実は政治とかに詳しいの?」万理が目を丸くしながら尋ねる。
「ううん、ママが言ってた。たっくんの」
「あぁ、ミヤビちゃんの彼氏か。彼のお母さんって、市長さんの後援会長なんだっけ?」
「そうそう。たっくん、その手伝いの声かかるのがうざいから、一人暮らししてるんだもん」
「もはや一人暮らしでもないしね」さとさんが冷やかす。
「やだー。変な言い方しないでよぅ」
「さとさん、お代わりは?」揚げ出し豆腐を渡しながら、尋ねる。
「酔鯨、冷やで」
「あいよ」
 
☔☔☔
 
カフェ雨音のドアチャイムを鳴らしたのは、大きなリュックサックを背負った少女だった。フードをかぶっていて、表情はわからないが、びしょぬれだ。店内をぐるりと見渡すと、少女は奥の四人掛けテーブルについた。
 気泡が入ったグラスに、レモン水を入れ、テーブルに置く。少女は、渡されたメニューを開くこともなく、「ココアお願いします」といいながら、周りに水しぶきをとばさないよう慎重にリュックを床に置いた。
「コート、預かりますよ?タオル、お持ちしましょうか?」
少女は顔をあげ、うなずくと、かすかな声で「ありがとう」と呟いた。中学生か、高校生か。見たことのない顔だが、こんな時間にカフェに来ていいのか?観光で来るような場所でもない。見た感じ、派手ななりでもなく、渡されたコートは有名なアウトドアブランドのものだ。丁寧にカットされたボブヘアの毛先は、ブラックウォッチの高級そうな薄手マフラーで包まれている。詮索してる場合じゃない。ココアの準備だ。
 
やっと着いた。「カフェ雨音」のことを知ったのは、8か月前。KOTOのインスタだ。どこの誰かも知らないけれど、優しい文章と静かな写真のとりこになって、毎日、見ていた。彼だか彼女だかわからない投稿者がよく訪れる場所の一つが雨音。最初は雨音という名前も知らなかった。だけど、毎日みていれば、何かしらヒントになるようなものがある。写真の隅々、文章の端々、じっくり眺めていると、こぼれ落ちてくる情報。KOTOはことさらに自分を語る人ではないけれど、特定を恐れた徹底的な情報管理、というわけでもなかった。海の近くの観覧車、花屋の後ろに見える看板、デコラティブな時計台、写りこんだ交差点名、特徴的な情報がいくつかあれば、今どき、あっという間にその人が暮らす街にたどり着くもの。そこにある喫茶店から雨音を探し出すのは難しいことではなかった。だんだんと確信に近づいていく高揚感たるや…。でも、これを人に話すとストーカーじゃないのと眉を顰められそう。自分では探求心と言いたいところだけれど。ともかく、そうやって突き止めた街に来て、そしていきつけのカフェに入ったとたん、真由は少し心細くなっていた。そもそも、私はここに何をしにきたというの?
 
☔☔☔
 
「あぁもうこんな時間!マスター、ごちそうさま」万理が慌てて、ワインを飲み干す。
「あれ、まだモトコ来てないけど?」
「残業らしいんだよね。会いたかったんだけど、もう、無理だわ。ばあばがキレる前に帰るわ」
「待ってる人がいるっていいなぁー。俺もそんな人生送りたかったわ」
「何言ってんの。マスターのこと、求めてる人がこーんなにいるのに」
「でも、みんな、帰っていくじゃん、俺おいてさ」
「じゃあ、俺、泊まろうかな。ここなら会社、近いしさー」さとさんがネクタイを緩めながら話に乗ってきた。
「男子禁制」
「つめたいわー。親父とおもってんのにさー」
「そんな年じゃねーよ」
「じゃあねー。おやすみ」万理が重いドアによりかかるようにして押し開け、出ていった。
「大変だなぁ。世話する命があるってさ」
「俺もあるよ。家にハム子いるし」
「そうだった。さとさん、ハムスター飼ってるだよね。何度聞いても違和感しかないよ」食器を下げながら、ミヤビが言う。
「ねぇ、今日、リマくん、来ないね」
 
