赤ではなく、青でもない。【シロクマ文芸部|お題「赤い傘」】参加記事
赤い傘、小学校の頃のそれは、女の子が持つと決まっていたところがある。決まっていた、というよりも、そういう先入観・固定概念があったように思う。
そうした考えに馴染めなくて、私は紫色の傘を使っていた。赤ではなく、青でもない色を。「どうして赤い傘を差さないの?」というクラスメートの質問には「私、紫が好きだから」と笑ってごまかしていた。「変なの」という声は聞こえないふりをしながら。
今は性別により使う道具の色を決めるなどという考えを持てば、ハラスメントを指摘される時代だ。子どもたちのランドセルもカラフルだったりシックだったり、個性を重視するものにシフトした。
今、子どもだったら良かった、とは思わない。今となっては赤い傘も愛らしく見えるのだから、私も現金なものだと自嘲する。
そんな私、ランドセルの記憶など遥か後方に置き去りにした女の手に今、子供用の赤い傘が閉じた形で握られている。
「使わなかったんだけど、何だか手放せなくて。今もこうして、ここにあるのよ。笑っちゃうでしょう?」
苦笑いしたまま告げた言葉に、雅也が首を振った。
「いや、笑わない。使わなくても大切にしときたいものって、あるじゃないか。思い出というか、郷愁というべきか。そんなものがさ。それに、覚えてるか?直美、それ使ったことがあるんだぜ。一度だけな」
「え?あったかな……で、どうして雅也にそれが分かるの?」
「高校の学園祭、その準備が終わって帰る時に、夕立が降ってきただろう?直美、『これ小道具だけど、良かったら入る?』って、入れてくれた。その赤い傘に」
そうだった、そんなことがあった。ステッキの代わりにしようと、新品同様の子ども用赤い傘を持ち込んでいたある日の放課後、帰り際に雨が降ってきた。夕立で、それまでは快晴だったので傘の用意をしていなかったのだ。やむを得ず使ったのが赤い傘。あの傘にも出番があったのだ。そのことが少し可笑しくて、そして嬉しかった。
今度、子ども用の傘を買うことがあるとしたら、何色がいいかな。
子どもに自分で決めさせたらいい。……ってか、それ、気が早くないか?
そんな他愛ない会話を交わしながら、私たちは今日も明日も、お互いの大人用の傘、どちらか一本に身を収めていく。傘の色は、スカイブルーだ。
拙稿題名:赤ではなく、青でもない。
総字数:932字
よろしくお願い申し上げます。
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