理由はいらない(試作小説)
この曲を発火点として。
走っているのか、歩いているのか、もしくは斃れてしまったのか。五体の感覚など既にない。はっきりしているのは、後ろには何もないということ。すなわち引いてしまえば、止まってしまえば、そこに待つのはDeadEndだけだ。
「あー、しんどすぎるだろ?これ」
「そんなん知らねぇ。ぶつくさ言うな。うるせぇぞ」
俺たちは、まだ息をしているらしい。話しているんだから、呼吸はしてるんだろう。もう分かんねぇ、俺にだって。
何したかったんだろうなぁ。
こんなところに追い込まれる前に、しておくことと言っておくことが、あったんじゃないかなぁ。分かんねぇや。後ろに置いてきちまったものは、俺にはもう見えねぇんだから。
息が続かず、足も動かない。
大の字に寝転ぶぬかるんだ地面、みっともない薄汚れた男二人の横を、野良猫がニャァとひと声鳴いて、通り過ぎていった。自分には関係ないという顔で。俺たちに一瞥もくれないで。
よろよろと立ち上がる。まるで歩き始めた幼な子のように。足を前に出す。まだ動く。まだ歩ける。
「生きるしかねぇな」
「同感だ。野垂れ死ぬまで生きてやるさ」
過去は置いてきた。未来なんぞ見えない。
今ここにある荒れた土、それだけがある。ならば、そこが俺たちが進む道だ。笑うなら笑え。罵る声がステージに上がる俺たちへの歓声だ。
地面に転がり半分ひしゃげたラジオから、聞き覚えのある曲が流れてきた。思わずそれを口ずさむ。歌、歌えんだぁな、俺。他人事のように思う。
踏み出す足、その速度を少しずつ上げていく。気付けば、歩けなかったはずの足は駆け出していた。生臭い空気を破り捨てるように走り続ける。逃避でもなんでもいい。絶望なんかとはオサラバだ。
「ヒャッホー!!」
思わず声を上げる。「おい、お前。本格的におかしくなっちまったかぁ?」と相棒が呆れるように声を掛けてくる。奴も走っているんだから同じ穴のムジナさ。
前方の道が大きくひび割れている。底なしの穴ぼこが開いている。ちょうどいい、度胸試しだ、俺たちの。
「「いーち、にぃ、さん!! いっくぜー!!跳べ!!!」」
俺たちは跳んだ。絶望と名付けられた未来へと。
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米津玄師の「曲からストーリー」二作目は以下からお読みいただけます。
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