☔☔☔
 
少女が来てから、もう一時間経つ。ココアももう空だろう。外の雨も小止みになってきた。閉店時間はもうとっくに過ぎている。
「そろそろ、おしまいに…」店の中に響く自分の声の冷たさにぞっとする。
少女は顔を上げた。
「…そうですよね…あの、この辺りでネカフェとかありますかね」
「あぁ…あるにはあるんですけど、今、ビルの建て替えだかなんかで、やってないんじゃないかなぁ。海の方、私鉄の駅の方にもう一軒あるんだけれど、あそこまで行くの、この時間だし、タクシーのほうがいいかな」
少女は「海の方は…」といったきり、口を結んだ。先ほど来た道を引き返すことに、ごく自然と、そしてはっきりと拒否感を感じていた。KOTOから離れるわけにいかない…。もちろん、ここにKOTOはいないし、会える確率は限りなく低い。そもそもKOTOの顔だってわからない。もしすれ違っても、私とKOTOの間で挨拶がかわされることもない。それでもここに居さえすれば、KOTOと繋がっているような気になる。やっと捕まえた手をほどくわけにはいかない。今、KOTOを失うわけにいかない。あなたに会いたい。あなたはこの街にいるんですよね?
 
「あの…ここに住んでるんですか?」
「ぼく?え?なに?なんで?」不意を突かれて、うまく返事ができない。泊めてくれとでも言いだしそうな彼女が、次第に不気味な存在に変わっていく。未成年者を泊めるなんて、まったく笑えない冗談だ。
「あ、えっ…と…一人旅していたんですが、宿の予約に失敗してて…」
「一人旅って…学校は?もう冬休みだっけ?」
「じゃないんですけれど、私、これまで親の仕事の都合で海外に行ってて、日本の学校に転入するまでに、ちょっと時間があって。それで、前から行きたかったところにいってみようって。」
「ここに来たかったの?ここに何しに?」聡明で健康的な女の子だ。育ちの良さがにじみ出る素直な態度。だが、そんな子がなぜ、こんな何もない街に来るんだ?こんな雨の、こんな夜に。一人っきりで。
「えー、あの…会いたい人がいて」
「友達がいるの?じゃあ、待ち合わせとか?にしても遅いな。連絡してみたの?」
「友達じゃなくて…」
「え?親戚とか?ん?」
「あー、えーっと…」と言ったきり、黙る少女。
俺は何をしているんだ。特段知りたいと思っていないのに、まるで俺の方が無理矢理聞き出そうとしているみたいじゃないか。この子がどこで誰と会おうが、俺には関係ない。とにかく、出ていってもらえばいいのだ。閉店だと言って。
「あのさ、申し訳ないんだけれど、ここはもう閉める時間だから、とにかく…うん…帰る支度してもらっていいかな?」店の外に置いてある黒板を取り込もうとドアに向かう背中に、少女が尋ねる。
「KOTOさんにどうやったら会えますか?」
 
☔☔☔
 
ドアが開いて、湿気を含んだ空気が店内にさっと吹き込む。ふわふわした気持ちが一瞬で現実に引き戻される。時計はまだ10時。ハム子よ、パパはまだ帰らないよ。会いたい人がいるんだ。ところで、今来たのは誰だ。振り返って確かめたいけど、人待ち顔だと知られたくないから、息をひそめて気配を感じ取ろうとする。
「いらっしゃい。一足、遅かったなぁ」
「あぁ、そうなんだよねー。もう、万理、帰ったんでしょ?会いたかったんだけどなぁ」
あぁ、モトコか。
「ガールズトーク、聞きたかったよ」自分の声にわずかに失望の色が含まれているのが情けない。
そんなことおかまいなしに、間髪入れず返事。「さとさんから見たら、私たち、ガールなんだ!女子だ!」
「一般的ないい方しただけじゃねーか。深い意味はねえ」
俺の返事は流して、「はい、お疲れー」モトコは、ビールのグラスを、俺のぬるくなったハイボールに当てる。
「今日は混んでないかと思ったのに、繁盛してるねぇ」
「おかげさまで」とマスター。
「天気悪いと人恋しくなる感じ、ちょっとわかるなぁ」首の後ろをもみながら言う。
「さとさんは、いつも人恋しそうだけど?」
「そうかぁ?俺、基本、人嫌いだよ?」
「うそでしょ。人嫌いがこんな店で、毎晩毎晩、飽きもせず、常連相手にしゃべってないわよ」
「そんなにしゃべってるつもり、ないけどなぁ。俺さ、家帰っても誰もいないし、ここでリフレッシュして、また明日戦場に戻っていくわけよ」
「なんで彼女作んないの?まぁ好き好きあるけど、いい男の部類には入るんじゃない?」
「なー。俺も不思議」とハイボールを飲み干す。「お代わり」
 
