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『サムライ ハイスクール』 第六回<最終回>ここがすごいよ! 春馬の小太郎
―深掘り考察記事です
―おもいきりネタバレしますのでご注意ください
―基本的に敬称略/‟春馬くん“は例外
ドラマ裏側の深みからヨイショと抜け出したところで、
とうとう最終回とあいなった。
最後は小太郎としての春馬くんについて検証するでござる。
では「ここがすごいよ! 春馬の小太郎」始めますっ!
其の一 二役だけじゃない!
ヘタレな高校生小太郎とサムライになっちゃう小太郎の二役って言われてるけど、本当はそれだけじゃないよ。しょっぱなに登場した戦国時代の正真正銘の侍、望月小太郎もいるっしょ。
で、メインはこの三役だけど実はもっといるよね。
夜の教室でヘタレ小太郎と対面した、時空をさまよってきた元侍の小太郎。それと戦国時代にスリップして本当の侍のフリをするヘタレ小太郎。これで五役。この二役は1回ずつ出てくるだけだけど、ほかの侍とのちがいをはっきりさせなくてはならない重要な役どころだと思うな。
――というわけで、ひと口に‟侍”と言ってもなんと4人もの侍が、そして小太郎は5人もいるのだ!
さて、春馬くんはどうやってこの五役のちがいを出しているのだろうか。
順に細かく見ていこう。
1🌕侍小太郎
戦国時代のホンモノの侍。真田幸村の家臣。1614年大坂夏の陣にて討死。享年17歳。望月家の先祖。
18㎏もある甲冑を付け、石ころだらけの川での合戦シーン、たいへんだっただろうなあ。でも、最初の最初に手抜きなしのこれがあったからこそ、この作品がイキイキとしたんだと思う。ちゃっちいシーンにならなくてホント、よかった。
こういうところが嘘っぽいと台無しなのよ。時々そういうのあるけど…
主君真田幸村に「逃げてくだされ」と進言するときの厳しい顔つき、刀を抜いて地面に突き刺す力強さ、腹の底から出す迫力ある声、合戦最中のキレのある動き――
どれをとっても本格的時代劇並みじゃ。
そしてそれとは対照的な、初陣前に殿と話すときの少し柔らかだがキリッとした顔つきと落ち着いた声。どちらも凛々しくてまさに侍殿。
ホンモノの侍なわけだから、ここでヘタレ色は出してはならぬのである。
2🌙ヘタレ小太郎
現代の高校生である望月小太郎。17歳。成績は芳しくなく、もう高3の秋だというのに志望校も決まっていない体たらく。取り柄もなく、なんでも笑ってごまかし、すぐヘン顔をするお調子者。体幹すこぶる弱く、動きはヘナヘナ、いいとこナシ。
声のトーンはおおむね高目で、「うっそー」とか「まじ?」とかよく言う。片目だけ見えるイケてない髪型はまるでゲゲゲの鬼太郎。
でも実は思いやりと正義感のあふれるいいヤツなんだ。これがこのストーリーの肝だよね。
「こういう普通の人を演じるのはむずかしい、どうやろうかちょっと悩む」と言っていた春馬くんだけど、見事になりきってます!
だけど、いったいどうするとあのハンサム顔を隠し、ホントに冴えなくて弱っちい男だと思えるほどの人物になれるのだろうか。
春馬くんがやったのは――
柔らかな顔の筋肉を駆使して唇をとがらしてみたり、曲げてみたり、口をポカンと開けてみたり。ヘタレ感を出すにはこれはかなり有効。
だけどそれだけじゃない。あとは春馬くんの魔法かな。
動きのほうでも体の柔軟性を駆使してヘナヘナとしゃがみ込んでみたり、なんてことないところでコケてみたり、自転車ごとスッ転んでみたり…
いやー、いろいろやってくれますね、春馬くん。お見事!
3🌗サムライ小太郎
ヘタレ小太郎に侍が乗りうつったときの小太郎。
さっきまでの冴えないヘタレが一瞬にしてシャキッ、ピシッとなり、顔つきがまるで変わる。話し方も堂々とした侍言葉に。武器は手近にある定規やデッキブラシなどだが、めっぽう強く、悪者をビシバシと成敗していく。
監督には「ワイルドにカッコよく演じてほしい」と言われたとか。
完璧だね、春馬くん!
