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『今と昔のトマト味』シロクマ文芸部:お題「ハチミツは」参加記事

小牧さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。


ハチミツは独特の風味があり、まろやかな甘味が特徴だ。飲み物お菓子に加えることを真っ先に思いつくが、料理の甘味料としても用いることがある。

今夜は鶏もも肉のトマト煮を作ろうと思う。仕上げに少しのレモン汁と蜂蜜で味を整えて。今日はご飯と一緒にいただくつもりだけれど、ショートパスタやフランスパンでも合いそうなメニューだ。

鶏肉を皮目から香ばしくソテーし、ホールトマトを加えるレシピ。今風のそれは勿論間違いのない味だ。それに不満はないけれど、もう一度食べてみたくて、再現できないメニューがある。

あれは私が小学校5年生の頃だった。隣りに料理上手のお姉さんが住んでいて、お家にお邪魔して料理を教わったことがある。

骨付きの鶏肉をトマト味で煮込んだ料理。確かミックスベジタブルが入っていた。あの時、お姉さんは何と言って私に味付けを教えてくれただろうか。もらったはずのレシピメモは、時の流れの中でどこかに紛れてしまい、今では手元にない。


「初めて食べた洋風の味だったんだろう?」

私の言葉を聞いて、雅也がそう言った。

「そうね。鶏は唐揚げばかりだったから、洋風の煮物は初めてだったと思う。母に電話して聞いてみたのだけど『どこかの雑誌に載ってたね、確かトマトジュースで煮込むものだったと思うよ』とは言っていたのだけれど」

その言葉に答えを返す。

あの味を再現することは、形をなぞることだけなら簡単なのだろうと思う。けれど『思い出補正』には勝てそうもない。小さく笑いをこぼしながら、私は自分の台所へと向き直った。今日のメニューを仕上げるために。


「ワインは白でいいよな。チリ産のお求めやすい一本だけど」

雅也の言葉にうなずきながら。

                           (了)


拙稿題名:今と昔のトマト味
総字数:697字

よろしくお願い申し上げます。

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春永睦月
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