いつからだろう。気づけばある女性の声に耳を傾けている俺がいた。ニコニコしながら、ちょっと笑える話をしているだけ。とんでもなく面白い、というわけではない。なんだったら、愚痴だって言うのに、なぜか嫌味に聞こえない。疲れたといっているのに、悲壮感が漂わない。彼女のオーラはローズ色だ。見えないけど、たぶん。
 
「それにしても、雨ひどいねー。靴がダメになったかも。おろしたてなのに」モトコは、お通しの春雨サラダに箸を伸ばしながら言う。
「なんで、雨っつうか、嵐の日におろすんだよ」
「こんなに降るなんて思ってなかったし、そもそも、今日はすぐ帰るつもりだったのよ。だけど、時短勤務の先輩が、お子さんの具合悪いからって保育園から電話あって帰っちゃったの。そしたら、頑張るしかないじゃない?おひとり様の私が」
「まぁなー。子どもの病気はどうしようもないもんな」
「子供は日本の宝です。みんなの希望です。未来です。わかってるよー。でもさ、正直、だれが私の靴を弁償してくれるのって思っちゃう自分もいるわ」
「お前の靴、高そうだもんな」
「値段の問題じゃないけど、実際、高い」
「頑張ったモトコちゃんに」マスターが海の色の皿に盛ったチキン南蛮を出す。
「うわー!おいしそう!太りそう!!」
「要らんなら、食うな」
「食う食う。ビールお代わり!」
 
☔☔☔
 
ついに言ってしまった。口に出してしまった。これで見込み違いだったらどうしよう。KOTOさんはこの喫茶店と浅からぬ縁がある…気がする。気がするだけなのだ。勘だ。だけれど、あれだけ通っているんだもの。この店長らしき人だって、KOTOさんを知らないはずがない。ここまで来たら、もう聞くしかない。むしろ、だれもいない今は千載一遇のチャンスだ。KOTOさんがいない方が、憚ることなくKOTOさんのことを聞ける。お願い、店長っぽい人、KOTOさんのことを教えて。
 
「KOTOさん?」
「そうです。インフルエンサーの」
「ん?よくわかんないけど…俺にはそんな、インフルエンサーなんて知り合いはいないよ?」
「ちょっとこれを見てください」KOTOのインスタの画面を開いて、見せる。「これ、ここですよね?」
「そうみたいだけれど、今どき、店で写真撮ってる人なんて珍しくないんで、だれのことかわからないよ。」店長らしき人はやや迷惑そうな顔で、レジの横に看板をしまっている。
「お願いします。もう少し、見てください。きっとご存じだと思うんです。かなり頻繁にここに来ていると思います」
「そうかもしれないけれど、お客さん個人から見せられてるわけじゃないから、個人情報盗み見しているみたいで、気が進まないなぁ」
「一昨日も来てる人ですよ。ほら、ここ…」諦められずに、店長の視界に無理矢理スマホの画面を入れる。
「ん…?」急に店長の目が真剣になる。「これ…」
 
少女のスマホの画面に写っているのは、確かにカフェ雨音。そして、このメニューは、試作品だ。真琴に出した、ゴルゴンゾーラのタルト。
「ちょっと見せて」
スマホを少女の手から取り、アカウント情報を見る。
「KOTO 飲み食べる人。空と海と人工と自然の記録」フォロワー数、1万って、かなりじゃないか?これが真琴さんなのか。ここに真琴さんがいるのか。インスタやってるなんて聞いたことなかったけど。…言わないか、普通。真琴の世界がここに広がっている…。
はっと我に返ると、固唾をのんでこちらをのぞき込んでいる真剣な顔がある。
「ご存じなんですね?」
「…あ…かもしれないかな…どうかな…」真琴のことをペラペラ話すわけにいかない。何か適当なことを言わなければ…。変な汗が出る。俺の一言を待つ沈黙に押しつぶされそうだ。先に声を出した方が負け。雨足が強まった。
 
