『サムライ ハイスクール』 第五回 サムライ小太郎の誕生! ―ドラマの裏側から
―深掘り考察記事です
―おもいきりネタバレしますのでご注意ください
―基本的に敬称略/‟春馬くん”は例外
『サムライ ハイスクール』おもしろかったあ!
サムライ殿にゾッコンです! でもヘタレくんもスキよ💕
ってことで、ワタクシランキングでは常に上位をキープ!
それなのになぜだか世間の評価はあまり高くはないらしい…
悔しいので、思いっきり応援することにしたのです。
まずは、外国語のようなギャル語を解明した〈ギャル語解析&ギャグ解説〉を真ん中に、ざっくりまとめたあらすじとあざやか(?!)な変身の術、ヘタレ小太郎やサムライ小太郎の気持ちや言葉などを加えて回ごとに再構成してみた。
その第一回から第三回は👇👇👇
さらに『サムライ ハイスクール』最大の謎、ひみこなる人物の解明にも挑んだのが第四回👇
さて一話から九話も堪能したし、ヘタレ小太郎の成長も見届けたし、ギャル語やひみこの謎もほぼ解明できたので、ここらでちょっとドラマの裏側をのぞいて、サムライ小太郎の誕生秘話でも探してみよう。
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🌕動く「大坂夏の陣図屏風」
太鼓がドドドンッと打ち鳴らされ、尺八(?)の音が響き、「大坂夏の陣図屏風」が映し出されると、そこにナレーションがかぶさる。
――今から400年前。全国制覇を成し遂げた徳川家康は豊臣家を滅ぼすため…(略)…大坂夏の陣である。このとき、徳川家康をあと一歩のところまで追い詰めたのが真田幸村であった。(略)…その戦いぶりは後の世に語り継がれた――
第一話の冒頭、これはまるで! 某大河ドラマじゃないか!
この屏風は大阪城天守閣所蔵で、黒田屏風と呼ばれている重要文化財らしいぞ。
その重要文化財がアップになると、描かれた合戦中の人物がなんとコマコマと動いているのである。刀を上下させたり足が動いているくらいの繰り返しなのだが、それがちょっとかわいい。
そして、タタタタータッタター♫という壮大なテーマ曲とともに、あの合戦場面へとつながるのであった。
だが……配信で見ると、なんと!なんと!この部分がな、ない!
オトナの事情かなにか知らないが、バッサリとカットされてしまっている。
ここがいいのになあ。オニザンネン。
どこかで見つけて、ぜひご堪能あれ!
ちなみに、いまTVerで配信中の『サムライ・ハイスクール』には、以下のような断り書きがある。ただし、この屏風のことかどうかはさだかでない。
※権利上の都合により放送内容と一部異なる場合がございます。あらかじめご了承の上お楽しみください。
🌙佐藤東祢監督について
日本テレビの演出家、監督として『14才の母』(2006年10月)、『ごくせん シリーズ3』(2008年4月)、『ごくせんTHE MOVIE』(2009年7月)、そして『サムライ ハイスクール』(2009年10月)と、10代の春馬くん作品を4本も残してくれた佐藤東祢監督。
父君佐藤純彌氏は高名な映画監督、祖父君佐藤貫一氏は日本刀学者。こういった環境ゆえに、あのたいそう立派な合戦シーンになったのではないかと勝手に想像している。
冒頭の屏風と言い、手抜きなしの重厚な合戦シーンと言い、若手人気俳優主演の民放連続ドラマとしては異例の本気度なのではないかと思う由縁はそこにある。
2020年7月のあの翌日、自身のブログに次のように記した佐藤監督。温かい言葉に涙💧する。
でも…「あの人のこと」なんてタイトルはちょっと悲しい…
🌗脚本家 井上由美子氏
『サムライ ハイスクール』は、春馬くんにとって『14才の母』に続き2作目となる井上由美子作品。さらに今作は春馬くん主演であり、春馬くんへのあて書きという重要な作品だ。
春馬くんのことがお気に入りだったのではないかと思われる井上由美子氏と春馬くんの対談記事を見つけたので、興味深い部分をピックアップしてみよう。
この作品に関わった経緯
