![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/131724731/rectangle_large_type_2_6ec255e88a28abfd08ad6d79c5ab2965.png?width=1200)
Photo by
hananosu
閏年の前に。【シロクマ文芸部】参加記事。
#シロクマ文芸部 企画内容「閏年」から始まる 参ります。
閏年の前年に、あなたは手の届かない場所へと旅立った。あの日は、腹立たしいほどに雲1つない青空が、ひとりきりになった私の頭上に拡がっていた。北国の秋は、直ぐ後ろに冬が控えている。眩しいほどに差し込んでくる秋の日差しの中、雪虫が乱舞していた。
「ねえ、あなたは知っていたかしら?雪虫、雪蛍なんて雅な呼び方をしていたあなたは。あの虫はね、アブラムシの一種なんですって。風情も何もありゃしないわ。...…でもね。雅も風情もいらないのよ。人が心を通わすには、別のものが必要だったのに......」
何を呟こうと、既に全ては独り語り、問わず語りになってしまう。ひとりだけになった部屋の夜は、しんとした空気が耳鳴りを起こしそうなほど冷え切っていた。
如月、弥生。もうすぐ冬が終わろうとしている。今年の2月は閏年で、いつもの年よりも一日だけ多い。4年に一度だけ訪れる29日に、私は何をしようか。とりあえず、あのひとが好きだった中華おこわを炊くことは決定だ。
私は静かに立ち上がり、エコバックと財布を手に持った。そうだ、電子マネーも忘れてはいけない。チャージしたばかりなのに、現金買いしたら勿体ないものね。
閏年の2月29日は一週間後。去年と変わるところのない、変わり映えのない日々。ただひとつ、あなたが欠けたことを除いて。
--Fin--
拙稿題名:閏年の前に。
総字数:556字(原稿用紙一枚半弱)
よろしくお願い申し上げます。
#シロクマ文芸部
#閏年
#お題で書いてみた
#小牧幸助さん
#ほぼ毎日note
#みんなのフォトギャラリーから画像を挿入
いいなと思ったら応援しよう!
![春永睦月](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/159999839/profile_22ddea7c996c833d6adbf8fc670a4a43.jpg?width=600&crop=1:1,smart)