☔☔☔
 
マスターのチキン南蛮は格別だ。こんなに美味しいのに、定番じゃない。メニューに載らない、知る人ぞ知る料理。
ポテトも唐揚げも揚げてるんだから、チキン南蛮だってついでにやってくれたらいいのに、と思う。マスターは、チキン南蛮はご飯のおかずだから、こういう店で出す料理じゃないって言ってたけど、ご飯が進むメニューって、お酒も進むものじゃない?
それにしても、今日は疲れた。むくんだ足を包む、冷たい靴。考えないようにしているけれど、ものすごく不快。「これはあなたの靴ではありませんか?」って王子様が代わりのルブタン持ってきてくれればいいのに。デートに行く時間、ない、デートの約束をする相手ももう数年居ない。仕事は面白い。働いている時こそ、生きている気がする。でもふとした瞬間に、働けなくなったら自分の存在意義がなくなるのではないかという思いがむくむくと湧いてくる。
万理のような生き方を、どこか白けた目で見ていた時期が、確かにあった。だけれど、万理は人類にとって、最も重要な仕事を成し遂げたのだ。種の保存。誰も子供を産まなくなったら、人類は滅びるしかない。滅びて何が悪いの?なんて冷めた目で言う時期はもう過ぎた。実際に、子を命がけで産む母親や、限りなくか弱いのに、とんでもなく大きな存在感を放つ新生児を見れば、もう理屈ではなかった。心が押しつぶされそうな、得体のしれない感情がこみ上げ、涙があふれてきた。
「もう、モトコったら、そんなに感激屋さんだったっけ?泣かないでよー」って万理は茶化したけれど、涙は次から次に溢れてきた。そんな私を見て、モトコも感極まったのか、二人で漫画のようにおいおい泣いた。
「ワタシモ コドモヲ ウミタイ」。
程なくして、自分がそう考えていることに気づき、戸惑った。この私が?子ども?本能だろうか、遺伝子の仕業か。とんでもない、子供なんて!私の人生どうするのよ。ここまで来るのに、どんなに努力したか、犠牲を払ったか。それを手放して、コドモ?産休に育休、時短勤務…考えただけで眩暈がする。なのに、子供が欲しいだなんて。自分のなかにある矛盾に困惑する。
なのに。いろいろと調べてしまった。もうこの年齢だし、とりあえず、卵子の凍結保存。いやいや、相手がいないと、卵子だけ保存しても、先には進まない。マッチングアプリは手軽だが、結婚に行きつくのに時間がかかる。手っ取り早く結婚相談所か。いや、お見合い?そもそも結婚したからといって、相手が子供が欲しいかどうかわからないし、欲しいとしても子育てに十分な年収があるか確認が必要だ。たとえ諸々十分に確認して結婚したとしても、もし子供ができない体質の人だったらどうしよう。あらかじめ調べてくださいって言うべきか。とにかくまずは自分の体を調べなきゃ。よーし、大丈夫だった。じゃあ、相手、相手…。めんどくさいな。え?なんだって?SNSで精子をくれる人がいるって話だよ。結婚せずに、子供がうめるの?すごい!
だが、さすがに男性に連絡をとる前に、立ち止まった。昔からこうだ。自分でも病気じゃないかと思う。短絡的すぎる。性急すぎる。調べ始めると止まらない。猪突猛進。人生の大事な岐路だというのに、一週間で次のステップに行こうとするのは間違ってる。
…でも、立ち止まってる時間はあるのか?こどもは四十歳過ぎても生まれるっていうけれど、簡単じゃないって書いてあったし。何が正解なの?どうしたらいいの?コドモホシイ。でも、子ども産んで、どうするの?私。育てるの?一人で?どこで?仕事は?
そんな状況の私に、早退ママのかわりを頼むなよ。っていうか、靴だよ。靴なんですよ。あぁ、どうするのこれ…
 
☔☔☔
 
ピカっとなった瞬間、ドーン。雷。部屋はまっくらになった。停電。
 
☔☔☔
 
「おぉっとぉ」声が出てしまった。こんな近い雷は何年ぶりだろう。「大丈夫?」少女は目を見開きながらもしっかりした声で大丈夫と答えた。「それで、KOTOさんは…」
俺は、一息吐いて、話し始めた。
「多分、ここの常連さんだ。だけど、インスタの話も知らないし、特別なことは知らないよ。ここに時々来て、本読んだり、仕事か何かしたりして、そのまま帰っていくだけだから」
少女はがっかりしたようだ。
「そうですか…そうですよね…普通のお客さんなんですよね。私、なんとなく…勝手に…KOTOさんはここの人が好きなのかなって思ってたから、だから…」「好き?」「そうです。ここの写真だけ、なんていうか、柔らかいなって。特別な関係なのかなって…変ですよね。何言ってるか、わかりませんよね」
「とりあえず、今からどうするか、考えようか」
 
