グレートウォール(字幕)を観ました。

万里の長城を舞台にした、とてつもない物量で押し寄せる怪物を倒す話。アマゾンプライムにて鑑賞。

あらすじというかだいたい全編について。ネタバレが多分に含まれます。

ウィリアムと仲間は黒色火薬を求め中国にまで到達していた。黒色火薬は中国における秘伝であり持ち帰ればかなりの大金になると予想されていた。
彼らが馬賊からの追跡を逃れ野営をしていると得体の知れないなにかに襲撃される。仲間は瞬間的に殺され、ウィリアムとトバールの二人の連携でなにかの腕を切り落とし殺害するもそのなにかは谷に落下していった。見たこともない異形の腕だけが残され、物珍しさもありウィリアムは腕を荷物に加えた。
それから馬賊から逃れる過程で万里の長城に至り、馬賊に殺されるくらいならと万里の長城で捕虜となる。
万里の長城に駐留する禁軍に腕について聞かれ、殺したと伝えると彼らは驚き偽りであると疑うものの、どうやら怪物について知っている様子であった。怪物は饕餮(とうてつ)であると聞かせれ、60年に一度の饕餮の襲来が間近であることも知る。軍師ワンにより腕が本物でまだ鮮度が高いことからウィリアムとトバールの発言は真実とされた。
そして捕虜のまま饕餮の襲来が始まる。その際、白人のバラードに助けられ襲いかかる饕餮を倒したとして禁軍の将軍と腹心のリン隊長に実力を認められ扱いも捕虜ではなくなった。
その後二人のもとにバラードが現れ、彼も黒色火薬を求めていたことを語り、次の襲撃の混乱に乗じて火薬を入手し脱出しようと提案される。

そんな中、過去の書物にて饕餮の力を磁石で封じられることが発覚し、ウィリアムは次回襲撃で効果を確かめるために饕餮の捕獲を提案した。
脱出をしたいトバールと禁軍に加勢しようとするウィリアムは対立する。そして襲撃が発生する。禁軍と戦うウィリアムを連れて行くために、トバールは長城の外に出て彼と共闘する。
無事饕餮も捕獲でき磁石の効果も確認することができた。しかし饕餮が襲撃の裏で長城の一部に大穴を開けてすでに長城を突破していることが判明する。その騒動のさなか、トバールとバラードは火薬を持って逃走してしまう。彼らを止めようとしたウィリアムはトバールに気絶させられて、再度禁軍に捕縛されてしまう。
裏切りに激怒したリンに処刑されそうになったところで、ウィリアムに助けられた兵士により誤解であることが分かり処刑は免れることになった。
そしてリンや兵士は都に向かった饕餮を殺すため開発途上の気球に乗る。彼女を追ってウィリアムと軍師ワンも都へと向かう。

都ではすでに戦闘が始まっており、リンが饕餮に襲われるところをウィリアムが救出する。饕餮の女王の周囲は護衛の饕餮や彼女に餌を運ぶ兵士で足の踏み場もなく埋め尽くされていた。そこでウィリアムらは捕獲された饕餮を利用して女王討伐を画策した。火薬を巻きつけた饕餮を解き放つと、ウィリアムとリンは塔から女王を射撃するも護衛に阻まれてしまう。二度目の射撃も失敗し彼らの居場所を特定した女王により兵士が塔に群がる。
磁石を所持し塔の入口からの饕餮の侵入を防いでいた軍師ワンであったが、饕餮が塔の外壁を登り直接ウィリアムとリンを狙い始めたところで、ワンは磁石をリンに投げ渡し犠牲になる。
集中攻撃の中で、ウィリアムの撃った火矢が火薬に命中し、女王を吹き飛ばし周囲の饕餮も活動を停止した。
その後饕餮を討伐したことで讃えられたウィリアムは褒美の黒色火薬と引き換えに捕まっていたトバールの解放を選び、リンと別れ帰路に立った。

