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バンクーバーの冬の思い出。
寒くなるとバンクーバーで過ごした冬を思い出す。
バンクーバーの最高な季節と言えば、誰がなんと言おうと夏だ。日差しはとても強いけれど、カラッとしている。日本のジメジメとした湿気たっぷりの夏とは違う。日本よりも緯度が高いので、夜は21時頃まで明るくて、なんだか得した気分になる。緑も豊かで、生命がキラキラしているのを感じられるのがバンクーバーの夏なのだ。
だけど、私が決まって思い出すのは冬のほう。バンクーバーの冬は「レインクーバー」なんて呼ばれるくらい雨が多くてそこそこ寒い。年中曇り空なので、気分が上がりにくい。あまりにも雨が多いから、折りたたみ傘を買ったけど、カナダで売られていた傘はものすごくちゃっちくて(私が安物ばかり買ったからかもしれないけど)買っては壊れて、を繰り返して結局3回買い直した。最後に買った傘は、日本に帰るときにともだちにあげた。カナダの人はあんまり傘をささない。だから傘は軽んじられていたのかもしれない。日本製のものって質がよいのね、とあらためて感じることができたエピソード。
雨が降って、時には雪になって、薄暗くて、そこそこ寒い。現地の人からしたら、冬は全然いいもんじゃないんだと思う。でも私とって、なにもかもが刹那的なだった異国での生活は、全てが特別だったように錯覚してしまう。
雨に濡れたガスタウンの景色は、ため息が出るくらい綺麗だった。ガスタウンにあるコーヒーショップで友人が働いていて、時々コーヒーを飲みに行った。どこの国の人か忘れちゃったけど、そのカフェでランゲージエクスチェンジした。その人の顔も名前ももう忘れてしまったけど、オフホワイトだったかベージュだったか、そんな色のマフラーを巻いていたっけな。
当時、日本ではまだ全然盛り上がってなかったハロウィンも、あちらでは一大イベントだった。10月になると仮装衣装を売るポップアップのお店ができた。そこで友人とあれもこれも試着して、当日の仮装をどれにするか吟味したことを思い出す。後にも先にもあんなに仮装の衣装を着たのはあの時だけだった。当日はたくさんの仮装をした人たちに紛れてグランビルstを歩いたり、ナイトクラブに行ってみたり。バスを乗り継いで、ローカルなパレードを見に行ったりもしたなぁ。カナダの10月31日は、結構な寒さだったけど、みんな仮装のために薄着だった。そして当たり前のように、あの日も雨が降っていて、とても寒かったんだよなぁ。
スノーボードが大好きな私はグラウスマウンテンのシーズンパスを買って雪山に行くことを楽しんだ。朝、早起きして自宅からウェアを着てブーツを履いて、スノーボードを裸のまま担いで、路線バスに乗って滑りに行くの。街中をウェアで板を担いで歩いていると「今日の雪はどうだった〜?」って(もちろん英語で)知らないおじさんとかに話しかけられる。そんなちょっとしたことが、新鮮で楽しくて今でも鮮明に覚えている。
結局は、寒い時期を長く過ごしたから、寒くなると思い出すことが多いんだと思う。特別な思い出があるわけじゃないのだ。
たった10ヶ月のバンクーバーでの暮らし。10年以上経った今でも、まるで昨日のことのように思い出せる。私の中に、じんわりと深く浸透して、長い年月をかけてしっかりと根付いている。そんな10ヶ月を過ごせたこと。それだけで、私の異国での暮らしは価値のあるものだったと、そう思っている。