春木晶子

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濱口竜介『寝ても覚めても』 ー流れる女を見つめる物語ー Watching the girl Flow

濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(2015)は、重心を失った人物たちが、「揺れる」ことで、それまでとは違う重心を取り戻す、「揺れ」の映画である。物語に差し挟まれる二つの震災、阪神と東日本の大震災は、「揺れ」、すなわち「足場の不安定性」という本作の主題に直結すると、三浦哲哉は言う(『ハッピーアワー論』)。 『寝ても覚めても』(2018)でも、同様のことが言える。本作は、流路を失ったヒロインが、「流れる」ことで、それまでとは違う流路を取り戻す、「流れ」の映画である。物語内に差し挟

    • 引き裂かれた女ー『ANTICHRIS♀』と『ノスタルジア』

      課題ラース・フォン・トリアー『アンチクライスト』(2009年)は、エンドロール冒頭でアンドレイ・タルコフスキーに献辞を捧げている。その理由を自由に論じなさい。(宮台真司) Chapter1:答え『アンチクライスト』(2009年)を女性蔑視と批判する声があるが、まったくの見当違いで、むしろ強烈な男性蔑視と言ってよい。ラース・フォン・トリアーは、そんな本作をアンドレイ・タルコフスキーに捧げた。トリアーは、タルコフスキーが表し続けた、「母」への畏敬を継承しつつ、タルコフスキーが果

      • 『怪物』ー「理解できない他人」ではなく、「他者の理解できなさ」を描く。

        ◾️序 火事から始まる物語 冒頭の凄まじい火事から、惹き込まれる。 街の中心で燃え盛る高層ビル、剥がれ落ちる外壁、またたくサイレンとともにあらわれる消防車から梯子がのび、人々が見つめるなか、散水がはじまる。 映画はこの火事の場面にはじまり、安藤サクラ演じる母親視点で展開したのち、また冒頭の火事に戻り永山瑛太演じる担任教師視点で展開、また火事に戻る、といった具合で繰り返される。 巨大な火事を、登場人物たちがそれぞれの視点から眺めていたことが、後に明らかとなる。 このシーン

        • チャンネル「春木晶子のムーセイオン」の終了に関する経緯および誤った情報の修正

          お世話になっているみなさまへ、お知らせいたします。 2021年9月28日より、合同会社シラス(株式会社ゲンロンのグループ企業)が運営する放送プラットフォーム「シラス」にて、チャンネル「春木晶子のムーセイオン」を運営して参りましたが、この度、一年のテナント契約期間満了に伴い、本チャンネルが終了することとなりました。2022年9月27日24:00をもって、すべての動画が見られなくなります (*1)。           なお、わたしは終了に同意や承諾をしておりません。 「シラ

        • 濱口竜介『寝ても覚めても』 ー流れる女を見つめる物語ー Watching the girl Flow

        • 引き裂かれた女ー『ANTICHRIS♀』と『ノスタルジア』

        • 『怪物』ー「理解できない他人」ではなく、「他者の理解できなさ」を描く。

        • チャンネル「春木晶子のムーセイオン」の終了に関する経緯および誤った情報の修正

          『ゴールデンカムイ』と『進撃の巨人』 ー過酷な現実を生き抜く「3」の物語 ―

           『ゴールデンカムイ』が先月末に堂々完結した。『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて2014年8月より連載スタートした本作は、明治末期の北海道・樺太(サハリン)・極東ロシアを舞台に、アイヌの少女アシㇼパと、日露戦争で「英雄」となった帰還兵の杉元佐一(通称「不死身の杉元」)を中心に、隠されたアイヌの金塊を狙う複数の集団が乱立、裏切りや騙し合いを繰り返す物語だ。     アイヌ文化や幕末明治史の細やかな知識を織り交ぜつつ、目まぐるしい転調と見応えある画面でテンポよく展開するストーリ

          『ゴールデンカムイ』と『進撃の巨人』 ー過酷な現実を生き抜く「3」の物語 ―

          札幌のおすすめ店

          【スペシャルなおすすめ5店】 ■ビストロ ル・デパー(狸小路 / ビストロ、フレンチ、ダイニングバー) 前菜もりあわせとデザートがとくによい。シェフのトークもすばらしいので、7名以上でないなら、カウンターに座っていただきたい。予約しないと入るのが難しい。 ■海鮮 酒房きばらし (東本願寺前駅 / 魚介料理・海鮮料理、居酒屋) *閉店しています。 料理はメニューから選ぶのでなく、店から勝手に提供される。予約の際に予算を伝えて内容を相談するとよい。刺身盛り合わせ、海鮮カレーが

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