今回は初の試みということで全編ざっくりとなぞってみた次第。

久々のアクション映画でとても楽しめた。ストーリーはまっすぐで難しかったのは字幕において饕餮にルビがなかったことくらい。吹替なら気にする必要もない。劇中ではネイティブな中国語の発音であったため視聴中ではあったが停止して読み方を検索した。
この映画の魅力はアクロバットな戦闘のアクションと魔改造された万里の長城にあると思う。また禁軍が使う兵器もたくさんあり、有用性や実用性、効率などさまざまな疑問が浮かぶ代物も含まれていた。
饕餮の襲撃は想像を絶する量がやって来る。ワールドウォーZのゾンビくらい来る。とにかく物量で押してくるにも関わらず、単体との戦闘描写ではその俊敏性や耐久力の高さも見て取れる。モンスターハンターで例えるならランポスの集団ではなくドスランポスの集団みたいな感じ。……伝わるんだろうか。
しょうもない例示はわきに転がすとして、とにかく物量が凄まじいのだ。禁軍も弓兵をそれこそごまんと配置し、巨大な投石機なんかも配備しているがそれらで退けられる量ではない。
そんな物量に対抗する兵器、戦術の一つにバンジージャンプで長城から飛び降り手にした槍で刺し引き上げ、再度槍も持ち飛び降りるという戦いをしているシーンがある。
いやいやいや……その効率の悪さどうなっているんだよと。飛び降りるのは体重の軽い女性の兵士が担当し、リンもその一人として前線で善戦している。のだがほかの女性の兵士は結構やられている。
その長城バンジージャンプ戦術はビジュアルの派手さがあるのはよく分かる。劇中の女性兵士の装具はとても綺麗な深めの青色をしており、まるで戦乙女といわんばかりだ。女性が槍をそれぞれの手に持ち、飛び込み板から跳び、槍を饕餮に突き刺し戻っていく。それ自体はかっこいいしこの映画を象徴するものとしても扱われていたのでなんなら好きでもある。
長城バンジージャンプの応用編として男性の兵士が命綱一本で壁をくだり斧で饕餮を倒すシーンもある。兵士が余っているのだろうか。
しかし引き上げに男らが数人で滑車から歯車やらを回している。女性一人につき男性数人が女性の引き上げのために待機しているのだ。魔改造された万里の長城でも引き上げの自動化は難しかったのかもしれない。
ほかにも投石機から射出されるのはカービィシリーズに登場するゴルドーのようなトゲつき鉄球だったり火球だったりする。
さらには長城の壁面からは回転する刃が飛び出し、壁を登る饕餮の胴体を真っ二つにする。回転する刃なんて人が一人ずつ死んでいく脱出ゲームくらいでしか見たことない。
ここまで書いたように万里の長城に配備されている兵器はフィクションでしか見かけないようなものが多く、映画そのものは真面目なテイストであるのにとんでも兵器が運用されている点で笑いを誘う。英国面にでも堕ちてしまっているのだろうか。この万里の長城でならパンジャンドラムも運用できそうだ。まさか中国がかの有名な英国に並び立つ珍兵器を運用しているとは思わなんだ。

以下は饕餮について。
怪物のモデルは同じく饕餮(とうてつ)という名前で中国神話に登場している。その名は財産や食物を貪る獣という意味を持つ。
映画では60年に一度大群でやって来る怪物として描かれている。万里の長城は怪物が都に達しないように抑える防壁であり、劇中の万里の長城はとにかく魔改造されている。
映画における饕餮は司令塔である女王を中心に彼女を守る護衛と兵隊で構成されており、それぞれビジュアルも異なっている。
女王は映画のエイリアンに似た顔つきで頭部に扇のような器官があり、そこから超音波(?)を発し使役する饕餮に命令をおこなう。
護衛の見た目はゴリラにエリマキトカゲの襞襟(ひだえり)をつけた感じ襞襟は展開することで盾のように攻撃から女王を守る。展開された襞襟は非常に頑強で射出された矢をやすやすと弾き返すほどだ。
兵隊はいかんともしがたい見た目だがヤスリのような歯が並び。通常の獣と照らし合わせると肩に当たる箇所に目を持つ。そしてとにかく俊敏で凶暴。

個々も饕餮と呼称されるが、その生態から鑑みるに群集全体を饕餮と呼んでもよさそうだ。饕餮の指揮系統は全て女王に集約されており、彼女の命令で群集が行動する。個々の生命活動がどうおこなわれていたかは定かではないが、映画のラストで女王は死亡したことで全ての個体が活動を停止したことを考えると、個々の饕餮は生物というよりは女王の手足のように捉えるのが性格かもしれない。
捕獲された饕餮は磁石が近くにあると全く動作をしなくなる描写がある。磁力により女王の司令である超音波らしきものが阻害されているのだろう。つまりラジコンカーに電波が届かず動かないのと同様で、女王を除く個々の饕餮に意思はないのだろう。
饕餮は60年に一度襲来するとのことだが、そのたびに賢くなっているらしい。それらを示唆する描写も多く、倒れた饕餮の死骸を持ち帰ったり、捕獲するための返しのついた槍もとい銛が刺さった個体のそれを別の個体が引き抜いたり、全編で書いたように襲撃の裏では長城に大穴を空ける意表もついている。
饕餮の封じ込めに磁石が有用と書かれた書物は900年前のもの(wikipedia参照)らしいが、その間にとてつもなく学習していたのだろう。最低でも15回は襲撃されているが映画における物量が初回から来ていたら、なんの対策もしていないゆえにはるか昔に中国どころか地球は滅んでいたように思うけど、最初は女王と少数だったのだろうか。

終わりに。
既存の建造物が実は隠された機構があるとかとんでも兵器とか、アクロバットなアクションとか、投げた手斧に矢を放ち軌道を変えて二箇所同時に攻撃とか、フィクションにおけるロマンが詰まった作品であった。
日本の都庁もロボットに変形できると囁かれているし、もし饕餮のような怪物が現れた際にはぜひそれらを退け日本を守って欲しい。
またほとんど触れてこなかったがウィリアムに助けられ、ウィリアムの疑いを晴らした名もなき兵士の活躍やその顛末にも注目して欲しい。

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