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春枕のカウンター③吉野の桜〜託された祈り〜

春枕のカウンター板には、奈良・吉野で自生していた桜の木が使われています。

吉野の桜は、お花見の対象としてだけではなく、古くから尊いもの、亡き命に捧げるために植えられてきました。そして信仰の証として、深い意味を持ち、神聖な存在として受けつがれ、心に深く刻まれています。

また平安時代の歌人、西行法師がこの地に庵を結び、桜を愛して多くの歌を詠んだことで、吉野の桜はさらに特別な存在となりました。西行の代表的な歌のひとつに、以下のものがあります。

願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ

この歌には、彼が桜の下で生涯を終えたいという願いが込められており、その通り、ある春の日に、満開の花の下で、眠りにつきました。

桜は春に、いっせいに咲き誇り、ほんのひととき美しい花を咲かせ、その後、地へと舞い散っていきます。その一連の姿に、人は、人の一生を重ねあわせてきました。桜は命の本質を教えてくれる存在であり、昔も今も、生と死を受け止めてくれる力があります。

春枕の桜にふれることで、千年を超える長きにわたり、人が桜に託してきた祈りを、感じていただけますように…