ただ、サムライになっても服装はヘタレのときのままで、髪は黒ゴムで雑に結わいただけ。そのためか微妙にヘタレ感があるというかなんというか…
時代がかった表情と所作、それと現代の服装とのギャップがちょっと笑えてしまうポイントなのかも。でも、本人はいたって真面目。
それにしても肩や腕の筋肉が見事で、ヘタレ小太郎のあの制服の下にこんな肉体美が隠れていようとは、まったく想像できないよ!
天晴れじゃ、サムライ小太郎。いや、天晴れ、春馬くん。
4🌖時空をさまよってきた侍小太郎
八話ラスト、夜の教室でヘタレ小太郎の目の前に現われた 394年時空をさまよっていた元侍の小太郎。小太郎に乗りうつっていたソノモノだ。
本当はホンモノの侍小太郎が討死したあとのさまよえる霊魂なのであるが、ヘタレ小太郎と話をするために乗りうつっていたサムライ小太郎から抜け出し、姿かたちを持って現世に現われたってわけだな。
だから、ホンモノの侍小太郎とも、侍が乗りうつったあとのサムライ小太郎ともちがう第三の侍なのである。
殿のため誇り高く散るはずだったのに、何もできぬまま討死した侍小太郎。その無念を晴らすため、誇りを取り戻すために長年時空をさまよい、同じ名で同じ年齢の小太郎の体に乗りうつったのだという。
長年さまよっていたので着物はボロボロ、髪型も乱れている。
4人の侍の中で一番言いたいことを持っていて(そのために長年さまよっていたんだから)、不甲斐ないヘタレ小太郎にズバズバとモノを言う。
正々堂々と威厳のある態度で声の張りも強い。微妙なヘタレ感もなし。
オープニングで、ヘッドフォンをした軽いノリのいまどきの高校生と殺陣をカッコよく決めている侍が出てくるけど、この侍がどうしてボロくて汚い着物を着ているのかが、最初すごく疑問だった。二役の内のひとつなんだからもっとカッコいい姿で出せばいいのにと思っていたのだが、これはヘタレ小太郎に乗りうつるべく時空を長年さまよってきたこの侍だったってわけなのだな。
5🌑戦国時代にスリップしてホンモノの侍のフリをするヘタレ小太郎
岩永の告白を聞き失神した小太郎は、現代から戦国時代へと遡ってしまい、侍小太郎が大坂夏の陣で討死する前の晩に、主君真田幸村の前に転がり出てしまった。
バレたら殺されるかも、と懸命に侍を演じるヘタレ小太郎なので、現代の言葉も出てきちゃうし侍言葉もちょっと変。声の出し方も軽い感じ。動きもちょこまかと落ち着きなく、ヘタレ色は隠せない。
意識的に侍のフリをしてるわけだから、わざと感が少し出ているのはわざとである。いやー、やることが細かいなあ、春馬くん。
許婚からおなかにややこがいると聞いたことや小太郎に対する想いも知り、ホロリとする小太郎であった。侍小太郎の無念も理解したことであろう。
🌕 🌙 🌗 🌖 🌑
こうやって5人もの小太郎を見事に演じ分ける春馬くんだけど、特筆すべき場面がある。
八話から九話にかけて、刀を持って警察から逃げている一連のシーンだ。
ヘタレ小太郎 ➡ サムライ小太郎 ➡ ヘタレ小太郎 ⇔ 時空をさまよっていた元侍の小太郎 ➡ サムライ小太郎 ➡ ヘタレ小太郎
と短い間隔で次々と変わるところは圧巻。
この中でも特にすごいのは、教室で永沢にキスされたサムライ小太郎がヘタレに戻る瞬間だ。
ヘタレに戻るとき小太郎は、これまでのように下に倒れなかった。わかりやすい場面転換もなしに立ったまま、永沢にキスされたままサムライからヘタレに戻ったのだ。
サムライの凛々しい顔が一瞬でヘタレに戻ってる! だがそれも、大袈裟に表情を変えないままにだ!
軽く瞬きしたときは、もうすっかりヘタレ小太郎だよ。
春馬くんはいったいどんな魔法を使ったのだろうか。
目の化粧だけではないと見た。
さらに、永沢の手をつかんで教室から逃げ出したとき。
教師たちに「どけ!どけ! 近寄るでない!」と叫ぶのだが、その顔と言い方はサムライ小太郎ではない。ヘタレに戻った小太郎が、サムライ小太郎のフリをしているのがちゃんとわかるのである。
これは化粧だけでは表わせないぞ。
あっ! これもまた別の侍であるな。だとすると六役だったか…
ま、一瞬の登場だからいっか。
そしてこのとき、ヘタレ小太郎自身が侍になったのである。
其の二 走り方だってちがう!
