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なぜ書かないか
あくまでも心を開いていること。そして、一人でいることがより客観的であり得るような在り方を見出すことだ。伝達を留保されることによって、広い世界が展開するような、そういう道にいつもいるようにすべきだ。(小川国夫「なぜ書くかなぜ書かないか」より)
あけましておめでとうございます。2025年になりました。
ここ(note )ではご無沙汰しています。ふり返って見ると、昨年はここ(note)では数回しか書いていませんでした。夏に大きな再出発となった『アフリカ』最新号を出したことすら、書いていませんでしたが、毎月1日更新の「水牛のように」で「『アフリカ』を続けて」を書くことが自分にとって大きくなっていて、それ以上の発信をする余裕がありませんでした。
あと、「道草の家のWSマガジン」も、毎月10日更新で、続けています。
個人的には2024年は呪われたような年だったと言いたい感じで、10月頃には「もう今年はいいや、降参! 次に行きたい」という気分でいました。2025年がそれ以上に悪い年になるとしたら、よほどのことなので、でもたぶんそんなことはないでしょう。そう信じたいというか、祈るような気持ちで過ごしています。
そんな中、「水牛のように」に書いていたことは、私にとって微かな(と言いつつ、密かに大きな)救いになっていて、「『アフリカ』を続けて」を書いていたことで、妙な話かもしれないけれど、この数年を乗り越え、続けることが出来たという気もします。
それを読んだ人からの反応も、とても良くて、そりゃあ書いている自分が他人事のように面白がっている部分すらあるので、面白いよね? という話になり、このへんで連載のはじめからある時点までを1冊にまとめようということになり、昨年の春には準備してありました。
でも、私にとっては自分の書いたものより、『アフリカ』という雑誌の方が大事なんです。なので、それはいったん置いて、夏に『アフリカ』vol.36を出しました。表紙の切り絵を制作していた向谷陽子さんが2023年の夏に亡くなって、彼女を追悼する号(vol.35)を出した次の号で、大きな、大きな1冊になりました。
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そこで後回しにされた本は「『アフリカ』を続けて vol.1」と呼ばれていましたが、年末になって、いよいよ本にしようか、という流れになったんです。
詳しい話は、「水牛のように」2025年1月号に、書きました。「『アフリカ』を続けて(34)」です。
最終的に、『夢の中で目を覚まして──『アフリカ』を続けて①』というタイトルになりました。今月中旬に、例によってひっそりと自前のウェブショップ他で発売予定。
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というわけで、その本を、ごくごく少部数の小さな本ですが、いつものようにじわ〜っと売るために、ここ(note)で久しぶりに「道草のススメ」をやろうかな。
「道草のススメ」、もともとは2010年に別の場所で始め、毎日更新していたもので、ここでは2019年に元日から大晦日まで連日書いたりもしました。
いまはそれを丸々1年続けるような余力がないと思いますけど、新刊のプロモーション、ということにかこつけて、数ヶ月くらいならやってもいいかな、という気持ちになりました。
毎日、あれこれ、書いてみようと思います。長々と書く日もあれば、短く、下手したら1文書いておしまいの日もあるかもしれませんけど、とにかく何か書くことが大事なことなので、それを再び期間限定で外に向けて発してみよう。
苦しい状況においては、無理のない範囲で自分自身に何か仕掛けるのがよくて、このくらいは私には楽なことなんです。なので、読む方もどうぞお気軽に。
新刊を買って読まれる方へも、買わない方へも、全文無料で公開します。そのかわり毎日出たとこ勝負、即興演奏みたいものですけれど。
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冒頭に引いた小川国夫の文章は、『一房の葡萄』から。小説を書く作家の場合、どうしても小説作品が評価されるかどうか、というふうになりますけど、随筆、文学・芸術論などのエッセイもいいんです。小説がとっつきにくいと感じる読者は、まずこういった本から読めばいいんじゃないかとすら私は思っているのですが。
「なぜ書くかなぜ書かないか」の前には、「建物の石」という文章もあって、最後の方を引いてみます。
声を大にする必要を、私は感じなかった。静かな声こそ細大もらさずに聞いてもらえるのであって、声高く語りかけるのは不安の証拠でもあるし、大事な要素を犠牲にしてしまうと思えた。セザンヌが曇りの日には物の形が明確に見えるといったのは、意味あることに感じられた。
たとえ物凄いものを見たとしても、物凄い声で語る必要はない。正確に語ることが必要なのだ。日本語の豊かさは、その中から一つの言葉を選ぶためのものだ。
というわけで、今年もよろしく! お願いします。
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(つづく)
ウェブマガジン「水牛」の毎月1日更新のコンテンツ「水牛のように」で、下窪俊哉が2021年7月から連載している「『アフリカ』を続けて」の(1)から(33)までをまとめた ① が1冊になりました! 1月中旬発売予定、ご予約受付中です。#アフリカキカク https://t.co/xYANSHeIMf pic.twitter.com/AwIs5wWIhy
— 道草の家 a.k.a. アフリカキカク (@michikusanoie) January 1, 2025