俺が俺の人生にいちばん求めてるもの
俺が元カノの面影の中に見るものは何か。
元カノって影を通して、俺が怯えていることはなんなのか。
それはきっと、何者にもなれなかった俺だろう。
名の知れた大きな企業に入ること、そしてある程度大きな金を稼ぐこと。
それが叶わなかった時。
俺が社会的に、何者にもなれなかった時。
誰も俺を相手にしてくれる人はいないんじゃないか。
俺に金がなければ、俺の相手をしてくれる女の子なんていないんじゃないか。
国立医学部に行ってる元カノが、時折悪夢として立ち現れてくるのは、彼女が悪いからではなくて、俺が怯えていることをある種象徴する立場に彼女がたまたま立ってるからだろう。
社会的名誉や、金。
そういうものを、もし俺が得られなかったら。
社会的に、何者になることも叶わなかったら俺は。
それに絶望して、怯えてるんだろう。
酷いもんだな。
醜いもんだ。
まるっきり機能の思考じゃねえか。
役に立つからお互い一緒にいる。
役に立たないなら切り捨てる。
合理的な、冷徹な、俺が1番離れたかった考え方だろ。
俺がかつて1番没頭して、執着して、そしてそこから離れたいって願ったもんだろう。
まだ離れられてなかったか。
切実な恐怖を俺にもたらすくらいには。
だけどさ、やっぱそこから俺は離れたい。
だからまず、認めよう。
その通りだってことを。
金がないと、きっとほとんどの女の子は相手にしてくれない。
それはそうだろう。
綺麗な家に住みたいし、可愛い服も欲しいし、美味しいものも食べたいだろう。
女の子を幸せにするために、一定のお金は要るだろう。
認めようぜ。
何者にもなれなかったら、そこそこキツイさ、きっと。
だけど、それで仕舞いか?
違うだろ、1番根本的なことを思いだせ。
もし金がないとモテないなら、そして逆に、もし金がありさえすればモテるなら。
金があることが、モテるかモテないかを決定付ける唯一最大の観点であるなら。
それは、モテてんのは俺じゃなくて、俺の手元にたまたま存在する金だろ。
そんな薄っぺらい、便利な誤魔化しで満足したいわけじゃねえだろ。
キャバクラに行くおっさんじゃないんだからさ。
俺が求めてんのは、似てるけど全然違うものだろ。
金は必要だよ。
女の子を幸せにするのに、金は必要だ。
だけど、それは、一つでしかない。
金がなくて、女の子にあんまり贅沢させてあげられなくても、それでも、女の子を幸せにすることはできるんじゃないのか。
俺が金も地位もない人間になって、社会的に何者でなかったとして、それに絶望すんのは、社会的な地位に俺がべったり依存してるってことじゃないのか。
俺が俺っていう人間に自信が無くて、だから代わりに社会的価値に頼ろうとしてるんじゃねえのか。
そんな、甘えて生きようとしてんじゃねえよ。
そうじゃねえだろ。
社会的に地位があれば、金とかポジションがあれば、それで女の子が幸せになるのか?
俺は親の何を見てきたんだよ。
そうじゃねえだろ。
確かに、社会的価値がないと女の子はほとんど相手してくれない、ってのは、結構事実だろう。
だけど、だからって、社会的価値がないと絶望するしかない、なんて、俺は悲しいよ。
俺は本当に、俺自身の価値を信じられなくて、目に見えるものにそんなにも縋りたいんだなって。
だから、やめよう。
そうやって、目に見えるものに縋れば縋るほど、視野が狭くなって、他の大事なもんを見落とす。
俺は、俺が何者じゃなかったとしても、俺を愛してくれる人を求めてる。
そして、そういう女の子が、世界のどっかにはいるはずだ。
要は、社会的な財産に対する関心が薄い子。
もっと言えば、人を機能で判断しない子。
そして、そういう子を捕まえるには、俺自身が変わらなきゃいけない。
俺自身が、人に機能を求めてたら話にならない。
可愛いとか、金持ちとか、そういうことで女の子を見てたら、話にならない。
結局、俺にとって大事なことは何だろう?
