ソーシャルデザイン紹介 Vol.1
どうも、鶏肉とターキーの違いが分からずにターキーで照り焼きを作った高倉です。一人暮らし初心者の僕には、少し難題すぎましたね。
おかげ様で大量の骨つき、筋肉だらけの照り焼きが出来上がりました!!
到着3日目にして、一人クリスマス料理を楽しみました。
ソーシャルデザインとはなんぞや
そんなことはさておいて、今回はソーシャルデザインの紹介第一弾。
ということで、まずは簡単にソーシャルデザインとは?ということからですね。
ソーシャルデザインとはズバリ、、、『社会を良くするデザイン』という意味なんです!!!
ものすごくシンプルです、範囲は広すぎて困りますが。
ナニゴトモカタカナニスルトムズカシクカンジルヨネ。
Superkilen Park
で、今回第一弾として紹介したいのがデンマーク、コペンハーゲン市の「Superkilen Park」というプロジェクト。
写真左下に見える赤い部分から、地図・斜め左上の方向にかけて赤、黒、緑の3つのエリアから構成されています。
コペンハーゲン市内のノアブロ地区に2012年6月に完成した全長約750m、総面積約3万m2。
公園は三つの区画に分かれており、赤(スポーツとアクティビティ)黒(交流)緑(住民の庭)というそれぞれのコンセプトをもつ。
(公園をたてに貫くウェーブ状の通路は、赤黒緑と分けられた地面によってどっちが入り口でどっちが出口かをわかりやすいようにデザインされてる。)
黒のコンクリートに白のウェーブが描かれていたり、地面が赤の系統色に染められていたり、住宅街の中に緑が感じられる場所を作っていたり、、、
そう、綺麗でユニークな公園なんです。
ただ、このプロジェクト「きれ〜い」「ユニーク〜」で終わらせるにはもったいなすぎるんです。
なんてったって、これからの社会的問題を解決するためのヒントが詰まっているんですから、この公園。
公園が建てられた背景
Superkilen Parkが位置するノアブロ地区は、写真にもある通り集合住宅が立ち並ぶ地域。これら集合住宅は、物価の高いデンマークでも比較的安価なため異なる国籍の移民が集まりやすい地区でした。そもそも北欧諸国は移民を積極的に受け入れてきた経緯があって、ここノアブロ地区にもヨーロッパをはじめアジア、中東などからの多くの移民が居住しています。
そしてこの地区に起こった問題が、文化の違い、住民同士のコミュニケーション不足、生活様式の違いなどが原因による些細なトラブルや犯罪。最悪のケースでは、スラム化するリスクまでも抱えたノアブロ地区の改善を図るために、コペンハーゲン市のプロジェクトとしてこのSuperkilen Parkが作られることになりました。
設立までの経緯と背景
コペンハーゲン市は、同地区にあった国鉄の車庫跡地を公園に作り変えることに。そこでデンマークの入札システム(コンペ)を開催し、BIG(Bjarke Ingels Group)、Superflex(アーティストユニット)、Topotek1(ベルリンの都市デザイン事務所)、Lemming & Eriksson(建設コンサルティング)のコラボレーション事業として開始することが決定。
このBIG、今話題のTOYOTA 『Woven City』に携わっている建築界では言わずと知れた存在。よく見るとSuperkilenの黒のエリアに描かれている白いウェーブは、Woven cityのそれと良く似ています。
https://www.youtube.com/watch?v=NME7pGh-7rk
(Toyota woven city)
BIGのウェブサイトがこれまた面白くて、建築好き、変わったもの好きだとかSF好きな人はずっとこのサイトを眺めていられると思うので貼っときますね。
https://big.dk/#projects
寄り道をしたので、ここまでを軽くまとめると
多国籍の移民からなるノアブロ地区には、スラム化の可能性さえある状況。
同地区の課題
・治安の改善
要因
・民族の多様性による文化の違い
・近隣住民同士のコミュニケーション不足
現代社会における最大の敵「複雑性」がふんだんに組み込まれたこの課題。一体どのようにこの課題解決を進めたのか。
プロジェクトはどう進められた?
