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ビジョントレーニングは取り入れるべき?~トレーニングを組み立てる時の基準~
今回は、トレーニングを選択する時に何を基準に選ぶのかについて、ビジョントレーニングの例をもとに考えていきたいと思います。
僕がトレーニングを組み立てる上で大切にしているのは効率的、効果的なプログラムになっているかです。その理由として、僕らがトレーニング指導をする時間は限られています。
与えられた時間で最大限に効果を出すには、そのトレーニングが必要なのか、もっといい方法はないのか考える習慣は大切です。
最近スポーツ選手が、ビジョントレーニングを行っているのをよくみる気がします。
前回、ボールキャッチトレーニングの時に「日頃から取り組んでるトレーニング」の話をしました。今日はそれを紹介します。
— 小林祐希 / Yuki Kobayashi (@iamyuuki4424) October 31, 2019
今俺が注目してるトレーニングは「眼筋トレーニング」です。 pic.twitter.com/zkTWykEox0
NBAチームや選手も自主練で取り入れてるライトを使った、ビジョントレーニングです👏#千葉ジェッツふなばし#Bリーグ#ビジョントレーニング#ジェッツコンディショニング#フィットライトトレーナー#fitLightTrainer pic.twitter.com/UCabjUhTk7
— 石井 講祐 (@k_ishii27) August 2, 2017
ラークス寮食堂にはビジョントレーニング機を設置しております😄
— 熊本ゴールデンラークス【広報部ツイッター】 (@goldenlarks1) November 25, 2019
動体視力を鍛えてワンランク上のパフォーマンスを‼️
選手たちは夕食後の日課となり「スポーツの目👁」をつくっています‼️
動画📸は猪口雄大選手(背番号30)✨
集中してます👍 pic.twitter.com/YgpTqtuAQ3
ちょっと探しただけでもいっぱい見つかました。やはり流行りですね。笑
ビジョントレーニングは、プロがやっているからなんか良さそう!これやったらサッカーが上手くなれそう!みたいに思ってしまいがちです。そして何より面白そうです。
こういうのを映えるトレーニングとでもいうのでしょうか笑
イメージでいうと、ビジョントレーニングをすると視野が広がって、相手や味方がどこにいるか分かるようになるとか、動体視力がよくなってボールを捉えられるようになって、ボレーやヘディングが上手くなるような気がしますよね。
実際にトレーニングのプログラムを組むときに、ビジョントレーニングを選択するかは、以下の手順を使って考えていきます。
効果はあるのか➡️どれくらいの時間がかかるのか➡️似たようなトレーニングをしていないか➡️チームや選手の状況に適しているのか、のような順番で考えていきます。
例えば有酸素運動(素走り)をトレーニングの中に組み込むかを考え時には
有酸素運動は有酸素能力の向上には効果がある➡️週1回での効果は微妙?➡️サッカー自体も有酸素運動➡️有酸素能力より無酸素能力の方が足りていない➡️じゃあ有酸素運動は取り入れるのをやめよう
みたいな感じで考えます。
似たような刺激がサッカーの練習中にあるのならやる必要はないと個人的には考えています。
わざわざ、トレーニングとしてサッカーの練習以外に時間を使うのなら、サッカーの練習では入れることの出来ない刺激を入れることが効率的、効果的なトレーニングに繋がると思います。
ビジョントレーニング
まずは、ビジョントレーニングの効果から考えていきます。おそらくこの作業がトレーニングを組み立てる上で、最も大切な工程になっていくと思います。
まずビジョントレーニングとはどういうものなのか調べると
目の見るチカラ「視覚機能」を高めるためのトレーニングです。眼球を動かす筋肉、眼筋を鍛えることで両目を使って目標物を正確に捉えたり、目からの情報を脳で処理して体を動かす運動機能を向上させる効果があります。アスリート、スポーツ選手のパフォーマンス向上、発達期の子供の視覚機能の向上、発達障害の子どもの学力・運動能力の向上、ディスクレシア(識字障碍)の治療などに有効である
のようになっていて、スポーツ選手がビジョントレーニングを行うのは、眼球運動を鍛えることで眼球機能を向上させ、スポーツパフォーマンスを高める事が目的のようです。
そしてなんとなく概要がわかったところで効果の有無を調べるために文献を検索します。
今回はこの論文をもとにビジョントレーニングの効果を考えていきたいと思います。
結論から言うと