走り方もワンパターンじゃないぞ。5種発見!
それぞれに役柄のちがい、気持ちのちがいがよく出ている。
1🌙ヘタレ小太郎のヘタレ走り〈五話〉
学校に来ないのを心配した小太郎やおまわりが家の前にいるのを見て逃げようとする中村を追いかけるとき。手も足も体もグニャグニャと締まりのない走り方。
2🌙ヘタレ小太郎のふつう走り〈五話〉
ホームレス狩りの被害にあった人を探すとき。手に力も入っておらず、デレデレといかにもな走りだが、ヘタレ走りよりは少しましか。
3🌙ヘタレ小太郎のガンバリ走り〈五話、八話〉
〈五話〉岩永が怪しいとにらんで自転車に乗った彼を追いかけるとき。指に力を入れて掌をまっすぐ伸ばし、腕を直角にして一生懸命振って走る。
〈八話〉ベッドの下に隠しておいた刀を交番に届けようとしている妹を追うとき。五話と同じような走りだが、もっとスピードが出ているようだ。かなりシャカリキ。
4🌗サムライ小太郎のサムライ走り〈八話〉
刀を手に警察から逃げているとき。左手に刀を持って右手は斜め下に伸ばし体を上下動させずヒタヒタ走る。「天外者」を彷彿とさせるが、制服姿なので若干、滑稽フレーバーが…
5🌙チョンマゲが残っているヘタレ小太郎の走り〈九話〉
誇りを取り戻したいという侍殿の言葉を聞き、永沢と教室を出たあと一人で東雲歴史文庫へ急ぐとき。ヘタレ走りでもなく、サムライ走りでもなく、侍の心を持ったヘタレが、ただ一生懸命がむしゃらに走る。
其の三 声色七変化
五つもの役を繊細に、かつ大胆に演じ分ける春馬くん。
ちがう人なんだから声色も話し方もちがうのは当たり前なんだけど、やるほうはそれはそれはたいへんなはず。
さらに別の声が2つも登場で、どんだけ~っ!
1🌕侍小太郎の声
2🌙ヘタレ小太郎の声
3🌗サムライ小太郎の声
4🌖時空をさまよってた侍小太郎の声
5🌑戦国時代にスリップしちゃって侍のフリをするヘタレ小太郎の声
6🐴サムライ小太郎になったときのヘタレ小太郎心の声
7🐎ナレーション的ヘタレ小太郎心の声
わっ! ビックリ。ホントに7つなのね!
1🌕から5🌑については、其の一の「二役だけじゃない!」の中で触れておる。
残りの6🐴と7🐎、さらに2🌙についてを詳しく見ていこう。
6🐴サムライ小太郎になったときのヘタレ小太郎心の声
サムライ小太郎に変身してもヘタレ小太郎の精神部分はそのままどこかに残っていて、サムライ小太郎の言動を見ているらしいぞ。
なにかしでかそうとするサムライ小太郎にヘタレ小太郎が心の声で叫ぶんだけど、それはサムライ小太郎にはぜんぜん届いてないみたいだ。
小太郎のふだんの言い方よりもちょーっと大げさなのが、慌てている感じ、戸惑っている感じをよく表わしていて臨場感を増大させるけど、声は思いっきりヘタレだよ~。
7🐎ナレーション的ヘタレ小太郎心の声
ヘタレ小太郎の心の声には、セリフとしてサムライ小太郎らに言うときと、セリフじゃないときがあって、こっちはナレーションみたいなものかな。
主人公本人の語りだから、アナウンサーなどによるナレーションとは少しちがうのかもしれないので、ナレーション的と言っておこうか。
周りの状況や自分の心情を観ているこちら側に伝わるように説明するんだけど、セリフの形で言うときの心の声とは声の出し方も気持ちの込め方も速さも巧みに変えている。
特にちょっと落ち込んだりしんみりした場面のときの語りが格別なんだ。
感情は極力抑え、力まず落ち着いた低めのトーンでテンポもややゆっくり穏やか。これがしみじみとしていいんだなあ。
心が洗われるような気分になったところで、言ってることがスッとこちらに入ってくる。絶妙です。
2🌙ヘタレ小太郎 声の七変化
‟其の一”でヘタレ小太郎の声はおおむね高めと書いたけど、これはテンションちょっと高いときの話。
だけど小太郎だってそんなときばかりじゃない。
いろんな小太郎がいてヘタレの中に七変化あり、声の中にも七変化あり。
もう七色どころか無限と言えるのではないか、というくらいいろいろ披露してくれてる。
声の出し方、言い方でダイスキ💕な箇所を列挙しちゃいま~す。
🌙〈一話〉父親が部屋にきたときの2種類の「なに?」。1回目はそっと静かに、2回目はちょっと困惑気味に。妹に怒っちゃった自分にがっかりしちゃってるからだね。
🌙〈二話〉侍の夢を見ていて馬の嘶きで目が覚め、「あぇ? 夢か」。この力の抜けた言い方が絶品。ダイスキ💕
🌙〈三話〉匿名の悪口に抵抗していたサムライ小太郎が、ヘタレに戻っても校長に物申すときの声。オドオドと話していたのが、次第に力強い言い方になる。
🌙〈四話〉ひみこに泣き言をいうとき。鼻声みたいになってる!
