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ワイナリーの完成と、私たちの新たな挑戦

こんにちは、SHINDO WINESの阪本です。
前回の投稿から半年も経ってしまいました。
遅くなりましたが、今回の記事では昨年(2023年)の動向をトピック別にお伝えしていきます。



初のテレビ出演で社内がパニック!


2023年夏、本格的な収穫が始まる前に、朝日放送テレビの情報バラエティ番組「朝だ!生です旅サラダ」にて、当ワイナリーをご紹介いただく機会に恵まれました。
しかも放送日は、視聴率が高いお盆真っ最中の8月12日です。

過去にもテレビ出演の経験はありましたので、その影響力の強さは知っていたつもりですが、今回はレベルが違いました。

放送自体は、俳優の大友花恋さんと紹介者の井上桂子さんが当ワイナリーを訪問し、私たちと一緒に試飲をする5分ほどの内容でした。

すると放送直後から、県外ナンバーを含む車がひっきりなしに当ワイナリーを訪れたり、お問い合わせの電話が複数同時にかかってくるなど、一時は社内がパニックになるほどでした。
その後も、お越しくださる方やお問い合わせの件数は減らず、放送当日は何時間も電話が鳴り続けました。
放送から1ヶ月後ですら、ワイナリーに足を運ばれる方がいらっしゃったほどです。

私たちの取り組みが多くの方に注目されていることを知り、心からの励みになりました。
しかしながらワイナリーでは直接販売を行っていないため、わざわざご足労をいただいたのに残念な思いをさせてしまったのは心が痛かったです。

この取材の様子はYouTubeに動画が上がっておりますので、よろしければぜひ御覧ください。


2023年ヴィンテージのまとめ


さて、ここからは昨年の取り組みをまとめていきます。

[良かった点]

  • 自社収穫は数日間の大雨を除き、比較的雨が少なかった

  • 巨峰の糖度が高く、順調に発酵が進んだ

  • 新たに建設したワイナリーで初仕込みを行った
    →細かな温度管理が可能になり、求める酒質に近い醸造が可能に

  • オフフレーバーの発生を抑制するためにスターター(酒母)の造り方を見直した
    →結果はso far so good!

  • 有機農法(認証は取っていない)を行った畑からブドウを収穫し、微発砲ワインを仕込んだ
    →2024年夏ごろリリース予定

  • 一緒に作業を行う仲間たちの技術力が年々上がっている

[反省すべき点]

  • 自社園地の一部のブドウがカビてしまい、収穫できなかった

  • 巨峰に足りない「酸」を補うために、グリーンハーベストと呼ばれる収穫量の制限を行ったが、香味のふくよかさを失ってしまった
    →もう少し熟すのを待つべきだった

  • 巨峰を白ワインとして仕上げると、赤ワインよりも酸度が落ちることがわかった

  • 1日の作業時間が想定外に長い日が続き、仲間たちに負担をかけてしまった

豪雨で水に浸かってしまった自社園地

このように、良かったこともそうでないこともありましたが、多くの方々の協力を得て2023年ヴィンテージの仕込みを、無事に終えることができました。

大雨の被害を回避し、無事にブドウを収穫


2023年の夏は、自社園地があるうきは市やお隣の田主丸(たのしまる)で線状降水帯が発生して、大雨による大災害が発生しました。
しかしワイナリーやブドウ畑では大きな被害には見舞われずに、無事にブドウを収穫できました。

ところがブドウ畑の裏山が大雨で崩れて、大量の粘土質の土壌が園地に流れ込み、畑の表面が粘土で覆われてしまいました。
今のところ目立ったダメージは見受けられませんが、今後に心配が残ります。

当ワイナリーでは、ワインに使う多くのブドウをうきは市や朝倉市のブドウ生産者さんから毎年、直接購入させていただいております。
2023年も素晴らしい出来栄えのブドウを譲っていただき、発酵も順調に進みました。

待望の自社ワイナリーが完成


そして、2023年で最も大きな出来事は、ついにワイナリーが完成したことです。

私たちは2021〜22年ヴィンテージまで、ウイスキー蒸溜所の一角を間借りしてワインを造っていました。

2023年ヴィンテージより、ウイスキー樽用の倉庫として使用していた建物をワイナリーとして改装しました。
専用施設となったことで、夏場の一番暑いときでも室温を20度程度まで下げてコントロールできるようになりました。
ワインの発酵時や熟成時により細かな温度調節が可能になり、酒質が向上したと実感しています。

また、ワイン造りのテクニックとして、スターターと呼ばれる酒母の造り方を見直しました。
以前の記事でも触れましたが、スターターの役割は野生酵母の数を増やすことです。

これにより、本仕込みのアルコール発酵が始まるまでの時間を短縮できます。
アルコール発酵の開始までに時間がかかると「オフフレーバー」と呼ばれる、意図しない香りの原因となる微生物が増殖してしまいます。
ゆえに、発酵開始までのスピード感が非常に重要なのです。

今回の改良では、スターター中の野生酵母の量を増やすために、日本酒などでみられる「3段仕込み」に似た仕込み方法を実践しました。
その結果「いたずら」をする微生物に増殖のスキを与えないほどのスピードで、アルコール発酵を促すことに成功しました。