優しいこと。
そしてそういう子と積み重ねる関係。
喧嘩して、仲直りして、関係を強くして、そうやって関係と時間を積み重ねていくこと。
それが俺の1番の財産というか、大切なものなんじゃないのか。
その通りだよな。
金とか名誉とかは、その後ろでしか無い。
優しいことと、時間の積み重ねからくる関係。
それが俺が1番求めてるもんだよな。
波風立たない関係じゃなくて、お互いに怒って、傷付いて、離れそうになって、それでも話して、なんとかわかり合って、お互いに少しだけ前よりも近づけたって嬉しくなって、そんなことを繰り返して。
そうして作られてく関係があれば、それで俺は良くないか?
金があるから、可愛いから一緒にいますって、そんなに表面的で寂しいもんはないと思わないか?
優しいこと、話し合えること。
そういうことの方が、ずっと大事じゃないか?
そうやって二人で作ってく関係が、俺にとって何より重要じゃないか?
そうだよな。
それが俺のいちばんの大切なもんだろ。
金がなくても、それがあればいいと思える。
そうだな。
機能は大事だけど、社会的価値は大事だけど、そこに頼ってちゃダメだ。
そうだろ?
金があったらモテる?違う、モテてんのは俺じゃなくて、俺の手元にある金だ。
社会的地位があれば女の子を幸せにできる?違う、女の子を幸せにすんのは、それじゃない。
俺は実例をすぐ近くで見て来ただろ。
金とか地位とか、そういう合理的な機能ってのは、優先順位の1番には来ない。
お互いに優しく、エネルギーをかけ合って、死ぬまで相手を知ろうとすること。
喧嘩して、傷付いて、離れたくなって、それでも話し合って、それでようやく前よりちょっぴり相手のことがわかって、相手の心に近づけたって嬉しくなる。
そんな小さな前進を楽しんで、仲良くできる日は一緒に笑って。
そうやって2人で死ぬまで作ってく関係が、俺のいちばん大切なもんだと思わないか。
そう感じるだろう。
切に。
笑ったり、怒ったり、傷付いたり、離れたくなったり、話し合ったり、ちょっと相手の心に近付いたり。
そうやって、お互いの心にできる限り近付いて行く、どっちかが死ぬまで続くその過程が、関係が、俺の唯一の勝ち目だと思わないか。
俺が俺の人生を終える時に、勝った、って言えるための、唯一の勝ち目。
優しいこと、粘り強いこと、相手を知ろうとすること、自分の言いたいことを素直に言うこと。
大事なことはたくさんあって、どれがいちばん大事な要素ってなかなか言えないな。
もっと経験したら、言えるようになるのかも知れない。
ただ、俺にとって何がいちばん大事かって考えて、見直してみて、なかなか俺も捨て難いというか、悪くないなと思う。
色々ありつつも、相手を知ることで築く関係が俺にとって大切なんだ、って。
それを知らない時期もあったし、そこから離れた時期もあった。
上手くできないことも多かったし、今でも多い。
もっとこうしてくれ、って怒られたり、なんでそんな言い方するんだ、って怒ったり。
喧嘩するし、傷付け合うこともたくさんある。
元カノともそうだったし、今の相手とも喧嘩はたくさんしてる。
でもそうやってる中で思うのは、やっぱ今書いたようなことなんだよな。
喧嘩して、仲直りして、それで相手の心に少し近付けたなって。
相手はこんなこと考えてて、だからこんな言い方でこんなこと言って来たんだなって。
そうやって、相手の理解が一歩進んだなと感じる時、あるいは、相手が俺のことを理解してくれたなと思う時、どっちかっていうと、こっちが理解できた時の方が強いけど、結構嬉しいんだよな。
はっきり文章にしたのは今日が初めてだけど、結局俺は俺の大事なもんに向かって、これまでも色々試行錯誤してきたし、それはこれからも続けるんだろう。
だから、俺も捨てたもんじゃないなと思うんだ。
金とか社会的地位とか大事だよ。
だけど、俺にとって本当に大事なもんを思い出せ。
そしたらそれらは劣後する。
相手への理解を深めること。
俺が女の子に求めるのは、金とか顔じゃなくて、優しいこと。
だって俺が欲しいのは、お互いに相手を理解することに尽した、って言える一生だから。
お互いの心にできる限り近付いて行く、どっちかが死ぬまで続くその過程が、関係が、俺の人生で唯一の勝ち目だから。