見出し画像

「菜の花なばな」毎週ショートショートnote:お題【逢いたい菜】参加記事

たらはさん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。


大地が黄の色に覆われるのが見たい。

動機はそれだけだった。

はじまりは一人の酔狂者、呆れる人々を尻目に荒れ野に種を蒔き、黄色い小花を拡げ、群生に変えていった。その様子に惹かれる者達が少しずつ現れ、やがて数十人ほどの同士が集うこととなった。

荒地を黄色い花で覆おう。

ただそれだけ、何の益もない詮なき行いは、10年続いた。

乾いた土に石ころだらけだった荒れ野が黄色い菜花で彩られ、道行く人々は足を止め黄色の波を眺めていく。

「綺麗な風景だ」
「自分たちもやってみよう」

口から口へ伝えられ、菜花の黄色が広がり、いつしかその街は【黄色の街】と呼ばれるようになった。

黄色い風景が人々の目を楽しませる。黄色の街、その評判を聞き、街を訪れる人が増えていく。


はじまりの男がいた。

黄色い染まった、幸福の風景を見たい、ただそれだけを思った男が。

黄色い野が拡がった街に満足し、彼は静かに姿を消した。



「ああ、彼となばなを味わいたかった。彼がを食べる姿に逢いたい

彼を知る一人の女だけが、菜の花の群生に彼の幻を見ていた。
(完)


拙稿題名:菜の花なばな
総字数:442字

よろしくお願い申し上げます

#毎週ショートショートnote
#逢いたい菜
#お題で書いてみた
#たらはかにさん
#ショートショートnote
#AIとやってみた
#AIでヘッダー画像をつくってみた
#Canva

いいなと思ったら応援しよう!

春永睦月
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。

この記事が参加している募集