
空を見上げる(2024年冬: 心磨き)
よく晴れた冬の一日が好きだ
凍てつく空気に身を縮こませながらベランダに出て、朝陽のシャワーを浴びると全身が洗われたような感覚になる
遠くに見える真っ白な富士山と真っ青な空のコントラスト
ありがたくてつい深々とお辞儀をしてしまう
誰かに見られたらちょっと恥ずかしい光景だ
夕暮れ時の風景もまた息を呑むほど美しい
青空がだんだんと橙に染められ深くなっていく、そのグラデーションは自然が成せる神秘だ
ただただ美しい、そんな風景を何度でも惜しみなく見せてくれる自然は偉大だ
当たり前のように思える日常が何よりも尊い
生きていると日々色々あるが、それでも美しいものを美しいと感じられる心のゆとりはいつも持っていたい、そう思う
ふと、ひと月ほど前に出会ったアパレルショップの店員さんのことを思い出した
先日届いたダイレクトメールにその人からの手紙が入っていた
ありきたりなお礼文ではなく、私とした会話を細かに覚えている内容だった
佇まいや会話から独自の美意識を持っていることが分かるその人は、私にある素敵なセレクトショップを教えようとしてくれたのだが、その時は名前が思い出せず、後に思い出したそのお店の情報を手紙に書いてくれていた
長年ホテルで働いていた私は、職業病と言ってもいいほど、どこに行っても無意識で接客を観察してしまう
多くの人は気にも留めないようなちょっとした言動や立ち居振る舞いがとても気になる
大抵は喉まで出掛かかっても言わずに自分の中で収めているからまだいいものの、ともすればクレーマーになりかねない面倒な人間だ
しかし、逆に素晴らしい接客に出会えた時はえらく感動して名前まで聞いてしまう
その人にまた接客をしてもらいたいからだ
どんな仕事であっても、人と関わる以上、何よりも大切なのは、知識や経験よりも人間力、言い換えれば人の心だと私は思う
手紙をくれたその店員さんは知識や経験も申し分なくプロとして素晴らしかったが、何よりその温かい心に私は感動を覚えた
その人に会いにまたそのお店に足を運びたいと、鞄の中にもらった手紙を忍ばせている
私もまたそういう人間でありたい
冬の始まりの温かい陽の光に包まれながら、ぼんやりと、でも深くそんなことを想った