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FILE 旅を終えて。
風がいろんなものを運んできては、また流れてゆく。
その風は途切れることなく、ずっとこの惑星を流れつづけている。
その風を、愛と呼ぶのかなあ。そんなことを、ふと思ってみたりする。
ねえ、芳明。わたし、わかったよ。すべてを想い出したよ。
わたしもあなたも地球も風も木々も、みんながつながっているんだね。
わたしたちは、水のしずくのように、水面から離れて存在しているきらめきの珠にすぎない。宇宙に溶け込むのは、とても簡単なことなんだ。海が雨を待っているように。わたしたちが降りてゆくことを、宇宙はいつだって待っている。宇宙はいつだって受け止めてくれる。
わたしは、水のひとしずく。わたしは、この惑星のかけら。わたしは、この惑星のすべて。何が欠けても、この宇宙は存在することがないほどに。
すべてはひとつなのではなくて、すべてでひとつなんだ。
世界は混迷を望んでいるのかもしれない。もう引き戻すことができないほどに、悪い方へと向かっているかのようにも見える。
けれど、今、この瞬間に、その軌道を変えることができる。
例えば誰かが、世界の終末を望んだとしても。例えば誰かが、今日をしあわせに生きることをあきらめてしまっても。例えば誰かが、暗い道でしゃがみ込んでしまっていたとしても。
それよりも強い想いで、世界のよろこびを創造しつづければいい。
深い岩盤を通って染み渡った水がやがて湧きいづるように、いのちが産まれ続けるように、創造しつづければいい。世界を喜びで充たすほどの希望を持って。
たったそれだけのことだよ。
芳明、わたしは知ってしまった。ううん、思い出したの。この世界のすべてを創りだしているのは、わたしだと。それを思い出して、その真実を認めることは本当に苦しくて、つらいことだった。だって、世界で起きていることのすべてを、自分の責任として引き受けるということなのだから。
だからこそ、問い続けなければならないと思うの。
「もしも世界を創造するなら、どんな世界を創造しますか?
あなたの夢がすべて叶うとするならば」
思い出せばいい。惑星のかけらであることを。そして、この惑星のすべてであることを。
わたしたちは選択することができる。望むままの世界を。ほんとうに生きたい世界を創ることができる。それを望めば、ね。
わたしは、ここから歩いてゆく。わたしが調和そのものになって、そのまんまで。すべてを許し、愛し、幸せでありながら、旅をつづけてゆく。
それが、すべてを満たしてゆくことだと、やっと思い出したから。
わたしは、惑星のかけらだ☆
さあ、帰ろう。
芳明の待つ家へ。