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私は独身、子を持つに早い

この世のお母さん、いつもお疲れ様です。
本当にありがとうございます、お世話になっています。この感謝を伝え切ることは、この1度だけの人生では足りそうにありません。

私には、1歳半(確か)の姪がいる。姉の娘。私の人生で初めての姪。とっっって可愛い。
目に入れても痛くありません。目の中をクロールされても、痛くないです。
きっと、否、確実に。

そんな姪も子どもである以上、姉に怒られることがある。それはもう何回も。相手が子どもとはいえ、姉は本気で叱ります。ダメなことはダメだと、伝える。家族団欒の波が、1度ひいていくぐらいには。

姉が、母親になっていた。
姪を叱る姉を見てそう思った。中学生までの私を召使のようにこき使った、坂道を自転車で下る途中で転びカゴに入れていた大根をおった、とにかくよく笑う姉が親になっていた。
それはもう立派な親に。娘を愛情持って叱ることができるような母親に。
私が知らないところで、きっと苦労を重ねてきたのだろう。泣き止まないことも、ご飯を食べたがらないことも、なかなか寝付かないことも。
そんな苦労を、1枚ずつ、1枚ずつ重ねて、姉は母親になった。

高校のクラス会の後、早朝に返ってきた私は姪に朝ごはんをあげるように姉に頼まれた。
帰省してから、姪にご飯をあげる姿は隣で数回見てきた。しかし、私があげるのは初めてだった。しかも、姉も母親も忙しく、私と姪でタイマンの形をとって食卓を囲むことになった。
一通り説明を受け、詰まりそうになったら呼んでと告げられた。もう、やるしかない。姉の準備が終わるまではなんとか凌がなくてはならない。
ご飯を食べさせること自体はそこまで難しくなかった。口の中が空っぽになったことを確認し、目の前のお皿に乗せる。そうすれば、勝手に食べてくれた。
しかし、問題は詰まりそうか否かを判断することだった。数回、共に食事をした程度では、いつもの食事がわからないのだ。
あんなに小さな口に、結構な量を詰め込んで食べる。前歯が上の歯、下の歯8本程しか生えていないのと言うのにどうやって咀嚼しているのだろうか。きちんと、がじがじしてごっくん出来ているのか心配でたまらなかった。何度も執拗に聞いてしまう。
1年半一生懸命繋がれてきた命だ。失敗は許されない。何度も何度も、口の中を確認する。ご飯をあげては確認。
1本の吊り橋の上で、風に揺られながら針の穴に糸を通すようなものだった。

姉が戻ってきた。
遅いよと時計を見る、長針がさす数字は2増えただけだった。短針を確認するが、動いたといえば動いたといえる程度しか進んでいなかった。きっと、時計の故障ではないのだろう。
精神が擦り切れるかと思った。命はこんなにも脆く、重たいのだと胸に刻まれた。

この数日の帰省で、姉が母親になっている姿をこれでもかと網膜にうつした。
姉は大人になっていた。
私はまだまだ子どもだ、親なんて程遠い。
子どもでいたい、目の中で平泳ぎしてもにこにこ笑ってもらえるような。


世界中の親御さん、本当にお疲れ様です。
そして、ありがとうございます。

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