夢魔【#モノカキングダム2023】参加作
#モノカキングダム2023 参加いたします。
こうなるとは思っていなかった。気付けば私は、その直中に放り出されていたのだ。
これは何だ。私の眼前にあるものは何なのだ。
あの日、私は帰路に着く、その直後だった。唐突に、見知らぬ車が一台、私の前に停まった。そして語りかけてきたのだ。
「迎えに来たわ。さあ、行きましょうか」
どこに行くというのだ。あなたは一体誰なのだ?
浮かんだ問いを、目の前の女に投げることは何故だかできなかった。行くべきなのだ、私は。その思いだけが強く心を捉えていた。
やがて車が停まる。車内から外へ出て、何かに急かされ導かれるままに歩を進める。薄暗い空間に一筋の光が差し込んだと思う間もなく、眼前の光景が異界へと変わっていた。
空間を飛んだのか?
分からない。分かるのは、私の横を無数の光が流れては消えていったことだけだ。
分からぬままに歩を進める。
戻る道などない。
先に進むしかない。
それだけが、今の私に分かること、出来ることだった。
辿り着いた雑多な部屋。スラム街の一室のようなそこで、若い女が立っていた。私を一瞥し、声を投げてくる。
「来たのね。逃げなかったこと、褒めてあげるわ。度胸だけはあるようね」
度胸か。そんなものはないけれど、開き直るしかないだろう。迷いながら、迷わすに先へと足を進める。やがて、見えてきたものは—
閑散としていて、人一人っ子いないスタジアム。さて、これから何をするべきなのか。コンクリートで出来た固い座席に腰を下ろし、眼前の光景を眺めていた。音がしない空間で、私の耳孔に風の音が響いて消えていった。静寂はやがて一つの声で破られる。聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「久し振りだな。もう少し早く会いたかったが、ギリギリで間に合ったというところか」
「あ、あなたは……一体、何が……」
それは大学時代にひとときお付き合いをし、その後に消息を絶っていた私の元恋人。その体が得体の知れない文様に覆われ、体が徐々に変貌している。何なの、これは。
俺は魂を売ったんだ。耐えられぬ日々から逃れるために。
三流小説でも描かないだろう突飛な台詞と光景。けれど確かにそれが目の前にある。現実なのか私の妄想なのか、最早私自身にも判断が付かなかった。
目の前が閃光で覆われる。視界が歪む。全ての形と色が混沌に呑まれていく。
現れたのは、混沌が産み出した地獄だった。
私たちは、こうなるために出会ったのだろうか。そんな問いは最早意味を持たない。地底から湧き上がるような声をあげて私に牙を剥くのはひとつの異形。私はそれに刃を向ける役目を担った者。それだけが今ある真実だった。
そして、全ては終わりを告げる。
崩れていく異形。ここに勝者も敗者もありはしない。何かが失われたということだけだ。私を呼ぶ声が聞こえる。その声に振り返りながら、私はそう思っていた。
気が付けば、私はひとり、荒野を歩いていた。裸足が捉えるのは荒れ果てた土漠。終わりなき道は、どこまでも続いている。私の道行き、その終わりがいつ訪れるのか、私自身にも分からない。真っ直ぐな地平線だけが、天と地を分かち拡がっていた。
【fin】
拙稿題名:夢魔
総字数:1201字(原稿用紙三枚強)
文中挿絵:BingAI生成画像
よろしくお願い申し上げます。
※テーマの「あったか」→熱い 逸脱を承知の上で💦綴りました<(_ _)>
(©2023 HarunagaMutsuki This picture and text are protected by copyright.)
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