
82年生まれ、キム・ジヨンを観てきて泣いた。
10月9日からロードショーの始まった韓国映画『82年生まれ、キムジヨン』を観てきました。勉強放って初日に行きました。それくらい気になっていた映画だったから。
原作の同名小説は韓国で社会現象になったそう。小説の詳しいことはこちらのサイトを読んでください。
映画を観て、初っ端から泣きました。お正月、義実家に帰省して姑の手伝いをするジヨン。姑は張り切って大量の手作り料理を仕込むし、それを嫁に手伝わせる。で、これもあるあるなんだが、姑が早起きなんだわ。翌朝すでに姑が動き始めている気配で慌てて起きて、姑からもらったどっかの景品の花柄エプロンをつけて手伝うジヨン。
そのうち義妹たちも実家に帰ってきて歓談が始まる。この中で、一人だけ「他人」であるジヨン。
このシーンだけでもう嗚咽ですよ。私の結婚当初がまさにこれだもん。12月31日から大量の料理の仕込みを手伝い、1月1日は料理を運んだり継ぎ足したりしながら、義父母、義きょうだいの前でニコニコ話を聞き……。一見馴染んでいるように見えて、強烈な疎外感。
なんで夫の妹は嫁いだのに正月を実家で過ごすことが許されて、私は許されないのだろうって思っていました。
映画ではここで、ジヨンに実母が乗り移ったようになり「奥さん、うちの娘も実家に返してあげてくださいよぉ」と言って場を凍りつかせ慌てた夫が退散させます。
時々、他の人が憑依してしまうような言動を見せるようになったジヨン。彼女はなぜ自分を喪ってしまったのか。そこには韓国で女性として生まれ、妻となり母となって生きていくことの困難さに原因があり………。
となるわけですが、韓国の物語でなくてそっくりそのままこれは日本にも当てはまる。
韓国、日本、どちらも女性にとっては生きづらい。私も大学時代までは男女平等だと思い机を並べて対等にやっていた男性と、気づけば大きく差がついています。最初は保育園に預ければ仕事復帰できると思っていた。
でも、熱を出したり登園しぶりをしたり、出勤前と帰宅後の家事育児でクタクタになっているところに、今度は自分が熱を出したり。それでも休めない家事育児。小学生になったらラクになるかと思いきや、宿題のサポート、馴染めない学童保育、そして発達障害があるとわかり通院、カウンセリング、終わりなき登校渋り……。
毎日毎日平均台の上を歩くような不安定な中、次から次へと問題ボールが投げられてくるのですよ。一つ避けたらはい次。しばらく平和だと思ったら、次のステージに行ったらまた新しいボールが投げられてくる。
そうこうしているうちに、正社員では働けないという現実にぶつかり、いろいろ試行錯誤して疲れ果て、気づけばうつでメンタルクリニックに通うようになった今。
映画にも
「できている人もいるのになぜ?」とジヨンが精神科医に問う場面が出てきます。私も幾度も同じことを思った。
「親とか頼れる人がいて仕事続けられている人もいるのになぜ?」「協力的な夫がいれば続けられるかもしれないのになぜうちはダメ?」「なぜうちの娘はこんなに問題を起こすの?」
「なぜ、私は働けないの?私が悪いの?」
映画と私の現実で大きく違うのは、ジヨンを取り巻く人々の情が厚いことでしょうか。
ジヨンの夫は、うちの夫に比べれば100万倍優しいし、彼女のことを考えてくれる。ジヨンの異常に気付いたら自ら精神科医に相談しに行くし、「僕と結婚したせいで……」とジヨンの手を握って泣く共感力もある。義母からも守ろうとしてくれる。
ジヨンの母もこうなってしまった娘を思い、抱きしめてかわいそうだと大声で泣く。
ジヨンの父もずれているけれど、彼なりに反省をして彼なりにジヨンを思う。姉と弟とも仲が良い。
この親子の情の厚さは日本よりも韓国の方が直接的で激しいかもしれません。まぁ私がネグレクト気味の家庭に育ったので余計にそう思うのかもしれませんが。これだけ心から思ってくれる人が周りにいるならばジヨンは幸せだな、と思ったものです。
母親になった途端、自分を社会で生かし切ることができなくなり、自分を喪っていくジヨン。原作本の方がより社会に対して救いがない終わりになっています。
映画では多少希望を持たせるような終わり方をしていますが、すでに小中学生の母である私は、
「アヨンちゃん(ジヨンの娘)が大きくなっていくにつれ、もっともっとある意味母親は大変になっていくのだよ〜」と思わず呟いてしまったのでした。
映画館を出た私は、うちの夫の共感力のなさ、協力のなさはすごいレベルだったんだな……と改めて思い、それにダメージを受けて帰宅しました。社会での女性の生きづらさ云々より、自分の個人的夫に対する恨みつらみが呼び覚まされてしまい泣いてしまった感じです。
週末、夫にも観てきたら?と言って映画を観に行かせてみました。
感想は
「よくわからん」
やっぱ無理だぁ……
「わからないのはきっと、ジヨンの義母だってジヨンの気持ち理解できないし、夫デヒョンだって優しいけれどジヨンの辛さが理解できるかといったら違うと思う。でもさ、自分たちの娘が結婚して、子どもを産んで自分を生きることができなくなって壊れていったら、かわいそうだなって思わない?」
と夫に言ったのですが、無言でした。夫に何か伝わるんじゃないか、という気持ちがまだ捨てられない私。またやっちまった。