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脳科学の研究技術トレンド

こんにちは。大学院生のH2です。
今回は現在の脳科学の研究技術トレンドについて解説します。

この記事でわかること
・脳科学の研究について
・主流な研究手法について

まず、脳科学は人の脳について臨床を通して調べるものと、マウスやラットなどのモデル動物を用いて調べるものに大きく分かれます。筆者は後者の研究を行っています。

まず、臨床側の研究方法は昔から変わっておらず、頭にBMI(ブレインマシンインターフェース)を装着して、被験者の脳波を計測する方法です。こちらは、技術の進歩によってデータの処理量が増えたこと、ディープラーニングを用いた脳波からの行動推定が進んできています。ですので、今後は特定の脳波が測定できたら歩く、腕を曲げるといった機械と人を繋げることを目標に研究が進んでいきます。

一方、動物レベルでは遺伝子組み換え技術の進歩によって、オプトジェネティクス(光遺伝学)を用いた神経回路の同定、機能への単離がトレンドになっています。

オプトジェネティクスは簡単に言うと、遺伝子組み換えした特定の物体を光で刺激して操作する方法です。脳科学では、この物体が神経細胞になります。神経細胞を刺激することで、特定の状態になるかどうかを調べます。例えば、鬱病モデルマウスの特定の脳領域を刺激すると元気になるか調べます。この時、光照射を用いて脳領域を限定します。そして、光照射したときに、マウスが元気になれば、この脳領域は鬱病に関わる領域だ‼ と考えられます。

では、なぜオプトジェネティクスがトレンドなのかを解説していきます。

オプト以前は頭に電極を挿入して、神経細胞によって生じる電気活動(スパイクやシナプス後電位)を測定する方法、電極ではなくカニューレを通して脳血中に含まれる神経伝達物質を回収する方法等がとられてきました。また、カニューレから神経細胞の活動を変化させる物質(アゴニストやアンタゴニスト)を投与して操作する方法と併用されることもありました。

それぞれの方法にメリット・デメリットがあります。

電極を用いた電気記録
メリット:時間分解能が高い
デメリット:空間分解能が低い、神経細胞の特定は経験則から

カニューレを用いた神経伝達物質の回収(マイクロダイアリス)
メリット:どんな物質を産生する神経細胞か特定てきる
デメリット:時間分解能と空間分解能が低い

カニューレを用いた薬剤投与
メリット:神経細胞の種類が限定される
神経活動を0、1、n倍で見れる

デメリット:時間分解能は低い
空間分解能は低い

と言うように比較できます。

では、オプトジェネティクスはどうかというと、上記の各方法のメリットを併せ持った技術になります。時間分解能は電気記録といい勝負をしています。空間分解能は全ての技術に対して圧勝です。遺伝子発現の段階で神経細胞の種類を限定できます。

なので、現在の研究者はこぞってオプトジェネティクスを用いて研究をしています。今後の多くの場面でオプトジェネティクスを用いた論文をみることになるでしょう。

今回は以上になります。脳科学のトピックに関してはまた別の機会に取り上げたいと考えています。

ご質問、ご指摘ありましたらコメントお願いします。

読んでいただき、ありがとうございました。


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