単純な視力と競技力には関係はあるが、一般人とアスリートの眼球機能はほとんど変わらない
つまりビジョントレーニングは競技力向上には効果がないようです。
-視力と競技力
まずは視力と競技の関係を見てみたいと思います。
実験対象は普段からコンタクトを使用している大学生30人
視力を両眼視力で2.0、1.2、0.7、0.5、0.3、0.1なるようにコンタクトレンズで設定し各競技それぞれ決められたプレーを行いました。
結果は視力1.2でのプレーを100%とすると0.7で90%、0.5で80%、0.3で70%のようになり、視力が低下するにしたがって競技力が低下していきました。また競技レベル別に視力を測定してみると視力の高い方が競技力が高い事がわかっています。
これは何故かというと、人間は視覚情報をもとに身体反応(
打つ、蹴る、投げるなど)を行っています。
つまり視力が悪いと質の低い視覚情報が脳に送られ、それをもとに身体反応が行われるので身体反応の質が下がるようです。
このことから視力の低い選手は競技能力を十分発揮していない可能性があります。
なので自分が担当している選手の視力が悪いようでしたらすぐにでも視力矯正をオススメします。視力が良くなることで質の高い視覚情報が脳に送られ、質の高い身体反応が行われます。
それなら、動体視力が良かったら視覚情報の質も上がるんじゃない?と思って動体視力と競技力の関係を見てみましが、競技レベルで違いがない事が分かりました。
つまり競技レベルは視力と関係があるが動体視力とは関係がないようです。質の高い視覚情報を脳に届けるには動体視力が関係ないという事です。
そもそもビジョントレーニングは、眼の機能の未発達の子供たちや、病気で眼の筋肉が動かなくなった人のリハビリテーションを目的に開発されたもので、アスリートのような、眼の機能が高い人対してやっても眼の機能の向上は、ほとんど見られないようです。
一般的にはスポーツ選手は動体視力がいいと思われていますが実際には差がないそうです。じゃあスポーツ選手は視力以外に何が優れているのでしょうか
-視覚研究
スポーツ選手の視力研究の考え方を見てみると、視覚の研究は2つの考え方で成り立っているようです。
1つが脳の機能を中心に考えるアプローチ
もう1つが目の機能から考えるアプローチです。
それぞれの研究の特徴を見てみるとこのようになっています。
脳の機能を中心に研究を行っている人からすると、ビジョントレーニングを行っても競技力は向上しないそうです。
その理由としては、人間の情報は視覚から8割取り入れているがそこの質は視力によってしか向上せず眼球運動や視野は、アスリートの場合ほとんど向上しないので情報の質は上がらない、
それよりも競技力に関係があるのは、入ってきた情報をどのように処理し、実行するのかにかかっているからだ。
つまりどれだけビジョントレーニングを行っても、視野の広がりや、動体視力の向上はほとんどなく、入ってくる情報の量は向上せず、しかも競技力に直結するのは認知能力や脳の処理能力そして実行能力が関わってくるのです。
そしてアスリートが一般人よりも競技能力が高いのは選手の眼の能力に起因するのではなく、選手が「専門的知覚」というプレイをしている競技に特化した競技情報を認識して処理する能力を持っているからだそうです。
そして、脳機能を中心に考えるアプローチでは、選手の競技能力は脳機能、身体能力、競技技能が反映されたもので競技能力は実際の競技練習で向上するという考え方をしています。
つまりスポーツビジョントレーニングで視覚機能が高まっても実際の競技能力には反映されていないのです。その要因として、スポーツビジョントレーニングの眼の使い方が実際の競技での使い方と違うからです。この事は実際の練習と比較して考えると、分かりやすいと思います。
サッカーの場面では敵、味方、ボールなどの絶えず流動的に動くものを視認し、その状況に基づいて運動を実行します。
そしてサッカーでは、1方向だけを見ていれば良いのではなく、360度全てを見なければいけません。そのことから考えるといくらビジョントレーニングで視野が広がろうが、動体視力が向上しても、ビジョントレーニングは視点が定められた状態で行われるので実際の競技での視認を再現できているとは思えません。
ビジョントレーニングのようにスポーツの要素を切り取ってトレーニングをする際には、切り取ってトレーニングする事に意味があるのか考えないといけません。それを怠ると普通に競技練習した方がいいじゃんという状況に陥ってしまいます。
そしてこの文献の中でも、脳機能を中心に考えるアプローチでは実際の競技をする事が一番のビジョントレーニングだと主張しています。
認知機能