「1年くらい前〈注1〉『(日本テレビの)土曜9時の枠のドラマを春馬君でやりましょう』というお話を頂いて」と言う井上氏に、「1年前!?」と驚く春馬くん。
「そう。それから『ブラッディ・マンデイ』などを見て、似ないようにしなければなあ……、とか色々考えたりして。それで企画を3つ4つ5つくらい考えた中で、これが一番いいかなあというのが、今回の作品になったんです」(井上)
今までに春馬くんがやったことのない役、ということを意識したという井上氏。
「…今、若い男性の俳優さんがたくさん売れてきているじゃないですか。するとどうしても、同じような役のイメージのドラマが増えてしまう。三浦君にはそうした作品とは全然違うことをやってほしいし、思い切ったことの出来る役を作りたいなと。…」(井上)
「…それこそ難病ものとか、普通の話も考えたんですよ。でも監督が凄くぶっ飛んだものを撮れる人で、企画の中から‟これがいい!” とおっしゃったので。その言葉を信じてやろうということです」(井上)
で、当の春馬くんがこの企画の話を聞いたのは『星の大地に降る涙』の舞台稽古の最中。ちょうど武士の役をやっていて、サムライに変身しちゃう役というのを聞いて、ラッキー、縁があるな、殺陣の稽古が活かされる、と得した気分だったという。
「…‟土9”って、若い視聴者や子供達に向けたエンターテインメントを思い切って出来る唯一の枠だと思います。こだわってやってるのは凄くよいので、そこは枠のカラーに乗ってやりたい。三浦君はそれを背負えると思うし」(井上)
なぜサムライがテーマか
「…今の子供が直面する問題に解決策はないけど、ちょっとずらして、違う視点から見れば全然大したことないと思えることはあるんじゃないかなって。それで、ずらすって何だ!? と考えた時に、サムライとか武士道ってよくない? と」(井上)
武士道と言われてピンと来たかと聞かれた春馬くんは、ピンとは来なかったが、好きな映画『壬生義士伝』を参考にしたり、新渡戸稲造の『武士道』を読んで勉強した。ひたすら真っ直ぐ進み、大義へ忠実に生きる姿はいいなあと単純に憧れたそうだ。‟武士に二言はない”、‟悪にも情けを” などという言葉も気に入ったという。
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「…サムライの時は迷いなし!って感じだったよね。私はすっごく声が出るなと思って驚いたんですけど」(井上)
「そこはちょっと自信があるんですよね」(三浦)
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地球ゴージャスの舞台で初めて本格的な殺陣に取り組んだ春馬くん。凄く面白かったそうだ。練習していくとだんだんキレが出てくるのが自分でもなんとなくわかるし、(岸谷)五朗さんが褒めてくれるのがお世辞でも何か嬉しいという。
春馬くんの印象――以前と今
(『14才の母』の時)「初々しいけど、ふてぶてしい感じもありましたよ。結構ちゃんと、色んなことを飲みこんでいける子なのかなと思ったんです」(井上)
「最初はね、不器用な人なのかな?と思ったこともあったんです。でも演技って、大事なのは上手さじゃないじゃないですか。存在感ですよね。
未来ちゃんは三浦君より年下だけど、以前からお仕事をしていて、俳優としては先輩だった。〈注2〉
でも存在感では正面から勝負していました。それで、いける! と思った。失礼かもしれないけど三浦君はどんどん上手くなっていったし、役に入っていってる感じもしたし」(井上)
『14才の母』以降、俳優としての成長を感じる部分は? という質問にはこんな答えが。
「…ずっと持ってる初々しさとか流されない強さみたいなもの、変わらないところがあるのがいいなって。弱そうで強そうという、二面性があるんですね。昔ながらの男みたいなクラシックな感じも、今っぽさも持ってるし。二面性というのはスターの条件ですから」(井上)
舞台とドラマ――縁がつながる
春馬くんの初舞台『星の大地に降る涙』を観た井上氏は、「面白かったです。三浦君、歌って踊れるのねと。…」との感想。〈注3〉
