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<教育>共生社会に関する調査会

◆ろう者の言語・文化・教育を考える◆ No.002 2004年4月5日

創刊号で第2回バイバイ研究大会・シンポジウムについて簡単に報告したのだが、実はシンポジウムの前に、私もビックリ!の、第159回国会「共生社会に関する調査会」の報告があったので、これはとりあげなければ、と思い、ここに紹介する。

この報告は別にナイショというわけではないらしい。ちゃんと参議院のホームページにもこの調査会の報告が全文掲載されている。

参議院会議録情報 第159回国会 共生社会に関する調査会
 第2号 平成16年2月18日
 第4号 平成16年3月 3日

全文掲載だけにあって、どこをどう読めばいいのかわからないという人も多いだろうから、このメルマガでは、概要をかいつまんで(というよりも、龍の子学園親の会の板垣さんの報告のパクリになってしまうけれど)紹介しよう。

まず、高橋議員(無所属)からの質問「ろう者に手話教育がなされていないような話を聞いたが…」に対し、参考人である玉村助教授(奈良教育大学)が、口話法が主流だが、最近は聾者の団体からの手話導入の要望もあり、手話を導入する聾学校も増えているとした上で「日本語対応手話か日本手話か議論が高まっている」という応答。

以上は、2月18日、第2回でのこと。
高橋議員の「手話教育がなされていない」と部分、ちょっと違うのだと思うのだけど…。正しくは「手話で教育がなされていない」のだと思う。でも、調査会でこのことが取り上げられ、第4回の有村議員の質問につながったのだろうか?

第4回では、有村議員(自民党)がかなり突っ込んだ内容の質問をしている。文部科学省の原田副大臣が素直に「知らなかった」と答え、しっかり検討したいという答えを引き出せたのは価値があることだと思う。

その前に、神本議員〈民主党)が重要な質問をしている。「特別なニーズとは誰が決めるのか?」という質問だ。これには、原田副大臣が「最終的には本人ないしはその保護者であり、その希望がしっかりかなえられるような制度にしなければならないと思っている」という回答をしている。

つまり、日本手話による教育という特別なニーズが出た場合、その希望をかなえられるような制度をということにもなるのだ。

そして、有村議員が非常に勉強したとみえて、ろう者にとってあたりまえのことであった「あたりまえの願い」が有村議員によって質問の形で出された。

有村議員のコメントと質問

・現在の聾学校は「聞く、話す」ということに主眼をおいた「聴覚口話法」がメイン。

・ろう者は聴者に近づいたほうがいいだろうという考えから70年も聴覚口話法をやってきたのだと思われるが、聴力の重い子には厳しい。

・平成9年の調査では、手話を一切使っていない聾学校が小学部で半数以上、幼稚部で7割以上。

・聾学校教員養成課程で手話が必修科目になっていない。子どもの手話を読めなくても聾学校教員になりえる、この現状を副大臣はどう考えているのか。

・聞こえる人の母語は日本語だが、ろう者の母語は手話だと考えている。

・母語としての手話をマスターし、日本語の読み書きを習得する「ろう者のためのバイリンガル教育」というのが、ここ20年海外で成果をあげているが、日本の文部科学省は効果性が不明、あるいは実績がないということで積極的ではない。

・独立行政法人国立特殊総合研究所において、バイリンガルろう教育の効果性、海外での具体的な実践例等、研究に着手していただきたい。

原田副大臣は「大変恥ずかしいことながら、聾学校で手話が普及していないことを知りませんでした。結論から言いますと、しっかり検討させていただきます」と答えた。

しかし、政府参考人の金森氏(文部科学省)は「ろう学校では小中学部の75%以上が手話を取り入れている」と答え、さらに「聾学校教員養成課程で多くの大学では手話の基礎的な指導を行っている」と答えたのだ。

聾学校教員養成課程出身の学生がウチの手話通訳学科に入ってくるんだけど、その学生さんの手話の力、当初は全然ないに等しいですよ~。手話通訳学科で鍛えて鍛えて、成人ろうの手話を理解できるようになるんですよ~。

でも、有村議員も負けていない…。

金森氏の答弁を受けて有村議員は副大臣に述べた。

・その子どもにあった教育方法を提供するのは、日本の教育施策の中でも大事なこと。

・聴覚口話法にジェスチャーのように手話を付けるのでなく、第一言語としての手話を保障することが大事。

・「前向きに…」というのでなく、実際に担当者を決め、具体的な一歩が進むよう、副大臣のリーダーシップを期待する。

これに対し、原田副大臣は「はい、しっかりお約束します」と答えた。

聴覚口話法におまけ程度の手話じゃ、バイリンガル教育じゃない。国が責任をもってバイリンガルろう教育を始める時期に来ていると思う。

創刊号でも書いたが、聴覚口話法やキュー、日本語対応手話による教育を望む親(と子ども)にはその道が十分に開かれているが、手話を母語とし、書き言葉としての日本語を習得させたいと願っている親とその子どもにもその道が用意されるべきなのだ。

国立の聾学校はひとつだけ。
筑波大学付属聾学校である。
*現在は、筑波大学附属聴覚特別支援学校になっている。(追加注釈;2022-04-11)

筑波大学付属聾学校のホームページをのぞいてみると「残っている聴力を最大限に活用しようとする意欲を育てます」(幼稚部)と書いてあるが、「手話」はどのページからも発見できない。
*校名が変わった現在も、「手話」という文字を見つけることはできない。(追加注釈;2022-04-11)

国の責任で、特別なニーズにこたえる親子、つまり、日本手話で教育を受けることを希望する親子に対応するには、もうひとつの聾学校を設置すべきだと思う。つまり、バイリンガル教育法を導入した国立の聾学校を試験的に始める時期にきているのではないだろうか。

*本文中にある「ウチの手話通訳学科」というのは、国立身体障害者リハビリ
テーションセンター学院・手話通訳学科のこと。
*現在は、国立障害者リハビリテーションセンター学院・手話通訳学科。センター名が一部変更。(追加注釈;2022-04-11)

埼玉県所沢市にあり、都心と比べ、夏は2~3度暑く、冬もこれまた2~3度寒い。

平成12年から6階建ての現校舎に。ダイエットのため5階にある教官室には階段でと決めているのだが、なかなか…。

にがりダイエット中だが、同僚がビール酵母ダイエットを始め3日で2キロ減という効果を目の当たりにし、私も始めてみようかな~と考え中…。。


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