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【論文まとめ】遊戯療法における治療メカニズムについて
弘中正美先生の論文をまとめます
遊戯療法とは
「遊び」を媒介としておこなわれる子どもに対しての心理療法の一種
遊戯療法のいろんな考え方
遊戯療法と言ってもさまざまな考えに基づいて進められている
代表的な考え方として以下の4つがある
精神分析的な考え方
ユングの考え方
アクスラインの考え方
行動療法の考え方
1精神分析的な考え方とは
精神分析では主に、子どもとセラピストの間で生じる転移に焦点を当てる。
その特徴として、他の学派よりも言語化による解釈に力を入れている(※特にクライン)
2ユングの考え方
ユングの学派は、言語化による解釈よりも、より象徴的なイメージを重要視する。
セラピストは子どものイメージ表現を促進する立場にある
3アクスラインの考え方
クライエント中心療法的考え方と言ってもいいだろう。
子どもとセラピストの間の信頼された関係性を特に大切にしている(ラポールの形成)
セラピストは子どもの主体性を支える立場にある
4行動療法の考え方
行動療法では、主に学習・訓練的な考え方であり
子どもの回復のためのプログラムを指導する存在としてセラピストがある
※古来の遊戯療法は非構造的なものであり、子どもの自由意志を尊重するものと位置付けられている為、この行動療法的な子どもの心理療法は、いわゆるプレイセラピーとは切り離して考えるのが妥当
遊びがもたらす治療的意味
遊びは子どもの心理的成長を促すものであり、癒しの効果があるとされている。
そんな遊びであるが、大きく2つの機能があるとされている
1 子どもが自分の内的世界を表現する機能
2子どもが遊びの中で何かを体験する機能
1表現の機能
表現は子どもが自分の中に生じたものを外に向けて表す手段ということであり、その多くはセラピストを媒介にして生じる
例えば、子どもが何かの遊びを繰り返しているときに、これは子どもが内的な体験を表現しているといえる。子どもの感じているものをセラピストが解釈して言葉にすることでそれがより言語という形で鮮明になる。
つまり表現の機能は、外に向けて生じる対他的な機能であるといえる
※精神分析的な考え方はこの表現の機能を重視する傾向がある
2体験する機能
子どもは遊ぶことそのものによって何かをイキイキと体験し、それによって自己成長すると考えられている。
遊ぶこと自体が直接的に子どもの治癒を促すといえる
つまり体験の機能は、子どもの内側で生じる対自的な機能であるといえる
※ユングやアクスラインはこの体験の機能を重視する傾向がある
しかし、アクスラインはそれに加えて「表現」も必要であると考えており、中立の立場にあるといえる
「体験」と「表現」の関係性
対極的でもあり、相補的でもある
今まで遊びのもつ2つの機能を説明したが、どちらを重視するかによってセラピストの働きかけが異なってくる
体験を重視する方法(体験化)をとるとセラピストは「遊びそのもののもつ治癒機能を発揮させる条件を作る役割」となる
対して、
表現を重視する方法(言語化)をとると、セラピストは「遊びという間接的手段を用いながら言語化などの介入によって解釈を 行い、子どもの表現の持つ意味を引き出す役割」となる
この2つは遊びを直接的な手段として見ているか間接的な手段として見ているかという意味では対極的なものと捉えられる
しかし本来この2つは不可分な2要素であり、
どちらかではこれ以上進まないときにもう一方を使っていくといった相補的な関係性でもある
セラピストは両者を場面に応じて適切に使い分けていくことが求められてくる
まずは体験ありきの表現
セラピストが子どもの遊びを体験化するか言語化するかの分岐点よりも前に、まずそもそも子どもの体験が十分に満たされることが重要であるとされている
セラピストはそのために子どもに対して共感的理解を示しながら、子どもが内的な体験を十分に行えるように保障していくことになる
内的な体験を十分に行っていくと、言葉では言い表せないようなイメージといった前概念的レベルの洞察が子どもの中で生じる
💡前概念レベルの洞察って?
ジェンドリンの体験過程で説明ができる。
ジェンドリンは、カウンセリングの過程において言語化する前に
より本質的な前概念レベルの洞察が生じると考えた。ただしこれはクライエントの内側で生じるものであるため、その体験を何らかの象徴(例えば言葉)と結びつけることによってより効果的な影響が引き起こされるとした
そして、言語化を行わずともこの前概念的レベルの洞察が生じるだけでも十分に子どもの変容は生じると考えられている
つまりこんな感じの関係性である
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まとめ
遊びは体験と表現が一体となった心的活動
体験化は子どもの遊びそのものを保障し深める
言語化は遊びの中に含まれるメッセージ(表現)を読み取って能動的に応答する
言語化するには遊びの体験が生まれてないとできない。逆に体験化もその遊びの表す表現を理解した上ででないとできない
セラピストは子どもの遊びを促進する中で、体験から生まれる表現を理解し、必要に応じた体験化と言語化をダイナミックに移動しながら行っていくことが望ましい