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Letter from incubus【毎週ショートショートnote|お題『夜からの手紙』】参加記事

たらはさん、お題ありがとうございます。貼付記事以下、参ります。

その手紙は、確かに夜からのものだった。深淵を纏い、夜露に濡れ、綴られた言葉以上の事柄を私に伝えてくる。

「夜陰が夜の底に溶けていく。眠りについた心根の、その奥底に潜む黒き影が夜の香りを纏って静寂しじまに沁みていく。人の心はひと色ならず、様々な彩りを隠すもの也。ゆめ留意を怠らず、足下を掬われぬよう努めるべきであろう」

夜からの手紙は、差出人の名前が滲んでいて読み取れず、それでいて胸の奥に響く言葉で綴られていた。手紙に綴られた言葉は夜の風に乗って舞い上がり、静かに夜陰へと紛れ込んでいく。夕暮れと朝の合間を縫い付けて、とりとめのない夢に形を与える。

形を与えられた夢は夢魔から現実へと顕現し、私の傍へとひたひたとすり寄ってくる。冷たい風が頬を掠めて、右から左へと吹き抜けていった。

やがて、夜は明ける。

いつかは朝が来る。


今日の朝は、本当に朝なのか、夢魔の続きなのか。


夜からの手紙に捕らわれたまま、目覚めることのできない私は、夜と朝の狭間に捕まったまま、身じろぎもできず、瞼の奥で夜に揺すぶられ続けている。


拙稿題名:Letter from incubus
総字数:455字

よろしくお願い申し上げます。


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