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名も無き闘いは。【【白4企画】『桃太郎』】参加記事

白鉛筆さん、唐突💦な参加をご無礼申し上げます(企画ありがとうございます)貼付記事以下、参ります。


労働環境を守る為にもこれ以上の暴挙を許すわけにはいかない。俺は自分の無力を自覚し、それでも立ち上がる。

「会社経営において重役陣は必須だ。しかし君たちはどうかな?自分の胸に手を当てて、一度良く考えてみるといい」

今時流行らぬ銀縁眼鏡をかけ、そのフレームを片手で押し上げながら、部長はそう言って笑った。私には人事権があるんだよ。そう言いたげな薄笑いを浮かべながら。

あのニヤけ笑い、二度とできないようにしてやる。俺は心にそう誓う。その俺に語りかける声がした。

「桃川よ。お前がやらないなら俺だけでも闘うぞ。俺たちは部長が重役に昇進するための道具じゃないんだ」

まなざしも語る唇も尖って、まるで今にも眼前を突き壊すかのような眼光を讃えて、雉谷が俺を見つめた。

「お前だけに格好を付けさせてたまるか。孤闘に向かうつもりだったんだぞ、俺は」

雉谷に答えを返す。奴は俺の言葉を聞いて、黙って頷いた。


「はいはい、おふたりさんとも冷静に。まずは作戦会議といこうじゃないか。状況分析は済んでいるんだろう?俺も簡単にはまとめているぞ、部長のPower Harassmentについて」

絡み合う俺たちの視線を分けるように声がかかった。犬飼だ。


深夜どころか早朝に至るまでのサービス残業の恒常化、それを隠蔽する労働管理という名の愚行。何より、鬼山部長の意にそぐわないとされた社員への、無計画で突発的な過重業務。挙げていったら報告書は分厚い一冊と化すだろう。

どこにでもあるような話だ。そして、どこにでもあるように、窓際に甘んじたり、島流しにあったり、あるいは勤務先の鞍替えに避難場所を探したりはしない。

どこにでもいる社員3人の闘いが、これからはじまろうとしていた。


拙稿題名:名も無き闘いは。
総字数:710字

よろしくお願い申し上げます。




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春永睦月
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。

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