この企画を考えた時、三浦さんがダンスや殺陣が出来るというのはご存じなかったんですよね? という質問に、「そうなんです。偶然なんです」と言う井上氏。
「色んなことが不思議と繋がるんですよね。…」(三浦)
(舞台の座長岸谷五朗が父親役で出演することに)「そうなんです、またびっくりですよ。繋がってるなあと思って。縁ですね。共演出来るのはもちろんですけど、五朗さんがこの話を聞いた時に ‟じゃあやるか” と言ってくれた、そこが嬉しい。だって五朗さんなら、その作品をやりたいとかやりたくないというのはある程度、自分の考えが通ると思うんです。…」(三浦)
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細かい字でびーっしりと2ページ以上にもなるこの対談。
対談と言いながら、取り上げたのはほとんどが井上氏の言葉になってしまったが、「画面で見る感覚を大事にしたいので基本的に役者さんには会わない」という井上氏だから、とても貴重なものだ。
「今は女の子が強いんですよ。誰にいじめられるのが怖いって、女の子に ‟キモい” と言われるのが一番怖いって」と言う井上氏に、春馬くんが「ああ!」と深く頷いたりとか、『14才の母』の打ち上げで行ったカラオケで、コブクロか何かを歌った春馬くんが誰よりもえらい上手くて生瀬(勝久)さんがむかついた話など、クスッと笑えるエピソードややり取りがあってオニタノシイ。
同時掲載の、春馬くん単独インタビューもとても興味深い話が満載なので、どこかで手に取る機会があったらぜひ。
🌖ボンビーメンとの共通点――櫨山裕子プロデューサー
憧れの小栗旬と共演したいと春馬くんが願い、早速、それが実現した『貧乏男子 ボンビーメン』(2008年1月放送)
この作品のプロデューサー櫨山裕子氏が、春馬くんの起用ポイントについてこう語っている。
――と~~ってもマジメな白石くんを演じている三浦春馬くんの起用理由を教えてください!
「まずは今まで陰のある役が多かった春馬くんが全開で笑う姿を見たいなって思ったんです。どうしても彼の年齢だと、高校生とか誰かの子供であるとかって ‟役割的”なキャラになってしまいがちですよね。そうじゃなくてひとりの男の子として、三浦春馬を見せていったらどうなるんだろう?っていうところから彼のキャラが決まっていった感じです」(櫨山P)
――それにしても白石くんも親の残した借金があって、かなりの貧乏!
「小栗くんと春馬くんにはこんなことをやらせて申し訳ないなぁって。ものすごく贅沢なことをやっているなぁと我ながら思います(笑)」(櫨山P)
〈JUNON 2008年3月号『貧乏男子 ボンビーメン』特集から〉
前年にブレークした小栗旬の連続ドラマ初主演とあって期待された『貧乏男子 ボンビーメン』だが、「ああいう小栗旬って別に見なくてもよかった」などと評判は……。
小栗自身は、やりたい役で自分にとても合っていると考え、内容にもかなり口をはさんだらしいのだが、ヒットとはならなかったようだ。
この櫨山プロデューサーが『サムライ ハイスクール』のチーフプロデューサーであることに気づいたのは、深掘り記事を書き始めた頃のこと。そしてハッ!とした。
「…こんなことをやらせて申し訳ないなぁって。ものすごく贅沢なことをやっているなぁと我ながら思います」
『貧乏男子 ボンビーメン』について語った言葉は、そのまま『サムライ ハイスクール』にも言えるではないか!
人気ある若い役者に、誰もやらないようなぶっ飛んだ役をやらせたい制作側と、もっと普通の胸キュンものやカッコいいものを見たいファン。世はいつも両者のすれ違いなのだろうか。
でも、時流に乗っただけのような安易な内容ではなく、人気に寄りかかっただけの配役ではなく、制作陣と役者がともに真摯に取り組んだ作品だからこそ、何年経っても色褪せず、何度観ても面白いのだと私は確信する。
さーてと、あんまり裏側奥のほうばっかり探ってないで、そろそろ春馬小太郎のすごいところでも語るとしようか。
〈つづく〉