部屋でひとり、ゆらり、揺れる
映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」が好きだ。
特に好きなのが主人公のひとり、エヴァがタバコをふかしながらスクリーミン・ジェイ・ホーキンスの音楽をかけ部屋でひとり、ゆらゆらと身体を揺らすあの場面。
なんてことないシーンなのだが、初めて観た時からその場面の残像は私の頭の中で繰り返し再生され、特に好きでもないあの音楽は私の脳内でも何故か心地良く鳴り響く。
落ち込んだ時、ご機嫌な時、ヘトヘトに疲れた夜、何でもないいつもの朝、
映画館の暗がりの中出会ったあの瞬間から私の憧れの女子となったエヴァは、いつだってわたしの脳内でお気に入りの音楽をかけ、頭を揺らす。煙草をふかす。
そしていつの間にかすっかり大人になった私は今日も、頭の中でゴキゲンな音楽をかけ、そっとひとり、ゆらり揺れる。
そして明日もきっとひとり、地面を踏みしめただただ暮らして行くのだろう。