旅ガチャ
カプセルトイの流行りはいつごろからあったのだろう。
小銭を入れてレバーを回すと
何が入っているかわからないカプセルが出てくる。
昔は子供が楽しむだけのものだったけれど、
今は駅ナカ、商業施設、映画館、コンビニ、
本当にどこにいても人がいるし、大人たちも楽しんでいる。
専門店も出来ているし、
いまや誰もが楽しめるエンターテイメントの一つだ。
私たちは新しいウイルスで「旅行」という楽しみを失った。
一年どころか、長い人は二年近く旅行に行ってないという人も
多いだろう。
私自身も頻繁に新幹線や飛行機にのっていたのが嘘のように、
一年以上もうどちらにも乗っていない。
しかしようやくこうした流れも変わり緊急事態宣言があけ、
世間が少しずつ旅行へ行こうという流れが高まっている。
そんななか注目されている商品。
peach航空が発売している旅くじである。
いわゆるカプセルトイの形状をしているこちらのくじには
カプセルを開けると行先が書かれた紙が入っており、
通常よりお得に旅を楽しめるというものだ。
もちろんくじなので、行先はどこがかいてるのかわからない。
現在は東京と大阪に設置してある旅くじ。
5000円で一回という、カプセル型くじとしては
かなり高い値段で設定されていながら、
列が出来るほどの大人気の商品だという。
テレビの報道で何度か見たが、
遠くからわざわざ引きにくる方や、
親へのプレゼント、友達への旅行等、
皆様々な想いでくじを引いているようである。
インタビューでこんな風に答えている子たちがいた。
卒業旅行の場所が決まらないから、引きにきた。と。
どこに行きたいが決まらないから運を天に任せて
くじで決めようと思ったらしい。
二人で来てた子たちはとても楽しそうにくじをひいていた。
しかもこの二人、本当に可愛くて、
奄美大島をパッと見て熱海と間違えてしまい、
最初熱海だー!と喜んではしゃでいたのだ。
後から奄美大島だと気づき、また笑いあう二人。
その放送を見ながら、面白いと思った。
私の中で、旅というのは
「目的の土地」があるからこそ出るものだと思っていた。
〇〇が見たい、××を食べてみたい、△△に行ってみたい。
だからこそ~~へ行く。といった形で行先を決めていたのである。
勿論あてのない旅というものの存在も知ってはいるが
それは長い期間をかけて行うもののイメージ。
カプセルトイを引きに来た子たちはそうではない。
恐らく一週間弱くらいの短い日数、近しい友達と一緒に過ごす、
それが目的で旅に出るというのである。
熱海だと思って喜び、奄美だと思ってまた笑いあう。
場所は彼女たちにとって本当にどこでもいいのだろう。
自分が考えていた旅の在り方とだいぶ違った。
友達と過ごすのが目的なだけなら、
旅に出なくてもいい気がするけれど
きっとそういうことでもない。
一緒に旅をする。
旅に出るということはそれだけで高揚感のある行動なのだろう。
カプセルトイもなんとなく似ていると思う。
勿論中に入ってるものを目的に回す部分もあるけれど、
お金を入れて何が出てくるかわからないくじ
その高揚感を楽しんでいる部分はかなり大きい。
あける瞬間のわくわく感は他では得難いものがある。
多くの人にとって、
楽しさが奪われる日々が続いた。
peach航空が発売したこの商品は
この鬱屈とした毎日を終わらせてくれる旅と
カプセルトイをかけ合わせることで
楽しさを何倍にもしてくれる。
ずっと「楽しみ」の我慢を強いられていた世間にとって
ぴったりの商品だったんだろう