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【二次創作小説「NOIRより」Je t'aime,le pain quotidien.】

今回の拙稿はFanFiction、二次創作小説です。原作はこちらから👇

武器を扱うシーン、直接描写はないものの、闇の世界・スナイパー、依頼を受け人を銃で犯す少女の描写があります。二次創作という特殊分野と共に、それを許容できぬ場合はご閲覧をお控えくださいますよう、勝手ながらお願い申し上げます。区切り線より以下、本文です(総字数は4500字ほど。noteでは1000字を目安に綴っておりますが、私のストーリー物は元来その長さが主体です)

尚、拙作は原作及び他の創作物とは全くの関連のない、春永睦月文責による創作物であることを、ここに記します。




Walther P99。
製造国はドイツ・ポーランド・アメリカ合衆国。設計・製造、カール・ワルサー社。銃身長102mm、使用弾薬・9mmパラベラム弾、装弾数・16発。作動方式はダブルアクション、ティルトバレル式ショートリコイル。全長180mm、重量750g、銃口初速408m/s。

世界中の国の警察や軍で採用されている、ポピュラーな自動拳銃。取り立てて挙げるところなんて無い平凡なスナイパーである、あたし。ミレイユ・ブーケには、一番相応しい銃だって思う。

そして。Beretta M1934。
製造国はイタリア。設計・製造、ピエトロ・ベレッタ社。銃身長87mm、ライフリング・6条右回り。使用弾薬380ACP弾(9mmショート弾)、装弾数7+1発。作動方式・ストレートブローバック。全長149mm、重量660g、銃口初速240m/s、有効射程25m。

今どき、こんな古くさい自動拳銃、好きこのんで使う奴の気が知れないわ。とは言っても。あたしの相棒、夕叢霧香がその気の知れない奴の一人な訳だけど。小ぶりで取り回しがしやすい、スライド上の大きな排莢口で薬莢排出が容易。後は壊れにくいってのが長所よね、この銃の。
……似てるわね、どこか。あの子と。



 - Je t'aime,Au Le Pain Quotidie -



「ミレイユ?どうしたの?……何か問題でもあったの?」

ふと気付くと、椅子に座って銃の分解掃除をしているあたしを、両手にマグカップを持った霧香が覗き込んでいるのが見えた。

「ああ……別に何でもないわよ。面倒だな、って思ってただけ。それより、珈琲淹れてきてくれたんでしょ?冷めちゃうから、ほら」

怪訝そうな色を浮かべる瞳を見上げて、手を伸ばす。あたしの言葉に頷いて、霧香はカップを持った右手をあたしへと差し伸べた。そのカップを受け取ってから、あたしは言葉を繋ぐ。

「ありがと。……霧香。一度訊きたかったんだけど、あたし」

「……え?何を?」

「あんた、何でパーコレーターなんて使うのよ、珈琲淹れるのに。あんまり美味しくないじゃない、あれで淹れると」

「ああ……うん。ドリップの方が良いよね。美味しく入るし。でもね……。似合うんじゃないかなって思うの、私に」

「は?……相変わらず訳分かんないこと言うわよね、あんた。何よ、似合うって。珈琲淹れる道具に、似合うも何もないじゃない」

「……それとおんなじだよ、ミレイユ」

「それって……これの事よね?あんたの銃」

「うん。バレッタ。古くさいけど早いでしょう、反応。それだけに特化してる。……私と、おんなじ」

そう言って、霧香は薄い笑みを浮かべた。笑っているけれど、泣いているような。そんな儚い笑み。その顔を見つめながら、あたしはカップの中味を一口啜った。

「……美味しいわ。パーコレーターで淹れたにしては。だからさ、霧香。明日からペーパーフィルター使いなさいよ。勿体ないじゃない。あんた巧いんだから、お茶とか珈琲淹れるの」

「……うん」

「そうと決まれば、即実行ね。……行くわよ、霧香」

「え?行くって、何処に?」

「いつものマーケット。この際だから……。張り込んでジャージー種にすべきよね、ミルクは。どんな上質の豆も苦くしてくれるこのパーコレーターと決着付けるの。オ・レにするのよ、珈琲を」

後はバケットとベーコン。クレソンも良いわよね。とっておきのバケットサンドで留めを差してやるわ。……ああ。サウザードレッシング、切らしてたわね。あれは隣の店に行かないと、良いのが置いてなかったわ。