真琴さんが、俺のことを好きだと思ってたってことか?俺と真琴さんが特別な関係…
仮にそうだとして、写真に表れるものか?気のせい、思い込みか。
 
☔☔☔
 
「びっくりしたー!」
「何言ってんだよ。俺はミヤビちゃんの叫び声に驚いたわ。よくまぁそんな大声出るな」
「えぇでも、サトさん、ちょっと椅子から浮いてなかった?」
「浮いてねーよ!」
「そう?ミヤビには、ビクッとして飛んだみたいにみえました!」
「しかし、困ったなぁ。停電かよ」とマスター。
「暗いと雰囲気いいわね。せっかくだから、キャンドルナイトってことにしたら?」
「いい!そうしよう」
「ミヤビ、お前が決めるなよ…」とマスターが言った時には、ミヤビはバックヤードに消えていた。
「ねぇ、サトさん、誰待ってるの?」
「はぁあああ?」
「待ってるよね?ドアの方窺ってるし…もしかして、リマくん?」
「は?」
「リマくんと飲みたかったとか?約束してるの?私も今日は、リマくんと話したいなと思ってて…」
マスターの携帯が鳴りだした。
「もしもし?おう。停電なぁ。一応、まだやってるけど。え?サトさん?いるぞ。待ってな……ほい、愛しの人から」
 
☔☔☔
 
「サトさん?鷹森です。実は、今日、これから泊まれるところ、探してて。サトさんの友達の民泊してる人いましたよね?そこってなんていうところですか?」
店長が知り合いに電話をしてくれている。


KOTOさんと、この人は恋人なんじゃないかと思っていた。だから、ここがKOTOさんへの近道だと思った。だが、店長は、常連だけれど、何も知らないという。本当だろうか。疑わしいが、今のところ、調べるすべがない。
ただ、もしこの男性とKOTOさんが特別な関係だったとしても、きっとKOTOさんのことを見ず知らずの私にペラペラ話さなかっただろう。個人情報がどうのということではなく、この人はそういう人だと思う。毅然としているわけでもなく、なんだったら、少し頼りない気もするが、おそらくこの人は裏切らない。無責任に何かを放り出したりしない。ゆっくりでも着実に、事を遂行し、自分が信じた道は貫き通す。きっとそういう人だ。だからこそ、KOTOさんもこのカフェで羽を休めることができたのだろう。KOTOさん、私はあなたに会えなかったけれど、あなたの隠れ家で、あなたの元気の秘密をちょっとだけ知りました。
 
