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開発組織が事業のLTV最大化につなげる仕組みづくり
この記事は 開発生産性 Advent Calendar 2022 の6日目の記事です。
5日目の記事はma3tkさんの「爆速開発をしていくためのFindyの取り組み 〜2022年編〜」でした。
こんにちは。harukiです。
株式会社hokanでエンジニアリングマネージャーをしています。
今回はエンジニアリングマネージャーとして開発組織をマネジメントする中で、LTVに焦点を当てた組織開発と生産性向上の仕組みを作りLTV最大化をいかに計るのかの知見を共有したいと思います。
hokanについて
まず弊社を軽く紹介すると市場規模が50兆円と言われている保険業界でVertical SaaSを中心に事業展開しているスタートアップです。
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hokanに入ってから取り組んだこと
2021年9月にhokanに入って1人目のEMとして取り組んだことを整理してみました。
今回は以下の中からテーマもにつながる「ELTV最大化に向けた投資対効果の可視化」について中心に話します。
開発組織のカルチャーづくり
エンジニアの目標設計、評価
エンジニア採用
開発組織の生産性向上
ELTV最大化で投資対効果を可視化(直近の取り組み)
過去のインタビュー記事に取り組みが書かれているのでぜひご覧ください!
LTVにたどり着いた背景
振り返ってみると採用から制度設計まで幅広くやったのですが、ある時CTOと話してIRで提供できるような一貫した情報設計が理想という話題になりました。
確かにこれまでの開発組織でおこなった施策がどのくらい投資効果があったのかの検証や施策のビジネスへの貢献度を定量化できていないことに自分でも納得したロジックがないことに疑問が出てきました。
今後も開発組織をマネジメントする上で、エンジニア一人一人が書いたコードやアウトカムがしっかり事業に貢献しているというロジックを組み立てながら大きく検証し、学習サイクルを回しながら投資していくことでより効率良く開発組織のパフォーマンスを最大限引き出したいと考えるようになりました。
そのための指標として着目したのがLTVと採用のユニットエコノミクスです。
エンジニアのユニットエコノミクスとは
エンジニアのユニットエコノミクス =
ELTV(エンジニア生涯価値:1エンジニアあたりの月次利益×勤続月数)÷ EAC(エンジニア採用コスト:(ある期間における採用担当者の人件費+面接官の人件費+媒体利用料+エージェント手数料+ツール利用料)÷ (ある期間の新規従業員獲得数)
エンジニアのユニットエコノミクスを最適化するには基本的には
ELTVを上げる
EACを下げる
の二つにフォーカスされます。
そして方法は大まかに以下の3つに絞られます。
エンジニアあたりの月次利益を増やす
エンジニアあたりの勤続月数を伸ばす
エンジニアあたりの採用コストを減らす
1と2はELTVを大きくするために必要な方法ですが実際にELTVをどうのように大きくすればいいでしょうか?
そこでエンジニアの生涯価値であるELTVを測定することで今の開発組織の課題や施策の優先度をhokanではどのように決めているかを、解説していきます。
ELVTとは何か、どのように測定され、どのように活用していくかを理解することで、データに基づく根拠を持って施策を評価したり投資を行うことが出来ると考えてます。
こちらは一般的なEmploye lifecycleの図です。
採用直後の成果は、チームに貢献するためにはまだ発生していませんので「0」になります。
さらに入社後のオンボーディングのため、部門のリソースを消費しているため、アウトプットはマイナスからのスタートとしています。
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それではELTVを増加させるためにはどうすれば良いのか?
下の図からも見て分かるように入社直後からオンボーディング期間を短縮し、早期にアウトプットが出せる状態になりパフォーマンスを向上させ続けることで理論的にはELTV、つまり一般的に従業員が稼ぎ出す生涯価値は大きくなると言われます。
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hokanの開発組織にELTVのグラフを適用
hokanの場合のイメージ
ELTV:グラフの面積
横軸:在籍月数
縦軸:アウトプット量(ベロシティ)
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ここまでから分かるように基本的にはELTVを増加させるためには、
採用後に成果を出すまでの立ち上がりの期間を短縮
時間の経過とともに、到達できるチームと個々のパフォーマンス、生産性の最大値を上げる
採用~退職までの期間を長くする
ことが重要だと言えます。(言われてみればそうなんですけどね)
具体的にどう立ち上がりの期間を短縮するのか
開発組織で考えると単にオンボーディングだけでなく、開発者体験の向上もエンジニアの立ち上がりをスムーズにするために重要になってきます。
オンボーディング、教育体制、アサイン、技術的負債の削減、開発者体験、アーキテクチャの綺麗さ、テストカバレッジ
そのためhokanでは常に技術的負債の削減や開発者体験の向上を意識するように技術方針や開発方針を考えています。
さらに入社後に各チームのスキルを定量化し、より個々のスキルからチームのスキル向上を意識するようにスキルマトリクスを作成してもらいました。
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※一部抜粋してますが、他のチームはもう少し簡易的なものだったりします。
時間の経過とともに、到達できるチームと個々のパフォーマンス、生産性の最大値を上げる
生産性を向上させるためにFour keysを意識しモニタリングできるように整備しました。
Findy Team+の導入もですが、インシデントレポートによるインシデントスコア管理をすることで品質と生産性の両輪を常に向上させる組織になってきたと思います。
定量化、コミュニケーション設計、権限設計、開発しやすい環境
Findy Team+, DX criteria
改善サイクル、学習サイクル
スクラム、心理的安全性・サーバントリーダー
共感、自走チーム
パーパスドリブン・オーセンティックリーダー、内的動機付け・シェアドリーダー
OKR
これら1から3が成立して初めてOKRがより効果的に目標設定になると考えています。
Findy Team+やインシデントレポートを使ったモニタリングや目標設定、改善なども述べたいのですが、ボリュームが増えすぎるため別途書きたいと思います。
採用~退職までの期間を長くする
こちらに関してはまだまだ取り組んでいる最中ですが、1on1では今期からコンピテンシー評価を初めて見ました。
これまでの定量的な評価から、定性的な評価も全チームが取り組めるような体制を整えつつあります。
経営陣の成長・強化、マネジメントレイヤーの成長・強化、企業文化のアップデート
1on1、キャリアラダー、制度設計、働く環境
キャリアアップ、昇給
MVV
まとめ
開発組織のマネジメント方法や生産向上のメトリクスなどのノウハウは一般化されてきていますが、結局それらは何のためにやるのか、そして開発組織のアウトカムは事業の「何」にインパクトを与えるのかを一貫して考えた結果たどり着いたのがELTVでした。
開発組織のオンボーディングプロセスの改善や生産性の定量化(Four keysなど)、1on1などの取り組みは基本的にはELTV、ひいては事業の売上にしっかり繋がっているというロジックを組み立てることで開発組織のマネジメントの優先度やエンジニア採用の打ち手などがより言語化できたと思います。
今後はこれらの仕組みからユニットエコノミクスをモニタリングし、いかに効率よく開発組織の生産性を最大限発揮できるか考えていきたいと思います。
hokanではチームの生産性やユーザの課題解決に取り組む仲間を募集しています。
そしてそれができる環境が整っています!
ぜひ一緒に働きましょう!