名の知れた企業によるコラボレーティング事業。さぞかし、彼らの経験や知見を詰め込んだ案を出してくるだろうと想像した皆さん(別にしてない、うるさい)違ったんです。
彼らが最初に行ったのは、住民へのヒアリング。
今回の課題の要因でもある多様な国籍の人々にヒアリングをしたんです。なんだか、クラスで揉め事があった時の「理由はお前たちが一番わかるだろ、自分たちで考えなさい」って言ってる先生みたいですね。笑
(ごめんなさい。黙ります)
そうここで大事なのは、実際に使うユーザーが中心となってプロジェクトに参画している点。誰も、約60カ国もの国の人々をまとめた経験なんかないんです。じゃあ、これから公園ユーザーになる彼らそれぞれの声を聞かないと何もわからないよね、ってことでヒアリングからスタートしていきます。この考え方、インクルーシブデザインと呼ばれていて、
「高齢者や障がいのある人など、特別なニーズを抱えるユーザが、新しいもの・ことを考えるデザインプロセスに参加することで、新しい価値を生み出そうとするデザイン」(NPO法人 Collable公式ホームページ)
と定義されていますが、あらゆる人を考慮に入れた上で行うデザインのこと。つまり、高齢者や障がいのある人だけでなく、情報社会への移行で存在がより知られるようになったマイノリティの方々など、あらゆる全ての人間を含んだ包括的なデザインのことです。
今回のスーパーキーレンの例だと、企業や政府側が一方的に事業を進めるのではなく、当事者が主体、もしくは一部となってプロジェクトを進めることで本当の課題解決方法が見えてくるって感じです。
このインクルーシブデザインを学ぶという目的も、僕がデンマークを渡航先に決めた大きな要因です。
住民へのヒアリング
周辺地区の様々な国籍の住民へのヒアリング。
→治安の悪化をもたらしている民族の多様性を逆に活かしたデザインを目指す。
ヒアリングの工夫
地域の新聞に広告を出したり、学校に出向いたり、ダンスを楽しむために老人が集まる公民館に行くなどして、住民それぞれの出身国の『記憶』を聞き出す
すると、ヒアリングをしていく中でスーパーキーレンに持ち帰りたい祖国のオブジェクトやアイデアがあるという3つの若者のグループと2つの老人のグループを発見。そして〜、実際に彼らの祖国まで付いて行ってそのオブジェクトやアイデアを見にいっちゃうんです。フッ軽とはまさにこのこと。
当事者にとことん寄り添うこの姿勢こそが、今の公園の雰囲気を作り出しているのでしょう。
最終的な解決策
住民目線で考えた時に多様性が一番大切だと思った。それぞれのニーズがあり、それぞれのストーリーがある(プロジェクト実施者の声)Youtubeより
多様性を無理にまとめるのではなく、うまく活用する。
結果、公園のユーザーの声をもとに60か国からの合計121点の都市の家具、木、植物を公園に取り入れることに。トルコのベンチ、イギリスのゴミ箱、日本の桜の木、アメリカのフィットネスツール、モロッコの噴水など。
それぞれの住民が自分の故郷の記憶を辿れる、それと同時に他国の人々と文化を通して自然とコミュニケーションを取れるという工夫を作り出しました。
(日本のタコをモチーフにした滑り台)
(その他のオブジェクト等の説明、どこの国のものか)
この公園は、世界中の遊具を集めた公園との評判が広まり地元住民のみならず他の地域からも人が訪れる観光スポットとなった。当地区に人が集まったおかげで、飲食店なども増え地域再生も果たしたとのこと。
公園設立後も様々な国の文化を体験できるイベントが定期的に開かれて、周辺コミュニティの活性化、信頼感構築を行っていました。
まさに大成功ですよね。
では、これからの社会的問題を解決するためのヒントは一体なんだったのかというと、、、
勝手な考察と複雑化する社会の課題を解決するには?
これは、これまでの規範を打ち壊すプロジェクト。
これだけの多様性を取り込んだ場所では、批判も起こりうる。
例えば、赤色に埋め尽くされたエリアを見るだけで、コミュニズムやロシアその他不快に感じるものを連想してしまう、などの批判もあった。
しかし、それは単なるその色に対するその人の偏見である。
→思い込みを極限まで減らして全ての人にフラットな考えで物事を作り上げていく創造性が大事。
(プロジェクト実行者の言葉 Youtubeより)
そらそうですよね。誰も取り組んだこともない、ましてや正解なんて存在しないそんな問題を解決するってプロジェクトなんだから。
でも、そういった課題こそが複雑化した現代社会で起きている、そしてこれからも起きていくと思っている。
今回のスーパーキーレン公園の事例は、公園のユーザー、当事者目線でプロジェクトを進めるというインクルーシブデザインの大成功例としてあげられると思う。中には、上の四角内みたいな批判もあったみたい。でもそれが今生きている複雑化した、しすぎた社会なんだと思う。 ただ、批判があるからダメなんじゃなくて、批判を最大限減らすための工夫、そしてできるだけ多くの人を考慮するという最大限の努力と工夫がこれからの問題解決には必要とされる事は忘れてはいけない(それが一番難しいんやけど)
というわけで、僕がこれからの社会的問題を解決するためのヒントだと思った点はこのユーザーや当事者が中心となって行われるデザイン思考。いつだって、本質的な問い・解決法はユーザ・当事者の中にあって、それを課題解決に取り組む立場の人がうまく抽出してアウトプットまで責任を持ってやり遂げる。当たり前のようで、忘れてしまいがちなこのユーザ中心の思考をうまく活かせるような場作り、アイデアについて今後は勉強していきたいと思う。
このSuperkilen Parkの事例は、まさに上記のユーザ中心デザインを体現している最高のソーシャルデザインだと思ったので今回記事にしてみました!
もし興味があったら、これより公園自体に詳しい記事は調べるとたくさん出てきます(笑)
僕が、この事例研究を通して伝えたかったのは「当事者目線」を用いたインクルーシブデザインの可能性。今回の多様性という課題は、人種だけじゃなくて他の分野、事象にも含まれる考慮しなければいけない部分。そのヒントが垣間見えたプロジェクトだったな〜というお話でした。
真面目すぎて疲れたから、次は楽しい想い出話にしよ〜っと^へ^
その他の情報
パレスチナ地区の土壌
先ほど述べたグループのうちの一つは、パレスチナ地区から移民としてデンマークに来た二人の女の子。彼女らは、祖国に帰る機会があるたびに少しずつパレスチナ地区の土をデンマークに持って帰ってきていた。
それを聞いたプロジェクト実施者は、パレスチナ地区の中でも実際に彼女らの祖母が住んでいた地区に出向き土をデンマークに持ち帰った。