「ありがとうございます。今からつれていきます。宜しくお願いします」
よかった。サトさんの知り合いの宿は、この近くだ。送り届けよう。
「宿は見つかったよ。今日はそこで過ごしたらいいよ。なぁ、どうしてKOTOさんって人を探しているの?ネット上の人だろ?直接会いたいってこと?」
「会いたい…そうですね、会いたいんだと思います。でも、会ってどうしようとか、そういうことじゃないかも。ただ、本当に存在しているのか確かめたかったのかもしれません。AIかも、とか、いやらしいオジサンだったらとか、そういうネガティブな想像を打ち消してほしいんです」
「でも、会ったからといって、自分が想像しているような人じゃないかもしれないじゃないか。期待外れかもしれない。会わない方が好きでいられるってこと、ない?」
「期待外れでもいいんです。まずは、存在していること。できれば、悪意がなく、大げさに切り取ることなく、思ったことを本音で投稿していてくれれば、嬉しい。けれど、それは高望みです。私だって、いつも思ったことをそのまま投稿するわけじゃないし。ただ、本物であってほしいんです。自分が好きで見ていたものが実在していてほしい。信じていいんだって確信が欲しい」
少女は続ける。
「友達が、友達だった人が、実は亡くなってたんです。もうひと月以上も前に。私知らなくて…。だって、ずっとSNSには投稿があったから。まさかもういないなんて、思いもしなかった」
「どういうこと?」
「予約投稿だったそうです。しばらくの間は。彼は病気だったらしいんです。それで、自分がもういなくなることを感じて、亡くなった後も投稿できるようにしていたそうです。だけれど、それも限界がありますよね。そこで彼の意思を引き継いだのが、ご家族。彼のかわりに投稿していたそうです。だけれど、やっぱり彼じゃないから、なんとなくおかしいなって、変だなって、周辺で話題になって。ご家族、彼のお兄さんだったそうですが、その方は、もうこれ以上は無理だと思って、真実を打ち明けられたというわけです。
想像しました。彼の気持ち、ご家族の気持ち。すごく考えました。理解は…できます。だけど、やっぱり私は納得いかない。本当のことを教えてほしかった。亡くなる前に、さよならを言いたかった。彼がいないことは、本当につらいことだけれど、でも、居ないのに居るって思いたくない。居ないことを知れば、悲しんで、苦しんで、泣き叫んでいたかもしれない。ネット上の人だけれど、私には大事な人だったから。それでも、事実を知りたかった。ネットでつながってるのって、リアルタイムでその存在を感じられることが一番の魅力でしょう?それが嘘だったんです。その約束事がないがしろにされたんです。
もちろん、彼の全部を知ることができない間柄だってわかっています。だけど、一番大事な、彼が今、地球のどこかに存在していて、こんなことを考えてる、ってこと…それだけは、疑ってなかった。そこは裏切られたくなかった。
元気でいてほしいです。存在していてほしいです。でも、それが叶わないなら、せめて、彼がもはや存在しないってことは伝えてほしかった。彼が居ない、これもまた、大事な彼の情報です。情報っていうと、ゼロとイチって感じがしますけど、彼を構成する一部ってことです。いないってことさえも」
今にもこぼれそうな涙をこらえるように、彼女はぐっと歯を食いしばった。そして、一息吐いたのち、
「私、そのことがショックで、私が好きなKOTOさんは、本当にKOTOさんなんだろうかって思い始めて…」
「KOTOさんと君は、つながりがあるの?…そのネット上で」
「一度だけ。私が投稿した、紫陽花の画像でした。あんなにフォロワーがいるKOTOさんが、私の投稿を目にしてくれただけでもうれしいんですけど、コメントまでくれたんです、『わたしの一番好きな花なんですけれど、こんなにきれいな紫陽花、見たことありません。この写真、大好きです』って。」
「紫陽花…」
「前に住んでたところの近くにある日本庭園で撮ったんです。高校の授業で、植物の観察画、いわゆるボタニカルアートですけれど、それがあるというので、題材を探していて。私は自分のルーツを思わせるものがいいかなと思って、紫陽花を選んだんです。幼稚園まで日本に住んでいたので、紫陽花は見たことがあったんですけれど、その頃見たものと違っていました。雨に濡れた重さで少し傾げた花が、奥ゆかしくて、でもしっかりと存在感があって…資料として、撮りに行ったんですけれど、なんだか感動しちゃって、涙が出ちゃって。おかしいですよね。なんで、紫陽花見て、泣いてるんだろうって自分でも思いましたから」
「その紫陽花の写真を載せたの?」
「そうです。この感動を忘れたくなかったから。そして、その花に唯一反応してくれたのが、KOTOさんだったんです。」
「なるほどね。それで、KOTOさんのこと、気になるようになったってわけか」
「もともと、素敵だなとは思ってたんですが、私のあの時の個人的な感動を共有してくれたことが嬉しくて」
「わかるような気がするよ」
「そんな時、彼のことがあって、KOTOさんはいるの?ちゃんと元気にしてるの?って…心配と不安、といえばそうなんですけれど、もっと自分が霞んでいく感じ、自分が崩れてゆく感じがしてきて…気づいたら…」
「ここに居たってわけか」
「そうです。すみません」
「俺に謝ることじゃないけれど、でも、まぁ、すごい行動力だね」
「そうですよね。引きますよね。でも、不安で、確かめたくて…」
「その不安は解消できたの?」
少女は一瞬、斜め上を見上げて、すぐに「はい」と言った。
「だって、KOTOさん、いるんでしょう?そして、やっぱり、店長さんとKOTOさんは、普通より親密なんだと思います…んー、と言うか、そう信じたいです。少なくとも、店長さんにとって、きっと嫌な人ではないんだと、直感しました。きっと素敵な方なんでしょうね…あ、いいです。もう聞きません。とにかく、だから、大丈夫です」
彼女の勘の良さに舌を巻き、自分の嘘のつけなさを情けなく思いながら言った。
「そっか。ならよかった…。さぁ、行こう。もう遅い」
 
