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イギリス合板家具メーカーISOKON工房を訪ねて〜ブリティッシュ・モダニズム

London Design Festival 2024 の一環として、先日、ロンドン東部のWalthamstowにある、William Morris Design Line がこの地域に連なる工房やワークショップを一般公開しました。

私がまず訪れたのはイギリスの合板家具メーカー、ISOKON の工房。

ISOKON 工房の展示。「飲んだり、読んだりするための家具」という声が聞こえてきた。

正直、訪れるまでは ISOKON というブランドについては何一つ知りませんでした。でも、工房を後にする頃には、「いつか私も我が家に置きたい!」と思えるほど、偶然「素敵なものに出会えてしまった」経験をした気がします。ISOKON 家具、工房の様子と、歴史について少しまとめました。


ISOKON の家具とブリティッシュ・モダニズム

工房に入ると、 ISOKON 家具の展示が。
きっとどこかで見たことあると思うような、
アイコニックな作品が並べられている。

軽くて、シンプル。
なのに曲線は美しく、しなやか!
その空間で圧倒的な存在感を放つ。

ISOKON 工房の展示

タイムレスなデザインは、本当にいつの時代もモダン。
サステナブルの極み、そう改めて思った。

そして、ISOKON は 1930年代のブリティッシュ・モダニズムのパイオニア的存在だったそう。そして当時からのデザインをそのまま今も作っているそう。やっぱり、「この頃のモダニズムが好き」と改めて思う。

ISOKON 工房見学

うろうろしていると、スタッフの方から、「今から見学ツアーが始まるよ」と誘われたので、ついていった。

ISOKON 工房

工房は意外とコンパクトな大きさ。使用しているレーザーカッターや、ヴァキュームマシーンを見せていただいた。「とにかくsanding /やすりをかけるんだ」と「全て職人一人一人の感覚と培った経験で作っているから、商品全てが唯一無二なんだよ」と。

ISOKON BODLEIAN READERS' CHAIR

ISOKON BOLEIAN READERS チェアは、オックスフォード大学の図書館のために作られたもの。「これは僕の三人目の子供」と、職人の方。大学からの注文としては、「学生たちが後ろにもたれかからないような椅子をデザインして欲しい」とのことだったそう。とはいえロッキングチェアは、前後に傾くので眠くなる。前かがみだけになるよう設計することで、血流を促し、眠気を抑え、集中力も増すらしい。

ロングチェアの制作過程
レーザーカッターで切り取ったパーツ

説明をしてくださった職人の方はこの椅子を何個も家においているそう。
「自分で使わないと改善できない」「ワインこぼしたり子供にジャンプさせたり」そうすることで日常的な問題が見えてくると。人間の手で人間のためにものづくりしているって、当たり前だけどいいな。

ISOKON SHELL CHAIR

ISOKON の歴史

ISOKON 工房で紹介されていた内容と、後から調べた内容を紹介します。

1931年に Jack Pritchard とカナダ人建築家の Wells Coates が設立。
始まりは、Pritchard が所有するロンドンのハンプステッドにある集合住宅 The Lawn Road Flats (ISOKON Building) を Coates が設計をしたことから。その後、二人は Coates が Pritchard の妻とロマンティックな関係を持ったという理由、ファイナンシャルな理由をめぐり、パートナーシップを解散したそう。

ちなみに、この The Lawn Road Flats は英国の English Heritage Grade I listing を所有する建築遺産として、英国で最も重要な建築物の一つとして認定されているそう。こちらも、一般公開されることもあるらしく、ぜひチェックしてみたい。

その後、ドイツのデザインスクール、バウハウスの創設者 Walter Gropius がISOKON に加わり、バウハウス仲間の Marcel Breuer と László Maholy-Nagy を誘い、三人は Agatha Christie や Marcel Breuer などの著名人も暮らした、The Lawn Road Flats に住み、ISOKON にさまざまなプロジェクトを通して貢献したそう。Breuer は ISOKON のロングチェアとショートチェア、ダイニングテーブルとダイニングチェア、ソファーなどをデザインしたそう。

ISOKON工房に展示してあった Breuer がデザインしたソファー。
座り心地も良かった。

1997年に ISOKON は ISOKON PLUS に改名、今日も創業者たちの思いを尊重し、それを受け継ぐデザイナーたちとコラボをし続けているそう。東ロンドンの工房で、上質なマテリアルを使用し、手作りで一つ一つ丁寧にタイムレスな家具をクラフトしている。

最後に

余談ですが、個人的に、なんとなくモダニズムの建築、インテリア、空間が好きで、大学の論文も、グラフィックデザイン科にもかかわらず、なぜか「自然とミニマリズムとアアルト」について書いていました。(アルヴァー・アアルトはフィンランドのモダニズムを代表する建築家)無駄を削ぎ落とし、ただシンプルというよりかは、ちゃんと洗練されたものを作るという意味では、グラフィックデザインにも共通する部分があり、何より、ヒューマニストな思想、人間と自然が一体となれるようなデザインを作るということはものづくりにおいて、そして今の時代において、とても大切なことかなと。

今回は改めて、自分の「いいな」を掘り下げていくと、いつもたどり着くのが、モダニズムとバウハウスということを再発見しました。これをきっかけに、もっと本格的にモダニズムと向き合って、詳しくなりたいです。

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