指を折りながら買い物の算段をするあたしを見て、霧香は小さな笑い声を零した。

「ミレイユってば……まるで決闘にでも行くみたいだよ」

少し下を向いて笑いを堪える霧香の横顔を見つめながら、あたしは言葉を返す。

「……まあ、当たらずとも遠からずってとこね」

「え……?どういう意味なの?それ」

「決着付けるって言ったでしょ、さっき。あんたのそういう『後ろ向き』な処に、決着付けに行くようなものってこと。勝つのはあたし。決まってるけど?勝負の前からね」

腰に手を当て、胸を張って告げる。
……偉そう、って言うか『いかにも』な感じだって分かってるけど。あえてよ、あえて。勢いってものが必要なんだから。特に霧香に対してはね。
そんなことを心の中で思いながら、目の前に立つ小柄な相棒の瞳を見つめた。

黒い髪が、少し俯いた顔を縁取って一度揺れた。そして、髪と同じ色の瞳があたしを見つめ返す。上げた顔、その向きと同じ様に、真っ直ぐに。

「……とっておきの淹れるね。挽回できるように。サンドはふたりで一緒に作るんだよね?」

霧香の唇から静かに、けれどきっぱりと言葉が告げられる。揺るがない視線そのままの、飾らない真っ直ぐな声で。それに釣られる様に、そして応える為に、あたしは目の前に立つ『唯一のパートナー』に手を伸ばした。

「料理は、あんただけに任す訳にはいかないわ。でも。お茶は勿論、あんたが淹れるのよ

そう決まっているじゃない、ずっと前から。

最後にそう告げたあたしの顔を見つめて、霧香は差し出した手を軽く握り返した。昼下がりの日差しのような、笑顔を浮かべながら。



     * * * 


「……ねえ、早く!遅いよ、ミレイユ」
「ちょ、ちょっと霧香……何急いでるのよ。ミルクは逃げたりしないじゃない」

珍しい事もあるものだ。
霧香が先頭を切って走っているなんて。あたしの前を。いつもと正反対ね、これじゃ。……まあ、悪くないけど。想定内ばかりじゃつまらないもの。

石畳に二つの足音が響く。いつかのように、通り過ぎていく人達が「何事だ」という顔をしてあたし達を一瞥してから視線を逸らしていく。……別に良いわよ、見たいのならいくらでも見れば良い。恥ずかしいことなんて、何もないんだから。

「はっ……。全く、あんたって……」
「え?何か言った?良く聞こえなかったんだけど」
「別に。……取り敢えず歩かない?走る必要なんてないでしょ?」
「……あ。そうだね。ごめんなさい、ミレイユ」
「謝らなくていいわよ。無駄に謝るのも禁止ね、今日からは」

-次に謝ったら本気で怒るわよ?霧香-

そう告げたあたしの言葉を受け止めて、

-ミレイユの本気、ちょっと恐いから気を付けるわ。もう言わない-

霧香が笑う。本当に嬉しそうな笑顔で、あたしを見つめ返す。

「……それでいいのよ。それが見たかったんだから、あたしは」
「……え?見たかった、って……?」
「あんたが本気で笑うとこ。今みたいにね」

あたしの言葉を聞いた霧香が一瞬動きを止めて。マーケットの入り口が、すぐ目の前に見えていた。


     *  *  * 


「……よし。完璧ね。一分の隙もないパーフェクトな仕事だわ。ランチはこうでないと駄目なのよ」

買い物から帰ってきて、予定通りのメニューを作り、向かい合ってのお昼。
バゲットサンドは新鮮なクレソンと上質のベーコン。付け合わせのサラダはリーフに、勿論お目当てのサウザードレッシング。わざわざ隣の店をはしごして買った逸品。いつもの店長がいなくて、臨時の店員のとって付けた笑顔がちょっと癪に障ったけれど。色目使って値引きさせたから、おあいこって処ね。