ここで断っておきたいのは、オフフレーバーは一概に悪いものとは言えないことです。
逆に、少しのオフフレーバーがあることがワインに複雑さと奥行きを与えることもあります。

特に、巨峰のような食用ブドウからつくるワインでは、若干のオフフレーバーのおかげでワインが奇跡的に化けることもあります。
しかし、現段階では地元で育つブドウのポテンシャルを探るためにも、奇跡に頼らず、まずはきれいなワインを造れるように取り組んでおります。

2021年からワイン造りを始めましたが、昨年は最も発酵がうまくいったヴィンテージだったと思います。
リリースはこれからですが、ぜひ期待してお待ちください!

「巨峰の可能性」を探っていく


最後に、新作ワインをご紹介します。

昨年の11月に、2022年ヴィンテージのワイン2種を発売しました。
この年のテーマを振り返ると「巨峰の可能性を探る」が、最も適した表現かもしれません。

こちらは自社園地のピオーネ

私たちが生産者さんからいただくブドウの80%以上は巨峰ですが、そこからできるワインは1種類とは限りません。

たとえ単一品種でも、異なる仕込みをしたりブレンドを行うことで、多くの種類のワインへと造り分けることができます。
2022年は白、ロゼ、赤と3種類のワインをそれぞれ異なるメソッドで造りました。
そして、細かな違いを挙げればきりがないほど、新しい試みにチャレンジしました。

その成果として、これから紹介する2本は、巨峰の新しい一面を見せるワインに仕上がったと思います。

ASAHA ROSE 2022 Blend 4

キュートな酸が特徴的です

福岡県うきは産巨峰を100%使用。
発酵方法は、タンクの下半分に全房(枝付き)の巨峰、その上から枝を取り除いた巨峰を1:1の割合で投入しました。
このねらいは、ブドウの半分は実を潰さずに発酵を行うことで、部分的にMC(マセラシオン・カルボニック)のような環境を生み出すことです。
MCの効果としては、ブドウのフレッシュな香味を得ることができます。

21日間のマセラシオン(醸し発酵)後、バスケットプレスでゆっくりプレスを行いステンレスタンクで発酵させ、熟成を行いました。
その後、約5ヶ月の熟成を経て、同じくうきは市産巨峰100%使用の赤ワインと5:2の割合でブレンドし、瓶詰を行いました。

巨峰のジューシーでフルーティな香りが広がり、口当たりはライト。
軽やかな酸味で、ほんのりとした苦みがアクセントになっています。
ロゼですが、するする飲めます!

ASAHA RED 2022 Blend 5

ゆっくりと静かに飲みたい1本です

福岡県うきは産巨峰を100%使用。
11日間のマセラシオン後、バスケットプレスでゆっくりプレスを行いステンレスタンクで発酵させ、アンフォラで熟成しています。
総発酵期間は約1ヶ月。
約5ヶ月間のアンフォラ熟成後、同じくうきは市産巨峰100%使用の赤ワイン(マセラシオン5日間)とブレンドし、瓶詰を行いました。

巨峰のジューシーでフルーティな香りが、お口いっぱいに広がります。
赤ワインですが、透明感のあるロゼのようなライトな味わいが特徴です。

両方のワインとも野生酵母を使用し、無濾過、無清澄で、補糖、補酸も一切行っておりません。
徹底的に自然な造りにこだわった2本を、ぜひお試しください。

ネーミングに込めた想い


当ワイナリーの母体である株式会社篠崎は、江戸時代後期の約220年前から、朝倉の地で酒造りを行ってきました。
その酒造りの技術は、脈々と杜氏から蔵人へと受け継がれております。

ワインは原材料こそ違えど、同じ醸造酒。
日本酒造りの技術の多くは、同様にワイン造りにも通じます。

2022年にSHINDO WINESで使用したブドウは、全量が朝倉市の隣町であるうきは市産です。
うきは市は別名「フルーツの町」ともいわれ、一年中いろいろなフルーツが栽培されています。
特に巨峰は60年以上も前から栽培されており、全国のどこよりも早く出荷されます。

このうきは市のブドウを使い、朝倉市でワインを造っていることを商品名に込めたい。
そこで、筑後川を挟んで両市をつなぐ橋「朝羽大橋」から名前を取ることにしました。


ラベルデザインについて


ASAHAシリーズのラベルテーマは、夏の象徴「雷」です。
雷はエネルギーの源であり、活気あふれる街・福岡や、笑顔あふれる飲み手たちのエネルギッシュな姿を想起させます。

私たちもエネルギッシュにワインを造っています!

また、古来より雷は農業と密接した関係があります。
農耕民族である日本人は「雷が落ちると稲がよく育つ」と、古代から雷を神聖なものとして崇めていました。
自然の恵みに感謝し、自然と共に醸し、生きていきたい。
このような想いを込めたデザインになっております。

長くなりましたが、昨年の取り組みと新作のワインについてご紹介しました。
今後は間隔を空けずに記事を更新してまいりますので、引き続きご注目ください!

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