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読書記録「最後の一球」
【読書記録】
島田荘司 著
「最後の一球」
島田作品を代表する名探偵
御手洗潔(みたらい きよし)シリーズの中では
比較的地味というか
野球に特化した点でマニアックというか
御手洗・石岡コンビが脇役にまわり
事件に関係した一人の元野球選手による
独白のような手記を主軸に構成された
やや異色の長編小説です
不可能犯罪の謎を解くという
本格ミステリの要素を持ちながらも
大部分が 野球に人生を捧げた男たちの
儚くも濃密な時を辿る物語で
余分な説明は一切ないままに
貧しさからプロ野球入りを目指した
少年の家庭環境 好敵手との出会い
挫折と再挑戦 現実の厳しさ
スター選手の孤独と友情
時系列を追って事件へと迫る
集約されてゆくような展開に
引き込まれました
現在(事件)に至るまでの背景と
関わった人物の生い立ちや
野球を通しての人間関係
一つ一つの場面での心情
野球に詳しくない人でもわかる
人間の普遍的な心模様を描き
警察とは違い自由な立場にある
御手洗ならではの結末は
悲しい物語の救いとなって
読後感を爽やかに感じさせます
このタイトルは以前から
見知ってはいたのですが
オンラインショップで入手し
今回はじめて読みました
やはり何事も 出会いには
相応しい時期があるようで
近年息子が野球に打ち込んでいて
私も少しずつ野球の魅力が
わかってきた気がしていて──
幼少期から運動が苦手なので
スポーツ選手の心理は未知の領域と
思っていたのが実は誤解で
どんなジャンルであれ
何かに本気で取り組むことは
自分の弱さとの戦いであり
力の限界を知って苦悩しても
一生をかけて挑む価値があること
たとえ短い期間であっても
何事も成し遂げられなかったと
後から思ったとしても
情熱を燃やす時こそ生きる意味を感じ
記憶を埋め尽くすほどに
深く刻まれるもの
この本の登場人物は
時代もあると思いますが 親孝行で
母親を少しでも良い家に住ませたい
という健気な気持ちから努力を重ねます
それがいつの間にか目的を超えて
自分自身のための動機に変わってゆく
この過程が素晴らしいと思いました
島田先生の小説には
未来ある若者たちへの愛情と
弱者へのあたたかい眼差しが感じられ
奇想(トリック)と推理だけではなく
平易かつ美しい文章によって
一過性の楽しみでは終わらせない
物語の滋味を得られます
本を読まないどころか
漫画でさえ活字を読むのが面倒だと言う
ゲームと動画ばかりの息子(中学生)にも
いつか読んでほしい一冊
親の私がすすめると
おそらく反発すると思うので
さりげなく手に取れる場所に
本棚を設置したりして──
今のところ
アニメ「名探偵コナン」から興味を持ち
児童書「シャーロック・ホームズの冒険」
を読んで 面白かったと言ったので
コミックも並べて置いてみました
「ミタライ」全3巻
(漫画:原 点火/原作:島田荘司)
こちらも
画が綺麗で一気読み必至です
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