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夢を見ていた。【創作大賞2024:オールカテゴリ部門】応募作


私の背中には黒い羽が隠されている。

勿論、私は人間だから羽など生えてはいない。両翼を広げて空を舞うことなどできようもなく、そんな夢は夜眠る時にすら見たことはない。
けれど、夢を見ていた。
確かに、あのとき、私は—



見たこともない星の上に立っていた。踏みしめる足下には既に土はなく、赤錆びた砂が星を満たしていた。遙か彼方に青い星が浮かぶ。今は届かぬ場所。


忘れ去られた果てに、規則正しく並ぶ無機質なオブジェがある。何を讃えるのか、何かの証なのか。知る者はそこにはいない。




気が付けば、自分は列車に乗っていて、見知らぬ少女が向かいの席に座っている。「この列車の到着駅は、あなただけが知っている」と告げてくる。けれど、自分にはそれがどこなのか、分からないままだ。




列車が止まる。降り立った世界は氷付いているかのように、鋭い結晶で覆われている。ただ一本奥へと伸びる道が、自分をいざなっている。待つは希望か虚無か。



光と影と、黄金と漆黒の、鮮烈で先の見えぬ世界。


眼前に矢を。闇を切り開くため。弓を引き絞り、弓弦ゆづるが一本の矢を放った。



舞え、白鳥よ。夏を彩るアルビレオよ。願望と幻想、夢幻と現実が混沌とする、朝とも夕ともつかぬ時の狭間で、しばし宇宙そらに思いを馳せる。


そうして私の背中から、闇色の羽は消え失せていた。


夢は、いつかは醒めるものだ。醒めてなお見る夢があるとするのなら—




明日を探す旅に出よう。次の夢はその旅路にて。


総字数:609字

この曲を聴きながら書きました。


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春永睦月
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