視覚機能が大切なのではなく、どう認知するかが大切なのだと言う事はシャビのミラクルボディーの動画をみると分かりやすい気がします
iPadのフォルダ整理してたら何故か、シャビのミラクルボディー出てきた。
— 宮脇 晴己 Haruki Miyawaki (@fsc_hm0421) January 19, 2020
これみた時衝撃的だったな
圧倒的な認知
自分がやったら3人も正確な位置把握出来てないと思う。笑 pic.twitter.com/YhnJJCFjc0
※下のリンクにもう少し長い動画をはっておきます。
この動画を見てみると視野とか動体視力とかではなく、どれだけ周りの情報を認知し集めた情報を脳でいかに処理するかが重要なんだなってことがよく分かります。結局は最近久保選手も話していた
後何年かしないとこの思考は
— Takumi Yoshioka (@taqmix_fc) January 6, 2020
スタンダードにならないかなぁ pic.twitter.com/pcInms2cqd
認知の部分が視覚機能を高めるより大切なのかなって思います。
まとめると視覚情報の質を向上させるには単純な視力の高さが大切になり、その視覚情報をどのように処理するかは脳の機能の問題です。
なので視野を広げたり、動体視力を上げたりするよりも、見た映像の何に注意を払うか、何を認知するのかが大切になります。そして認知した情報をもとにプレーを選択する事が大切になります。
ビジョントレーニングのように、光になどに反応してボタンを押すようなトレーニングを取り入れても競技能力は向上しません。普通にサッカーの中で認知を鍛えるようなトレーニングをしましょう。特別なことなんていらないのです。
こんな感じで考えていけばビジョントレーニングが競技力の向上に関係がない事は明らかです。
それなのにプロがやっているからとか、なんか良さそうだからとトレーニングを取り入れているのは時間の無駄です。というより効果的なトレーニングを提供しているとは言えません。
このようにあるトレーニングを、自分のプログラムに含めるのかを考えるときには、まずは効果があるのかを考えます。
そして効果があるらしい事が分かればどのくらいの期間トレーニングをすれば効果が出るのか、自分のチームやクライアントにこのトレーニングは必要なのかそして適しているのか、などを考えるプロセスをへてプログラムに加えます。
この一連のプロセスからビジョントレーニングをプログラムに含める事はしません。
自分のトレーニングプログラムに含めないだけで、選手が自主練の一環として取り入れていたりしても特に口出しはするつもりはありませんが、もっと他にやるべき事はあると言う情報発信は続けていきたいです。
何故なら選手が競技に捧げられる時間は限られていて、その限られた時間で最大限に競技能力を伸ばすにはより効果的な方法は存在するからです。
お金を頂いて与えられた練習時間の中で効果のない事や、効率の悪いものを提供するのは選手やチームに対して失礼です。
そしてプロがやっているから、なんか良さそうだからって理由だけでそのトレーニングを取り入れて損をするのは選手やチームです。指導者の勉強不足で損をするのは選手やチームなんだということを忘れずに常にインプット、アウトプットを繰り返していく事が大切です。
まとめ
トレーニングをプログラムに含めるのか含めないのか考える上の基準について話していきました。
✅効率的、効果的なのか
✅より良い方法はないのか
✅なんとなくの理由で選んでいないか
この3点を常に頭に入れながら、トレーニングプログラムは組んでいきたいです。
それを怠って損をするのは選手やチームです。損をさせないためにも僕らは常に学び続けなければなりません。
「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」ロジェ・ルメール
編集後記
久しぶりにnoteを書きました。相変わらずまとまりのない文章になってしまって自己嫌悪に陥りそうです。笑 ただ最初に書いたnoteよりはまとまりのある文章を書けているはずだと自分を励ましこれからも書き続けたいと思います。
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![Miyawaki/フィジカルコーチ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15775720/profile_4796134b5c06dd322fa99c3c3bd11f91.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)