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感情の豊かな(絵)の傍で
先週のつづきで、珈琲焙煎舎から八王子に移動して、向かった先は、coffee ritmosで行われていた大曽根しおりさんの個展。大曽根さんを知ったのは、じつは、この、noteだ(ったと記憶している)。
ことばも少しは書かれるが、多くの場合、ほとんど説明もなく絵がサッと置かれている。まずは、その潔さが、自分のパソコンやスマホの中で日常的に出合うものとして、とてもよかった。
毎回、毎回、じーっと見入って、見とれているというわけではない。SNSを眺める一環なので、サッと見る。多くの場合、ああ、描いていらっしゃるな、と確認して、通り過ぎる。
しかしそれをくり返しているうちに、絵が現れるだけで、そのひとと会ったような気がしてくる。
たまに、絵ではなくて写真が載っていることもある。不思議なことに、写真も、そのひとの絵のようなのである。いや、そんなものかもしれない。絵でも写真でも、そのひとの目を通して見ているんだろうから。
会場へ行ってみると、壁にかけられている以外にも、たくさんのスケッチを自由に手にとって見られるようになっていた。手元に持ってきて、ひとつひとつ、見ていった。
展示2日目、無事終了しました。本日は、遠方より大勢のお客様がご来店くださいました。どうもありがとうございます!
— ritomarus ( COFFEE ritmos ) (@Ritomarus) October 25, 2020
終盤は、クロッキー会となりました^^こうして訪れた皆様に絵を楽しんで頂くのは、理想的な光景です。 pic.twitter.com/AJjv1zcom6
聞くと、春くらい(?)に予定されていたのが、新型ウイルスの影響で延びて、10月になったのだという。ぼくには、この春以降、noteにアップされる絵の調子が、ぐーっと変わってきているような感じを受けていて、興味深く思っていたので、それは、延期されなければ(このタイミングでは)見られなかったかもしれない。
何というか、とても、感情の豊かな絵なのだ。というのは、見ているこちらの問題もあるのかもしれないが、大曽根しおりさんの絵には、喜怒哀楽の、どれかというわけではなくて、どれもがある。作為的に、何かが強調されているというのではない。とても自然に生まれている、ということかもしれない。
右は、今回の個展の、案内のためにつくられたハガキだが、この鹿の佇まいも印象的だ。この絵の話を聞いていたら、「自画像と言った方もいました」と言われた。鹿のスケッチ・ブックを、会場では見せてもらった。鹿のスケッチの中に現れた、一本の木の絵に、見入った。
そんなふうに木と対面することが、自分にもある、と思った。道草の家で、いつも傍にいてくれる木のことも思った。
上の写真の左側の絵は、ポストカード・サイズの原画で、1枚だけ買わせてもらった。いろいろ見せてもらった中で、この絵だけは、よくわからなかった。ぼくはよくわからないものに惹かれるひとなのかもしれない。買わせてもらった後で、この絵の話を聞かせてもらえませんか? と言うと、「何か、哀しいことでもあったんですかね」とおっしゃる。それで、ぼくにはじゅうぶんだった。
その日から、10日ほどの間、ぼくは『アフリカ』の仕上げにちょっと苦戦していたが、いつもその絵を傍に置いて、過ごした。
その間、愛知県にお住まいの『アフリカ』の愛読者の方から絵葉書をいただいて、それは三岸節子さんの〈自画像〉だが、その絵も隣に置いておいた。
『アフリカ』vol.31(2020年11月号)は、先週、無事に入稿して、もうすぐできます。
今回は、前号に続いて、また少し厚くなった。もう少し、ゆったり、出し惜しみしながら(?)やればいいのだろうが、今回はどうしてだろうか、コロナ禍のせいかもしれない、多少無理しても、ここに来ているものは、いま、全て出しておきたい、と強く思った。
その熱気、読むひとにも届けられるだろうと思っています。どうかご期待ください。
先週はその後、毎月恒例になってきたゲストハウス彩(鎌倉)での文章教室もあった。初参加の方も交えて、ゆったり読み、ゆったり語り、おおいに笑った。心から笑うことにも、どこか救われている。終わってから、オーナーの武士殿と一緒に語る時間も、毎回の楽しみだ。話していると、新しいアイデアが続々と湧き出してきた。
ちょっと疲れているせいか、いろんなことに救いを感じる。心が支えられていると感じて、ありがたかったのだった。
(つづく)
と、まあ今週はしんみり書いてしまいましたが、『アフリカ』の31冊目がいよいよ出ます! 来週はたっぷりその話を書きますので、おたのしみに!
アフリカキカクのウェブ・ショップ(BASE)にも出しました。
「道草の家の文章教室」(横浜 & 鎌倉)、11月〜12月は「夢を描いて」でやっています。が、いつも通り、テーマは頭の隅に置くだけ置いて、好き勝手に書いてもらうので(も)構いません。「書く」ことをめぐる、自由気ままな教室です。初めての方も歓迎、お気軽に。事前にお申し込みください。詳しくはこちらから。
下窪俊哉の新刊『音を聴くひと』(アフリカキカク)は、のんびり発売中。
日常を旅する雑誌『アフリカ』のベスト・セレクション&モア『ウェブ・アフリカ』のvol.2(6/2020)は、メール・アドレス1本をご登録いただくだけで無料で読めます。ぜひどうぞ。