☔☔☔
 
電話を一本かけて座ったサトさんに、レモンを浮かべた水を差しだした。
「おつかれさん」
「よかったよ。部屋空いてたから。リマ、その子送ったら、もうすぐ来るってよ」
「そのリマって呼び方、どうなのよ?万理とリマで紛らわしいし、女の子みたいじゃないのよ」とモトコ。
「おいおい、お前がつけたんだろうよ、リマって」マスターが換気扇を止めながら言う。
「え、私?いつ?」
「最初に来た時だよ。酔ってたお前がむちゃくちゃ絡んで」
「イケメンすきだからなー」サトさんが水の氷をカランと鳴らす。
「全く覚えてない!」
「名前はなんだって散々聞いて。でも、よく聞こえなくってさ、『なに?りま??まり?もり?なによ?もりまひろ?いいにくいわね。もう、いいよ、「リマ」で』とかなんとか言ってたさ」
「無茶だな」
「無茶だわ」
「そう、無茶なあだ名をつけたのが、酔っぱらったお前」
「よく嫌がらなかったな、リマは。」
「無駄な抵抗だと思ったんだろ」
ミヤビのつけた太い蝋燭は、甘い匂いがしている。
 
☔☔☔
 
紹介してもらった宿は、狭いけれど清潔で、温かかった。一人掛けのソファに腰を下ろすと、自分が疲れ切っていることに気づいた。目を閉じると、そのまま眠ってしまいそうだ。
 
はるばるやってきたけれど、KOTOさんには、会えなかった。でも、KOTOさんがいることは確信したし、カフェ雨音は素敵だった。明日、町中をうろついて、KOTOさんやその痕跡を探すことは可能だ。昨日の私だったら、そうしただろう。だけど、もう十分だ。KOTOさんがいる町はちゃんと存在していて、この町の人がKOTOさんをKOTOさんにしているのだとわかったから。私の憧れのKOTOさんは、ここで育まれている、という言い方は変かもしれないけれど、KOTOさんはこの街の一部だし、KOTOさんの一部がこの街だ。その街の片鱗に少しだけ触れられて、KOTOさんのいきつけのカフェのぬくもりと匂いを体験すれば、もうそれだけで大丈夫。
 あの店長さんには、また会いたいから、帰る前にもう一度、雨音に行ってみようと思う。あの人は、大人のくせに、嘘が下手だ。KOTOさんと何も関係ないはずがない。KOTOさんのインスタを見せた時の動揺は、こちらが驚くくらいだった。もっとも、その存在をしらないということは、恋人じゃないのかもしれない。KOTOさんのインスタは、いわゆる裏垢みたいな内容じゃないから、隠す必要がないはず。友人の前で、投稿することもあるんじゃないかな。それを知らないってことは、ずっと一緒にいる人ではないのかも。でも、あの反応だもの。なにか…あ、もしかして…店長さんも、KOTOさんのファンなのか。違う、好きなのか。KOTOさんは、店長さんの好きな人なんだ。あの店長さんが好きな人なんだから、きっと実物のKOTOさんも魅力的で素敵な人なんだろうな。大人の片思いか。いいなぁ。どんな顔して、接客してるのかな。個人的に話したりするのかな。今頃、インスタ見てるかな。見たこと、伝えたりするのかな、しなさそうだな……
 
クスッと笑いながら、少女は体を起こし、携帯をポケットから取り出した。SNSを開く。「おやすみタイツ。今日はいい一日だった。あ、いつの間にか、停電が解消してる!!もう寝るけど笑」
 
☔☔☔
 
雨音に戻ってきて、びしょぬれの上着もそのままに、椅子にどかりと沈み込む。KOTO…真琴さんは、インスタやってたのか。聞いたことなかったな。そういや、写真撮ってたっけ。あとで、見てみよう。教えてもらってないから、なんだか覗き見しているような、ちょっとした罪悪感があるが、全世界に公開してるんだもんな。許されるだろう…
そうだよな。好きな人のことは知りたいよな。なんでも知りたい。俺だって知りたい。あの子と違って俺は真琴さんが存在していることは知ってるし、接点がある。顔を知っている。好きな飲み物を知っている。いつもどんな服装なのかも、知ってる。でも、それだけだ。俺と真琴さんの関係と、あの子と真琴さんの関係、どちらが深いだろうか。
あの子が真琴さんのことを知りたいと思うように、俺だって、真琴さんを知りたい。まずは苗字が知りたい。年齢が知りたい。この街の、どの通りのどの家に住んでいるのか。仕事が休みの日は何時に起きて、何をしているのか。趣味は何か。好きな本、好きな映画、好きな場所。時々つけている香水の銘柄。いろいろ知りたい。一緒に暮らしている男はどういうやつなのか。なんで、結婚指輪をつけなくなったのか。知りたい、聞きたい、直接、真琴さんの口から。たとえ、それが俺が望まない言葉であっても、あの少女が言うように、それが真琴さんなのだから。
 
