「おばさんみたいな声が顔をおばさんにする」ボイストレーナー・鳥山真翔美顔論
ボイストレーナーの鳥山真翔さんが実践する「美顔ボイトレ」。レッスンに参加して、正しく発生する「声」こそが、美しい顔と自分の印象を作るのだと思い知らされた。しかし鳥山さんはどうして、発声の観点からアプローチしようと思ったのだろう?独自のトレーニングが生まれた経緯を聞いてみた。
本来の顔を取り戻す、美顔ボイトレ
「もともとは、僕自身が歌手ということもあり、歌手相手に、表情筋を使うボイストレーニングはしていたんです。でもだんだん、オーディション番組などが減ってきて、歌手になりたい子も減ってきて。そんな時にたまたま、発声トレーニングのビフォーアフターで顔が変わってることに気付いたんですよね。これは、顔も声も鍛えられるトレーニングになると思って、『美顔』という名前をつけて発信したんです」
なんと美顔ボイトレは、偶然の気づきから生まれたものだった。さらにこの「美顔」というキーワードのおかげで、それまでプロ専門のトレーニングだと思われていたボイストレーニングが多くの人に受け入れてもらえたと、鳥山さん。
「『美顔ボイトレ』の美顔は、本来の顔を取り戻す、ということを指しています。よくリフトアップという言葉があるけれど、あれは、老廃物が取れて元の位置に戻ったというのが正しい。老廃物などのせいでできたたるみやしわが、全部元に戻っただけ、美顔ボイトレをして顔が引き上がったというのも、本来の美しい顔に戻ったと認識してもらえれば」
「美顔」の定義は、筋肉をしっかり使って老廃物を流し、余計なものがない本来の顔に戻すこと。その人が持つ顔の「本来の美しさ」を引き出すのが、美顔ボイトレなのだ。
「おばさんみたいな声」が、おばさん化させる
そして鳥山さんは、「声」の大切さを強く訴える。
「肌のケアはするのに声のケアはしないというのは本当にもったいない。脳は自分の声をすごく聞いていますから。自分がおばさんみたいな声を出していると、脳もおばさん化してしまう」
声が見た目にも関わってくるなんて、本当に恐ろしい話だが、これは鳥山さんがレッスン中にも言っていたこと。脳は、声に合わせて指令を出してしまうのだ。でも逆に考えれば、明るく若々しい声が出せるよう、声帯や表情筋を鍛えれることが、アンチエイジングにもなるということだ。
「いつまでも美しい顔でいられるように、僕のレッスンでは、正しい発声の仕方を教えます。そのために2つの筋肉、口角を上げるための筋肉『口角挙筋(こうかくきょきん)』と、目の奥の筋肉『上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)』を意識してもらいます。続けられることが大事なので、難しいものはやらない。でもたったそれだけのことで、人生が変わったりするんですよ」
もともと備わっているものをしっかり鍛えていれば、それだけで美しさは保てるというのが、鳥山さんの持論だ。化粧水や、美容機器で必要以上にケアすることも、鳥山さんからすれば「余分なことをしすぎている」状態だという。
「正しい情報をちゃんと得ることが大事。例えば道具などでゴリゴリマッサージすれば、顔は多少、小さくなるかもしれない。でもそれが本当にいいことなのか。しっかり考えてほしい」
コロナ禍で「初心に返った」
ここまでの鳥山さんの話を読んで、すぐにでも「美顔ボイトレ」を受けたくなった人はいるかもしれない。しかし取材時の2020年5月時点、新型コロナウイルスの影響で、ボイトレの講座も休業中。しばらくレッスンは受けられないのだろうか?
「実は、オンラインのレッスンを始めたんです」
なんと、鳥山さんの「美顔ボイトレ」はオンラインで受けられるとのこと!私たちにとっては嬉しい限りだが、実はボイストレーニングのオンライン化は簡単なことではなかったという。
「これまで、ボイストレーニング業界は、オンラインに不向きだと言われてきました。リズムのタイムラグの問題や、各ご家庭の防音具合によっては、大声をだすと、近所迷惑になりかねないので…。でも、ピンチはチャンスだと自分に言い聞かせました。試行錯誤して、美顔のトレーニングをメインとして、発声もミュートのタイミングを練習し、その技術を駆使して開催してみたところ、大好評で。キャンセル待ちも出ているほどです。こんな状況まで追い込まれなければ、自分に甘んじて“挑戦する”ことすら忘れていたと思います。初心に返ることを気持ちだけでなく、身をもって学びましたね」
前に進むために必要なのも、明るい「声」
ピンチをチャンスに変え、最近ではオンラインレッスン開催と、スタッフとの反省会に追われる忙しい毎日を送っている鳥山さん。気持ちが塞ぎがちだったこの期間、鳥山さんはどうやって、前向きな気持ちを保っていたのだろうか。
(画像は2020年2月の取材時のもの)
「僕は、モチベーションは脳が生み出していて、脳は血流で改善できると思っています。自宅にこもると鬱っぽくなってしまうのも、血流が滞るため。しっかりストレッチなどで血を脳に行き届かせるよう意識をしておけば、モチベーションは必然的に保たれると思います。
『フェイクスマイル』『フェイクボイス』という言葉を、僕はよく使っています。レッスンでもお伝えしたように、脳は『自分の筋肉の形状』に反応しています。家にいて笑わなくなると脳もそのように反応し、ボソボソとしか声を出さないと、脳もそのようになってしまいます。意識的に笑ったり、明るい声を出すことは、脳科学的にも良いことなんですよ」
美顔ボイトレでも何度も出てきた基本が、ここでも。体を動かすことや笑顔でいることというのは、前向きな気持ちに自分を持っていくためにも、必要なことなのだ。
「僕のインスタなどSNSでも、自宅で出来る美顔ボイトレを無料配信してるので、そちらもぜひ、ご覧ください。前に戻るために『耐える』日々ではなく、次の時代に『進む』日々を一緒に過ごしましょう。」
最後まで、前向きで素敵な言葉をくれた鳥山さん。今の状況が落ち着いたら何をしたいかも聞いてみた。
「まずは、汚い提灯系の居酒屋でジョッキでみんなで生ビールが飲みたいですね!(笑)あと、行きつけのゲイバーもいきたいです!当たり前の日常が恋しいですね。」
美顔ボイトレに取り組めば、鳥山さんのように日々を前向きに楽しむ心まで得られそうだ。
撮影:南方 篤
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