災害が起こらない限りただの原っぱだ。
今日はいつもに増して風が冷たく感じられた。彼は例によって「ころながおわったら? ころながおわったら?」と言っている。帰り際にする恒例のハイタッチを昨年の春から禁止されているのだった。門を出ると、ぼくが彼の"支援者"ということになる。ぼくの心の中では"同行者"か、場合によってはツッコミ役の"相方"であり、時おり何かの"共謀者"になる。が、彼にはそんなことはどうでもいいだろう。とりあえずバス停に立ってみるが、そこは日陰になっており、寒くてたまらない。次のバスの時間まで15分以上あるのを確認して、「公園を散歩してこない?」と誘ってみる。「バスは?」と不安そうだ。「まだ時間があるから」と言うと安心したような調子でぼくの散歩に付き合って(?)くれる。そこは情報によると防災公園ということだが、災害が起こらない限りただの原っぱだ。ぼくは影を見ている。彼は光の中をウロウロしている。影の中に入って向こうを見たら、木が太陽とぼくのちょうど間に入った。「あっ!」と叫ぶ声がする。「みて! バスがきた!」と向こうを指さしている。ぼくは呆れて「逆方向のバスに乗るの?」と話す。「のらない」と彼は即答する。