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無事に帰ってくるまでがライヴ

先日のTHE YELLOW MONKEYのライヴレポは、ネタバレ回避のため有料記事としましたが、その周辺、筆者の身のまわりで起きたことや考えたことなどを少し、書いてみます。
名古屋国際会議場センチュリーホールは、地下鉄の最寄り駅から徒歩10分弱、目の前に川があって橋を渡らないと辿り着けないのですが、公園、野球場、ジョギングコースなどの緑地に囲まれていて、あろうことか暗がりの中で最短ルートを見失い、遠回りしているうちに雨が降り出し、虫に刺され、のっけから試練を越えての会場入りでした。

遠方からなのか車で来ている人が多く、終演後の人の流れは一途駐車場へ。そこに呑まれるようにして見知らぬ出口から出てしまい方角も掴めないまま、通り沿いにバス停を見つけて時刻表を見ると数分後に地下鉄駅行きが来るようなので(帰り道とは逆方向でしたが)乗り、想定外の経路で帰りました。
車窓に、かつて東京から名古屋に戻ったあと連休の祭日に長女を産んだ病院がライトアップされて見え、妊婦健診の道すがら夏の猛暑でサンダルが溶けて分解し、急遽、数メートル先のスーパーで買い換えた記憶などが走馬灯のごとく眼裏に浮かんできました。

雨に烟る宵闇の町を眺め、謎のノスタルジーと迷子になったような寂寥に、楽しかったライヴの余韻を少しずつ冷ましながらの帰路。気候はどんよりと蒸し暑く、11月でも寒くなかったのが幸いでした。
無駄に時間をかけて帰宅すると、次女は我関せずと爆音でTHE PINBALLSのCDを聴いており、長女と長男は焼肉屋のあとカラオケ、終電前に帰ると連絡が入っていました。

自閉症(ADHD)の次女は、アニメやゲームが好きで、特に音楽好きというわけでもないのですが、小学生の頃にはEXILE(ATSUSHIさん)のCDをよく聴いていて、高校生の頃からTHE PINBALLSにハマったらしく、こっそり1人の時に爆音で再生している模様。
次女は家族とも殆ど会話をしないので、何とかコミュニケーションの糸口を見つけたいと日頃から模索していて、私はある時、近隣からの苦情が心配されるほどの音量で曲が流れているところに偶然帰宅しました。

すかさず、PINSのライヴを一度だけ観たことがある(Radio Caroline、サトウマンション、THIS IS JAPANとの対バン、地元ライヴハウスのイベントにて)という話をしたら、普段なら完全無視ですが、微かに頷いて聞き、そのまま、立ち去ることもなく爆音を流し続けていたのです!
そこで、口下手な私も好機を逃すまいと、メンバーの中屋さんが現在はYellow Studsのギターも担当していること、ライヴでの佇まいがかっこいいので印象に残っている、また観たい、とライヴの話題を繋ぎました。次女はノーリアクションながら、口元に薄らと笑みが浮かんでいたのを私は見逃しません。

──やはり、糸口は音楽かもしれない。

長女が思春期の時もそうでした。長女は快活に喋るタイプですが気難しいところもあって(双極性障害です)、母子の会話のきっかけは、当時のテレビドラマ「東京バンドワゴン」の主題歌と玉置浩二さんの話題でした。私が持っている安全地帯の古いアルバムを紹介したり、カラオケで歌ったり。
親しみや頼り甲斐を感じにくい人ではあるが、母は音楽のことなら話せると確信したようです。
今では、何でも話せるかなり仲の良い親子です。

先日50歳になった私は、時々ライヴに行って帰ってくると、いつもこんなことを考えながら日常に戻ります。
今ある平穏に感謝。

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青い向日葵
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