芳明の風景 巡礼  57

「なんなんだよ」
 僕は訳がわからなくて、もうどうしていいのかわからなくなって、泣き出してしまった。このファイルの最後に、彼女ははっきりと記している。僕のもとへ帰ってくると。
 僕と一緒に歩いていこうと、僕と一緒に生きていく事を決めたんじゃないのか?じゃあ、どうして、君は消えてしまったんだ。
「僕のもとへ帰ってくるんじゃないのか?
気づいたって、なにに気づいたんだよ。
 帰ってくるんだろう? 僕の待っている、僕の家へ」
 どれくらい、ロビーでうなだれていただろう。もう僕は何もわからなくなって、どこに行く気力もなくて、なにをしていいのかわからなくなって、ただただそこで彼女の無事を祈っていた。

 僕は、もう一度彼女のファイルを最初から読みはじめた。
「頼む、僕のもとへ。無事に帰ってきてくれ」
 一文字一文字をかみしめながら、彼女の無事を祈りながら。

「やめてくれ、彼女の飛行機を・・・」
 彼女の歩いてきた道のりを、再び僕も歩きはじめた。
 祈りとともに。

 神の光かとみまごうほどのまばゆい光が天空でスパークした。
 その光に魅入られた数え切れないたくさんのいのちは、一瞬にして消え去った。
 人間だけではなく、動物や植物や、地球上の数え切れない生命が、蒸気のように消え去った・・・

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