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土を耕す(2024年初夏: 再会)

私には霊感や特殊な能力はない
元来スピリチュアルの類には興味がなく、どちらかと言えば避けてきた方だった
しかしこれまで生きてきた中で不思議な出来事は幾度となく経験していて、その経験の数々から目には見えない何かはあると今は信じている

自分のお店を始めることを決意してからも不思議な出来事があった

一つは今回間借りさせてもらえることになったカフェのオーナーKさんとの再会
私は20代から長らくホテル業界で働いてきたが、Kさんとは北海道のリゾートホテルで出会い、その後数年のブランクを経て、東京のシティホテルでまた一緒に働くことになった
と言ってもKさんは料飲部、私は宿泊部だったので、仕事上での接点はほとんどなく、すれ違えばちょっと話をする程度の間柄だった
東京のホテルで働いていた当時、たまたま私はKさんの住む二子新地の隣駅、二子玉川に住んでいて、当時Kさんから「うちの奥さんが今度カフェを始めるんだよ〜」と世間話程度に聞いていた
それが今から10年以上前のこと
それからしばらくして私はホテル業界を離れ、全くの異業種に転職をした
もちろんKさんと会うことも連絡を取ることもなくなった

夢を叶える道に進む決意をした時、それを報告したい大切な友人が何人かいた
その内の一人がKさんと同じホテルで一緒だった後輩のSちゃん
出会った当時は全く違うタイプで苦手かもとすら思っていたが、彼女もたまたま私と同じ二子玉川に住んでいて、関わっていく内に波長が合ったのか不思議と一緒にいて居心地がいい感覚が芽生えた
それから今日に至るまで、彼女とは年に1、2回会う程度の関係だが、会えば昨日も会ったかのような感覚で話ができる変わらない居心地の良さがある
そんな彼女に私の決意を報告した時、彼女がポロッと「そう言えばKさんの奥さん、二子新地でカフェをやっていましたよね」と言った
私が当時Kさんから聞いたことをSちゃんに話していたらしい
Kさんの名前を聞くのは何年か振りだった

もう一人は北海道のリゾートホテルで一緒に働いていた先輩のYさん
オープニングスタッフとしてたくさんの苦楽を共にしたお世話になった人
私が東京のホテルを退職した後、Yさんが上京し、奇遇にも同じホテルで働き始めた
彼女とも年に1、2回位しか連絡を取り合っていなかったが、ちょうどSちゃんと同じ時期に連絡があり、翌週に久しぶりのご飯の約束をしていた
Yさんは今も現役でそのホテルで働いているので、私の古巣訪問も兼ねてそこで待ち合わせをすることになった
その当日、先週会ったSちゃんの言葉をふと思い出し、同じく今も現役で働いているKさんに会いに行ってみようと思い立った
私は特殊な能力はないが、直感が働くのかもしれない

レストランフロアのある階に降り立って、エレベーターホールを出た瞬間、Kさんが目の前をスッと横切った
何というタイミング
フロアのざわめきに負けじと、思わず大きな声で呼び止めた
「お〜!久しぶり〜!」と屈託のないあの頃と変わらない笑顔
わずかながら緊張していた心が一気に緩み、堰を切ったように言葉が溢れた
奥さんと同じくカフェをやる決意をしたこと、未経験だから間借り営業から始めようと思っていること、ただの近況報告のつもりが予想外の反応が返ってきた
「え〜そうなの〜?!ウチのカフェ貸してあげるよ〜!」
これぞ晴天の霹靂、思いもよらぬところからいきなりチャンスの神様が舞い降りて来た
当時とあるお店に間借りの打診をしていたところだったので、Kさんのお店を借りることはつゆにも考えていなかった

そんなKさんとの再会から5ヶ月後の2024年11月3日、記念すべき小さな第一歩
『春音ハルネ』プレオープン
大空に向かって万歳したくなるほどの秋晴れは、駆けつけてくれた友人たちの強力な晴れ女、晴れ男パワーのおかげだったと思う

ご縁とタイミングとはよく聞くが、あの時あのタイミングでSちゃんやYさんと会っていなかったらこんな運びにはなっていなかったと思う
連携プレーのようなご縁の繋がりに助けられて私は今ここにいる
人とのご縁はどこでどんな形で繋がるか分からない、改めてそう感じさせてくれた不思議な出来事だった

追記:
Kさんのカフェには神棚があり、裏手には小さな神社がある
後日知ったことだが、Kさんの実家は地方に古くからある神社で、お兄さんと弟さんは現役の神主さん、奥さま曰く「でもウチの主人が一番神主っぽいのよ」
この再会を単なる偶然とも思えずにいる


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