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『ハッピーアワー』

カールスバーグ(Carlsberg)は、デンマークで生まれたビールだ。サッパリとした味と喉越しの良さが特徴で、日本のビールとよく似ている。

このカールスバーグを求めて、足早にコペンハーゲン大学のミーティングルームから飛び出すものがいる。そいつは大のビール好きだが、酒に弱いらしい。いつもハッピーアワーで安くビールを飲んでは、顔を真っ赤にしている。

ハッピーアワーとは、基本的に19時くらいまでお酒を安く提供してくれる時間のことで、そいつはこの時間に間に合うよう、そそくさと足早に移動する。

コペンハーゲンの都心部から少し離れたゲストハウスの一階には、そいつお気に入りのカフェ&バーがある。理由は、そこのハッピーアワーが少し特殊だからだ。

よくあるハッピーアワーでは、ドリンク一杯の値段が安くなり、お得に一杯の酒が飲める。しかし、このゲストハウスの一階では一杯の値段で二杯のビールが出てくる。たしかに、一杯の値段は安くなっているのだが、必ず二杯、タプタプに注がれたカールスバーグがカウンターから出される。それも大きなグラスで。

本来なら、酒好きで特にビール好きなそいつは喜ぶはずのシチュエーション。

でも、そいつは酒に弱い。

一口飲んで、一杯の半分を飲み、顔を赤らめる。いっぱいを飲み干した頃には、首も赤くなり、カーッと体が熱を帯びる。横を通りかかるお兄さんは、笑顔でグッドサイン。酒を飲み、全身に通常の2倍量血液が流れているそいつは、普段の2倍の反射神経でグッドサインを送り返す。

そして、二杯のカールスバーグを飲み干す頃には、すっかり全身赤らめたそいつが気持ちよさそうにゲップをする。一日で最も大切な時間を終え、北欧のどこか意地悪な冷たい風にポカポカの体温を奪われながら、家路に着く。

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