「その後」のことを書きたい
自分の気が急いている時には周囲がのんびりして見えるもので、今朝はその意識があったので、「ちょっと待て、珈琲でも淹れよう」と自分に働きかける余裕ができた。
いまつくっている本が珈琲焙煎舎の本で、家にあるのがその珈琲焙煎舎の豆なのだから、これ以上にふさわしい組み合わせはない。
珈琲の本、とは言えないかもしれない。商品(珈琲)の宣伝は(ほぼ)ゼロで、書かれていることは珈琲焙煎舎の10年史というか、ある個人店の挑戦の記録というか、「続ける」ということに迫っている本、とも言いたい。あと、未来の「夢」を語ることも忘れなかった。
焙煎舎がオープンしてから10年たつということは、ぼくが焙煎舎と出会って10年たつということであり、同時に、ことのはさん(妻)と初めて会ってから10年たつということにもなる。
当時、住んでいた所のお隣さんになった焙煎舎を初訪問したのはオープン2日目、2011年11月12日(土曜日だった)の午後だったが、ことのはさんが横浜のブラフ18番館で朗読コンサートをやるというので聴きに行ったのは翌13日だった。共演のピアニストと話して、彼女とも今日が初対面なんですと言ったら妙に驚いていた(そうは見えなかったらしい)。
この10年の間にも、たくさんの出会いと別れがあり、楽しいことも、悲しいことも、苦しいこともいろいろあったが、珈琲焙煎舎との付き合いは何とも言えずまったりしたものになった。
すごく盛り上がることもないが、逆にすごく落ちることもないというか…
(何事もそうですね、流行るものは必ず廃る、流行らないものは廃りもしない…)
そんな関係を保ち続けられることは、そう多くないと感じている。
出会った時の感動は、再び味わうことが出来ない。
"Pet Sounds"(The Beach Boysが1966年にリリースしたレコード)をまだ聴いたことがない人がいたら、これから「初めて聴く」ことができる、羨ましいという話をしたことがある。
しかしいまぼくが話したり、書いたりしたいことは、「その後」のことだ。何か大きな出会いがあったとして、その衝撃が収まって、その後をどんなふうに生きたかということ。
今回の『珈琲焙煎舎の本』もそんなふうなことを考えながらつくった。
(つづく)
その『珈琲焙煎舎の本』は明日、入稿の予定なので、それを終えてから、今週末には詳細をお知らせしようと思っています。ぜひ読んでみてくださいね。