そして。ランチの脇役はボウルに入った霧香特製のオ・レ。それに手を伸ばしながら、淹れた本人が口を開いた。

「……ってことは、合格?私のオ・レも」

「ええ。及第点付けてあげるわよ。……ほら、何て言うんだったかしら。あんたの国、日本で。点数付けるんじゃなくて」

「え?……ああ、『花丸』のこと?」

「そう、それよ。花丸付けてあげるわ、大きいのをね」

そう言葉を返して、あたしは霧香の髪に手を伸ばした。黒髪を手のひらで一度撫でて、

「……あんたも可愛いのよね。よく見ると、さ」

その言葉と同時に、小柄な相棒の髪をぐしゃりとかき回した。

「わ……ちょっと、ミレイユ!……止めてよ。髪がぐちゃぐちゃになっちゃう」

少し上目遣いに、黒い瞳が恨めしげにあたしを見つめ返す。その瞳を笑いながら見つめ、あたしは言葉を告げた。
……黒髪を指で何度も梳きながら。

「……これで元通り。偶にはワイルドな髪型も似合うわよ、霧香」

そう告げた自分の言葉を確かめるように、髪を梳いていた手のひらを、頬に滑らせた。

「……え、と。どうしたの?ミレイユ。何かいつもと違う……」
「いいじゃない。今日は特別なランチタイムなんだから」

言葉を告げ、その自分の声を追い掛けて。自分の唇を、

「……親愛と誓いってとこね。これからも頼むわよ、霧香」

白い頬に軽く寄せて、すぐに離した。霧香の頬は少し赤らんでいた。
その紅を宿した顔が、無言のままであたしに近づき、一言を告げた。

「……じゃあ、私からもお返し。これからもよろしくね、ミレイユ」

薄く少し小さな唇が、あたしの右頬をさらって、すぐに離された。

「……赤くなる割にはやるじゃない、霧香。返されるとは思わなかったわよ」
「だって、パートナーだもの、私。ミレイユの隣のポジションは取るよ。
 誰にも譲らない、その場所だけは」

そう言葉を交わし合い、小さな笑い声を零し合って。やがて、ふたつの小さな笑い声はユニゾンとなって、アパルトマンの壁に当たり、響きを増していった。



      ※ ※ ※     



地下へと降りるコンクリートが剥き出しになった階段。一段下りる毎に、カツンという音が周囲に響いて消えていく。

「……マガジン忘れてるよ、ミレイユ」

「ああ……ありがと。やっぱり要るわよね、一個位は。何かね。今日は予備がなくてもいいか、って思ったのよ」

差し出されたスペアのマガジン(銃倉)を受け取りながら独り言の様な答えを返す。それに軽く頷いて、霧香は言葉を繋いだ。

「……今日は私も一個だけ。ねえ、ミレイユ……いつかは、来るのかな」
「……いつか?何がよ」
「うん。いつかこれ、持たなくて良い日が来るのかな」

地下の射撃練習場。その的に視線を向けたままで霧香が言葉を告げる。それに答えて、あたしも言葉を繋いだ。

「……そうね。願ってはいけないんでしょうけれど。正直、待ち遠しいわ、その日が」

そう告げた後、あたしは正面の的に照準を合わせ、ワルサーの引き金を引いた。それに続くように、バレッタの発砲音が乾いた音を立てる。二つの弾の音も又、階段を下りてきた時の足音と同じように、灰色に覆われた無機質な壁に反響して消えた。


階段の上から、午後の光が差し込んでくる。


「後30分したら、シチューの仕込みに入るわよ、霧香」
「あ。玉ねぎ。まだ切ってなかった。どうしよう」
「……あんたね。いい加減止めなさいよ、スキューバ用の眼鏡掛けて玉ねぎ切るの。横で見てると可笑しくなって、包丁使えなくなるじゃない」


光は届く。


あたしたちが、そこへ行こうとする気持ちを持ち続ける限り。



「……さて。行くわよ、霧香」
「うん。ミレイユ」


BGM: at dusk/ in peace/ love / lullaby (OSTより)


狙撃者であるミレイユと霧香(顔のイメージは違います)の背景として。ヘッダー画像共々、MicrosoftCopilotによるAIアート。転載禁止をご理解賜りたく。

原作関連盤等を備忘録的に(アフィリエイトではなく単純な🔗です)。

音楽担当の梶浦由記さんFanClub会員でもある私。OSTをオススメいたしたく(音楽でも楽しむことができます)。フィルムノアールの世界を。


拙作題名=Je t'aime,le pain quotidien.は「日々の糧を愛する」、という意味で付けた強引仏訳💦です。間違い等はお目こぼし賜りたく存じます。

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