ガタンと音がして、モーターが回り始めた。店内の明かりがともった。さて、店を閉めて、サトさんにお礼をいいに行くか。
 
☔☔☔
 
「そういえば、今日、真琴さん来ないね。天気が悪い日によく来てる気がするんだ」
「そうだっけ?」
「雨女なのかなって」笑いながらモトコがお代わりの合図をする。
「あー、私も真琴さん、雨の日によく来るなって思ってた。赤い傘さして」ミヤビが、空いたグラスを下げながら答える。
「あぁ、言われたら、傘のイメージあるかも」
「雨の日は人恋しいからなぁ」
「何度言ってるのよ。サトさんは、いつも人恋しいだけ」
「人を寂しい中年男みたいに言うなよ」
「そう思ってるわけじゃないけれど、サトさんみたいな人がここにいてくれるって思うと、安心して来られるのは事実」
「どういうこと?」
「私だけを待ってるわけじゃないんだろうけれど、いつでもみんなを待っててくれるって…お母さんみたいな」
「なんだよ『お母さん』って。もう少し、ましな例えはないのかよ」
「じゃあ、お兄ちゃん…?…いや、やっぱりお母さんだよ!」
「せめてお父さんにしてくれよ」
「ただいまーって言う相手は、お母さんがいい」
「令和なんだから。男女差別禁止だろうよ」
「問題はそこなの?」
「あー、うるさい。何時だっけ?」
「まだ十時半だよー」
「そろそろかな、リマ」
「リマ!そうだった!リマってさぁ、真琴さんと仲いいよね」
「…そうだっけ?」
「気づいたら、二人で話してる。コソコソクスクス。かわいいんだよなぁ。あの二人。この間なんて、リマ、真琴さんにこっそり白い紫陽花の花あげててさぁ、あれ、雨音に咲いてるヤツだよね、確か。真琴さん、顔、真っ赤にしてて、もうほほえましくって、ニヤニヤしてみちゃったわ。中学生かよってね」
「でも、真琴さんって旦那さんいるんじゃなかったっけ?」とミヤビ。
「ええっ、そうなの?まぁ、若くないけど…そんな雰囲気ないよね?」
「おいおい、もとこ。若くないは余計だろ。本人いない間に、いろいろ噂するなよ。聞きたいことがあれば、直接、聞けばいいだろ」とマスター。
「悪口じゃないよ。リマと真琴さんがいい感じってだけ。リマは明らかに慕ってるし、真琴さんも嫌じゃないんだろうなって思ってたんだけど……結婚してるのか」
「結婚しているからといって、旦那さんのこと、好きどうかはわかんないじゃないですかー」
「ミヤビ!お口(くち)」
「だって、好きってなって、結婚して、何年も好きって気持ちって続きます?好きじゃないけど、一緒にいるってことは、普通にあるんじゃないですかぁ?」
「何が普通だよ。でも、わからんでもない」
「なんでサトさん納得してるのよ。そりゃ、いつまでも結婚当初の気持ちじゃないかもだけれど、でも、嫌な人と一緒に暮らし続けるのってつらくない?」モトコが言う。
「つらい。つらいんだと思う。それで捨てられた」
「やめて。サトさん。からい話盛り込んでこないで」
「俺はもういいんだよ。今更、どうも思いません」
「真琴さん、今、つらいのかなぁー」
「なんでそうなるんだよ。幸せに過ごしているから、いつもニコニコしてるんだろ。俺は、あの人の笑顔しかみたことないぜ?なぁ、マスター」マスターも頷く。
「わたし、違うと思う。真琴さん、いつも笑顔だけど、たぶん、何かあるんだよ。それで、ここに来て、リマさんと話して、癒されてるって気がする。絶対そう!」ミヤビは自分用にレモンジュースを用意しながら言う。
「それは、あるね。それで、リマの前では鎧脱いでるんだよ、きっと。私たちと話している時と違う雰囲気だもん。女は、そういうの気づいちゃうよね」
「ですです。わぁ、年下彼氏かぁ」
「彼氏じゃないでしょ?お互い、片想いの、両想いってヤツでしょー」
「キャー、なにそれ、キュンってするー!!」
「もうお前たち、やめろやめろ。リマ来るって!」
 


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