見出し画像

私の大好きな季節。- I -

春。私の大好きな季節に、私の大好きな人とお別れすることを決めた。

彼の言葉。

彼は年が一つ上。物静かで表情が乏しいため、少々話しかけづらい。
でも話してみると、私に足りないものを持っている人で、言葉選びがとても優しい人だった。そして、私のことを何より大切にしてくれた。

私は、どんなことでも努力すればなんとかなると思っている、頑固で生きるのが下手なタイプ。
それでいて、超が付くお人よし。
誰かが傷つくのを見逃せない。でも、自分の弱いところを他人には見せられない。
つまり、完璧主義で面倒な女である。
私だったらこんな女と付き合いたく無い。

でも彼は、そんな私を近くで支えたいと言ってくれた。

「俺が近くにいれば宵ちゃんの悩み事って全部解決できるでしょ?笑」

口数の少ない彼が照れながらもかっこつけて言ってくれたことが、とても嬉しかった。
私はそれからというもの、彼のことしか考えられなくなった。何も手につかない。
普段なら計画を立てて、
余裕を持たせながら取り組む大学のレポートも、まともにやれた記憶がない。

これが恋か。
初めてだった。
気がつくといつも窓の外には月が登っていた。

不器用な彼。

彼と付き合ってから、色んなところへ行った。
夜の井の頭公園で手を繋いでお散歩をした。
熱海へ花火を見に行った。
行ってみたかった池袋のカフェに行ってプリンを食べた。
憧れのディズニーランドにも行った。

彼は私の頭を撫でるのがお気に入り。
最初に頭を撫でてくれたとき、私が照れているのが嬉しかったらしい。
慣れないながらも手を伸ばしてくれるのが最初は恥ずかしくて、くすぐったくて、やめて欲しかった。胸がキュっとなる。

デートを重ねるごとに彼の手からぎこちなさは消えて、温もりを感じるようになった。
なんだか幸せの魔法をかけられてる気分だった。

私は性格上、常に問題に対して身を粉にして向き合っていて、辛い思いをすることが多かった。
そんな私が彼と一緒になってから、
自然と肩の力を抜けるようになった。
絶対的な味方がいることの安心感が私に心の余裕を与えてくれたのだろうか。

「これからも2人で色んな場所に行こうね」
私たちはよくそんな話をしていた。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?