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あてもないとまり木⑤ ・・・須磨寺月見の歌会

須磨寺で、秋に月見の歌会があると聞いたのは夏。
情報は2人の人からだった。

関西に住む人と関東に住む人。
その2人はお互いを知らないはずなので、まさかおなじ話だと思わず、
中秋の名月の時期は、いろいろなところで歌会をしてるのか〜
くらいに思っていた。

でも日程が近づいて改めてお知らせを読むと、
おなじ須磨寺での歌会と分かった。

夜だし、翌日は学校。無理なく行けたら行こうと思っていた。

夜のお寺なので、娘次第かなと考えていた。
岡山から家に帰って、明日は歌会があるんだけどと話をした。

今年のお正月
百人一首をしたことがきっかけで、和歌に興味を持った娘が想像以上に喜んだ。

普段、私たちはあまり黒い服を着ない。
この日は、黒っぽい服でと書き添えてあったので、
家で準備している時から、いつもとは違う私たちになったような、
少し時空の違う場に出かけるような気持ちになった。

17時半から20時までは長丁場かなと考えて、18時半頃到着するように出掛けて行った。
山門に係りの方がいて、説明してくれた。
和歌は詠まなくても詠んでもどちらでもいいと言われて、娘が
「まま わたしは詠まない」と言ったので
『分かった。 ままは詠むよ。』と答えてから くるくる考え始めた。

行燈に足元を照らされて

歌会の会場になっている境内は月明かりと要所要所にある行燈の薄灯りで
なんとなく人の影は分かるけれど顔までは分からない明るさだった。
この中に、知っている人が何人かはいるはずだった。
でも分からない。

おなじ日の おなじ時に
おなじお寺の境内 おなじ月明かりの下
いるのに 会えない

これが普通だったんだ。

いるかもしれない
いないかもしれない
気づくかもしれない
気づかないかもしれない
見えるかもしれない
見えないかもしれない

会える=気づきあうことの重みを想う夜だった
一期一会

和歌を書く場は 人の気配がぐるりと取り巻く真ん中で
敷物の上に筆と半紙が置かれていた。

頭の中で考えた和歌を娘に言って、助詞を迷ってるんだけど
「に」がいいか
「や」がいいか
「で」がいいか
「よ」がいいか
どれがいいかなと相談した。
これがいいあれがいいと2人で随分悩んで「に」にした。

2人で考えたから一緒に座ろうと
敷物に娘と並んで座って
行燈の灯りで、よく見えない中で文字を書いた。

半紙を横に置いて縦書きで筆を動かして
最後の一文字を なんとなく大きく書いて終えると

「まま すご〜い」と本当にすごいと思ってる声で娘に言われた。
文字は雑だったんだけど
こんなふうに2人で味わえることはとても嬉しかった。

笛を吹いているのは あっこさん(ポーポーで一緒に活動している笛奏者)

境内の落ち着く場所を見つけて2人で座って月を眺めて
場を味わいながら 読みあげられる和歌を聴いていた。

「まま 2人の歌が詠まれたら録音してね」と娘が一生懸命聞いていた。
いくつかの歌が読まれた後
しばらくすると音を奏でいた方々が建物に入っていき
行燈を持った人が並んで山門へ歩いて行った。

これで終わりますと
アナウンスはない。
静かに場が変化していった。

終わりなのかな?
他の人たちはみんなどうするのかな?

いいか。
みんなは。
私たちは帰ろう。

立ち上がって山門に進んだ。

すべてが途切れず境界がなくじわりじわりと変化していくようだった。
言葉でカタチ作られない。

とても豊かな気持ちで家に帰った。

「まま 歌詠まれなかったね」
うんうん。
でも2人で作れてうれしかったよ。
「うんうん」

今、月見の歌会を検索していたら、この投稿を見つけた

そうしたら
私たちの歌が載っていた。

明日の朝娘が起きてきたら、見せてあげよう。

運動会後の代休含めた3連休。
先祖を思う旅人になった。

後日、歌会のときに、わたしたちの歌が詠まれていたよと教えてもらった。
「自分たちの歌だって気がつかないほど素敵なメロディだったね」
と2人で笑った。


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10月31日(木)  11月1日(金)  こずみっくで連続でライブします





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