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北と南、水をもたらすものたち【シロクマ文芸部|お題「北風と」】参加記事

小牧さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。


北風と座を交代する。それは同時に、彼の者との別れを意味していた。

わたしは南風と呼ばれるもの。神話では雨をもたらすものとも呼ばれ、天候の変わり目に吹く風とも言われる。わたしが南風はえと呼ばれるとき、わたしの風は梅雨の終わりを告げる。その次は本格的な暑さがやってくるのだ。

北風は北西から吹き、地に冷たい水をもたらす。水は山肌を滑り、やがては雪となって地を覆う。わたしは梅雨、北風は雪。同じ水でありながら、姿形は違うそれを思う。


“水がぬるむ日には、あなたの熱を思う。わたしとあなたは両極に存在するものだけれど、僅かに重なるものもあるのだとわたしは信じている”

凛とした空気が伝え来る声は銀の鈴のように美しい調べとなり、今は南で眠るわたしの大気を静かに揺らした。



ディスプレイに表示させていた電子図書のデータを閉じる。一瞬の沈黙が部屋を覆った後、どちらからともなく口を開いた。

「「綺麗だね。絵が脳裡に浮かんでくる気がする」」

専門家である雅也も、一読者である私も、文字を愛する以上に文字が描く世界を好み求めるのかもしれない。一編の寓話を読みながら、私たちは同じことを感じた。確かめなくともそれが分かる気がした、冬のはじめに。


拙稿題名:北と南、水をもたらすものたち
総字数:512字

よろしくお願い申し上げます。


ヘッダー画像共々、北風と南風の生まれるところをイメージして。MicrosoftCopilotによるAIアート。転載禁止をご理解賜りたく。

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<©2024春永睦月 この文章は著作権によって守られています。AI画像はフリー素材ではありません。無断使用及び転載等はお断りいたします〉
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春永睦月
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