🌙〈五話〉小清水文具店で声をかけるとき。スッと息を吸ってから甲高い声で言う「すいませーん」。
🌙〈六話〉ホームレス狩りを疑われ、校長にまじまじと顔を見られたとき。「な、なんですか」と「(スッ)ええっ?」って言い方と表情がもう最高!
🌙〈六話〉父親がクビになり、「おばあちゃんに電話してくる」と言って出て行く母親を追いかけるとき。「お、お、お、おかあさん」と戸惑い慌てた様子の動きと声が抜群!
🌙〈六話〉この先どうなっちゃうのかと妹と2人、外で話すとき。「大丈夫!」って元気に言うところが、なんだか♡広斗くん。
🌙〈七話〉岩永に拘束され「俺のおやじを誰だと思ってるんだ」と言われたとき。「偉いのはおやじさんだろ。お前じゃないよ」とビビリながらも震える声で、ちゃんとしたことを言う。
🌙〈九話〉時空を超えてやってきた侍と対峙しているとき。競わず争わず喧嘩せずの小太郎が珍しく声を荒げて話す。
🌙〈九話〉警察に行く前に学校でみんなに謝るとき。きっぱりと言う声、しんみりした声、強く決意をする声。いろんな声を駆使して自分を理解してもらおうと懸命に話す。ちょっと拓斗がいるな。
🌙〈九話〉受験日当日。出かけようとする小太郎を小学生以下だからと心配する母親に「うるさいなー、もう」っていう言い方は、こりゃあ、くまのプーさんのモノマネじゃあないか!
もっともっとい~っぱい無限にあるんだけど、終わらないのでここは厳選12声にしておこう。
しかしこうやって書き出すと、春馬くんって声の出し方がほんとに多彩で色気があって秀逸すぎるじゃん、ってあらためて感心する。
🌕 🌙 🌗 🌖 🌑
未来につなげよう『サムライ ハイスクール』
こんなに魅力たっぷりの『サムライ ハイスクール』なのに、春馬くんはこのころ、役者を辞めて農業の道に行こうと思ったのだという。
「一話を撮り終わったころに気持ちが沈んできた。出ずっぱりで忙しく、周りがまぶしくて自信が持てない。(中略)オーバーヒートした。怖かった」〈2012年2月5日放送『ホンネ日和』より〉
だけど、そんなことはまったく想像もさせない出来上がりだよ。
最後まで立派にやり遂げたんだね。すごいと思う。
そんなツラさのなかで作り上げた作品が未来に繋がっていってほしいと心から願う。
視聴率や他人の付けた評価など気にせず、自分の目で見て自分の心で感じてほしいんだ。
面白かった! 小太郎最高!
青空に向かって叫ぶよ。
小太郎、ダイスキだよ~! 春馬くん、ありがとう!
〈完〉
<春馬くん応援宣言>
春馬くんのこれまでの旅路とこれからの長い旅を応援していこう
まだ会っていない人が春馬くんと出会えるよう
世の中が春馬くんを忘れてしまわぬよう
そのきっかけとなれるように祈りを込めて
『サムライ ハイスクール』第六回<最終回> ここがすごいよ! 春馬の小太郎
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